2話
前回のあらすじ
親が死んだ次の日、突然現れたよくわからん悪魔にコタツを略奪された。
「うそ……お父さんたちまで……」
その先を言うのは憚られたのか、綾音はそれきり黙り込んだ。
あの悪魔、というよりは悪夢から(コタツと引き換えに)開放された俺は、気を失っていたところを綾音に起こしてもらった。綾音いわく「なんか嫌な予感っていうか、虫の知らせ」のようなものを覚えて、俺の家まで見に来たらしい。
「事故死だって。わざわざ俺を置いて行った旅行先で」
「……そっか」
「なんかもう、うんざりだよな」
「ねえ、不謹慎だけど……なんで私はまだ……」
「やめろ、それ以上は」
綾音が小さな声で、ごめんなさいと呟くのが聞こえた。
確か二年くらい前に、高校の同級生が俺と遊んだ帰り、トラックに跳ねられて死んだのが最初だった。
俺に近しいやつらが、次々と何かしら事故にあって、命を落としていく。この二年で、両手では足りないほど人が死んだ。
「忌み子」
密やかに俺の周りで囁かれた、少し古くさい言葉は、やがて俺の代名詞になった。名前を呼ぶのも忌まわしいって、なんかそれイギリスの有名な魔法ファンタジー小説のラスボスと同じじゃん、俺。
綾音は当事者の俺よりしんどそうな顔をしている。次は自分かもしれない、と思うと恐ろしいのだろうか。けど、突き放せば突き放すほど近寄ってくるのは綾音の方だ。こいつの考えてることが、俺にはいまいちよくわからなかった。
「健斗」
俯いたまま、綾音が口を開いた。
「私は……私は、死なないからね」
「……根拠に欠けて信用ならねえ」
「大丈夫なの。私、多分大丈夫」
綾音の口調がいつになく強い。
なんだと思って顔を上げたら、綾音は俺を睨んでるんだか、笑ってるんだかよくわからない表情でいた。
「……なんか自信あんの、馬鹿じゃん、私?だから死なないかなって」
「世界一意味わかんねえよ」
綾音は笑っていた。
それが、俺の見た最後の綾音の笑顔だった。
シリアスなのはここまでです、多分。
ハッピーエンドの予定です。
よろしくお願いします。