表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/23

この男なんでこんなことをするの?

 やがてシンプルな白いブラウスとスカートに、薄いクリーム色の靴という私服で戻ってきた。肩からこれも同じクリーム色のバッグを提げている。聞いてもいないのに友達が貸してくれたと言った。


「でもね、これちょっと具合が悪いの」


 トキはその少し大きめなバッグを揺すってみせた。

 すると、


「パカ」


 腰の辺りまで下がっているバッグの蓋が振動で大きく開いた。


「ね、壊れてるでしょ」


 そう言いながら蓋の留め金を閉める。


「パチ」


 再び身体をブルっとゆする――


「パカ」


 また開いた蓋を手で閉める。


「パチ」


 ブル、


「パカ」


 閉める。


「パチ」


 ブル、


「パカ」

「ね!」


 なるほど、分かりやすい説明だ。


 それにしてもトキの小麦色の肌に白い服はよく似合う。肌の色から推測すると多分この子は純粋なマテアムだ。ステージメイクは落としてナチュラルな薄いメイクになり、柔らかな印象の顔に変わっていた。

 弓のようにカーブした輪郭のまぶた、笑うとやや切れ長となる目が涼しげだ。

 ヨシは当たり前のように、トキの柔らかな手を握り店の外に出た。


「よし、いくか」

「何処に行くの?」


 彼女たちをゲットした男の中にはいきなり個室に直行なんて輩もいる。


「あ、いや、あの、何処って、腹はへってないか?」


(食べよう)

(後で、レディはがつがつしないのよ)


「だいじょうぶ」

「じゃあ、少し歩こう」


 中庭ではファーンと女たちが、手をつないで出てきた二人を眺めている。このナナワールドでは一人で店に入っていった男が素知らぬ顔をしてカップルで出てくる。今出会ったばかりの男女が手を取り合って歩いているのは当たり前で、珍しいことではない。


 ナナを出ると船に乗ることにした、と言ってもあの男所帯の貨物船ではない。港からチャオ川をさかのぼるディナークルーズで、バンドの生演奏と食事付きの豪華版だ。



 二階建ての白くスマートな船が桟橋を離れようとしているところだった。急いで巨大なフロートターミナルまで来ると、水かさが増した川でタラップが揺れている。チャオ川は雨季でなくとも大河の割には流れが速く、水面はふだんから波打っている。落ちたら最悪だ。

 船内は既にバイキングディナーが用意され、大きな窓からは対岸の明かりが小さく見える。


 リバーサイドの夜景を堪能するには外気に触れるのが一番いい。

 彼女を誘って船首から二階に上がる階段に行き、踊り場に出る。船の進む先は圧倒的な夜景が両側に展開して、進行方向とは逆に川面の夜風が雄大に流れ去っていく。その涼しい大気の中でトキを抱き、いつまでもパノラマの変化を眺めていた。


(食事もしないで、この男なんでこんなことをするの?)

(…………)

(男はみんなするの?)

(黙って)


 船が切る波の音だけが静かに聞こえている。

 赤い唇にヨシの顔が近づく。


(ちょっと、これってなに!)

(黙らないと殺すよ)






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ