表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/39

23話 東クリモア

 シロが加わったことで、多少、速度が落ちた。

 というのも、エステルがシロと遊び、その足を止めてしまうことが多々あったのだ。


 でも、わざわざ楽しそうに遊んでいるのを止めるつもりなんてない。

 エステルの好きなようにさせて……

 時折、俺も一緒になって遊び……


 そんな感じで、ゆっくりと旅をした。

 急ぎの旅ではないし、食料や水は余裕があるから、なにも問題はない。


 そうして、のんびりと歩いて……

 予定より二日遅れで東クリモアに着いた。


「見ろ。あれが、東クリモアだ」

「石の……壁?」


 東クリモアは大きな街で、たくさんの人が行き交う。

 なので、魔物対策として、街が石壁に囲まれていた。

 その高さは、おおよそ5メートル。

 厚さは2メートルに及ぶと聞く。

 おまけに、各所に見張り台が設けられて、常時、数人の兵士が周囲を監視している。


 並の魔物なら突破するどころか、近づくこともできない。

 上級の魔物……例えばドラゴンだとしても、容易に抜くことはできないだろう。

 まあ、ドラゴンは空を飛べるから、意味がないと言えば意味はないが。


 話が逸れた。


 東クリモアは北と南に入り口が設けられている。

 そこで兵士の検問を受けなければならない。

 魔物だけではなくて、犯罪者や不審者などを街を入れないための措置だ。


「さて、どうしたものか」


 魔王討伐の際に、あちこち旅をしてきたけれど、検問を受けるのは初めてだ。

 勇者ということで、検問は全てパスしてきたのだ。


 ちらりとエステルを見る?


「んぅ?」

「いや、なんでもない」


 今のエステルは麦わら帽子をかぶり、腰に服を巻いている。

 猫耳と尻尾はしっかりと隠れていた。

 これなら、魔族ということはわからないだろう。


 入念に調べられたらバレてしまうが……

 子供相手にそんなことはしないと思う。


 それに、東クリモアは種族の差別が少なく、寛容な街と聞いているし……

 エステルが魔族ということがバレても、おそらく大丈夫だろう。


 問題は……


「ピィ~」

「シロだよな」


 子供とはいえ、ドラゴンだ。

 すんなりと街に入れてくれるとは思えない。

 隠すしかないのだけど……


「サイズが問題なんだよな」


 子供が抱きかかえるくらいのサイズとはいえ、隠しておける場所がない。

 荷物袋に押し込むことは可能だが、さすがにそれはかわいそうだ。


「そうなると……あの方法を使うか」

「おとうさん、どうしたの?」

「エステル。シロに、頭の上で飛んでいるように言ってくれないか?」

「うん。シロ……飛んで」


 エステルに言われて、シロは頭の上でぱたぱたと滞空した。


「そのまま、じっとしててくれ」

「うん」

「アクセス・アスカ」


 魔法を使い、光の屈折に干渉する。

 シロの周囲の光の屈折を操作すれば……


「わっ……シロが消えちゃった……」

「魔法で見えなくしたんだ。これなら、たぶん大丈夫だろう」

「シロ、迷子にならない? ちゃんとついてこれる?」

「ピィ!」


 姿は見えないけれど、任せろ、というような元気な鳴き声が聞こえてきた。

 頼りになる。


「それじゃあ、行こうか」

「んっ」


 俺はエステルと手を繋いで……

 いざ検問へ。




――――――――――




「次の方、どうぞ」


 門から伸びる列に並び、待つこと少し。

 俺たちの番になり、前に進む。


「お二人は親子ですか?」

「ああ、そうだ」

「この街へ来た目的は?」

「旅の途中で、休憩と観光を兼ねて」

「なるほど……わかりました」


 今のところ、特に怪しまれていないみたいだ。

 これならいける!

 ……そう思った時。


「では、そのままじっとしていてください。今から、魔法を使いますね」

「え?」

「危険なものがないか、魔法で確認することにしているんです。いきなり身体チェックをするのは問題がありますし、時間もかかりますからね。その点、魔法ならすぐに終わります」

「そ、そうか」


 やばい。

 そんな方法がとられていたなんて……

 エステルが魔族であることがバレてしまうかもしれないし、なにより、シロの存在が危うい。


 どうか、見つかりませんように。

 ついつい祈ってしまうけれど……


「ん? これは……」


 兵士の顔色が変わる。

 訝しげな顔をして、エステルの頭上を見る。

 ちょうど、シロがいる辺りをじっと見ている。


 それから俺を見る。


「この反応は……」


 やばい、バレたか……?

 冷や汗を流しながら、成り行きを見守る。


 そして、兵士は……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ