1話
初めまして、仮花です。
ゆっくり、不規則になるかもしれませんが、ぼちぼち更新していくつもりです。よろしくお願いいたします。
昨日、親が死んだ。
ついに来たか、と言うのが正直な感想だった。
葬式はやらなかった。そうでなくても親類からの視線がえげつないのに、拷問じゃあるまいし。
法要を済ませて、さて、これからどうしようか、と嫌に冷静な頭で考えた。誰かの死に麻痺しきった脳じゃ、喪中ハガキも出さなきゃいけなかったか、くらいしか思いつかない。俺の高校の学費は?生活費は?この家のローンは?俺の居場所は?
「提供しましょーか、居場所」
幻聴?高い、端的に言うとロリ声が背後から聞こえた。
最近ストレス続きで俺もどうかしてきたみたいだな……それとも、そろそろ俺も召される時が来たか?
「ふーん、無視するんですね。別にいーんですよ、ほんとはこんなの私の仕事じゃないですし」
まず最初に目に飛び込んできたのは、どぎついオレンジのセーター。モノクロの家具が並ぶ部屋の中じゃまるで極彩色だ。
それから、これまたオレンジとの対比で目が痛いほど白い素肌に、挑戦的な視線。短く切りそろえられた髪は、透き通るような黒だ。
「なんか言うことないんですか」
「いや……なに?ってか、誰????」
幻覚?不審者?いやもうどっちにせよ意味がわからん。
四角いコタツの向かい側に、幻覚じみた少女は図々しくも入ってきた。その瞳は変わらず突き刺さるような視線を俺に送っている。
「人に名前を聞く時はまずお前から名乗るものでしょーが、仕方ないですね。私はキウイです。悪魔です。お前を冥界に連れていくことになっています。詳しーことは私もわかりません。これ以上なんかありますか」
丁寧なんだか汚いんだか、めちゃくちゃな口を利く目の前の少女(キウイ?)はこれでもういいだろう、と言わんばかりにデカいため息をついた。態度は悪いの一択だ。悪魔っていうのは態度の悪さが悪魔級ってことなのか?
ってかメイカイ?冥界ってことか?これ、まともに取り合ってたら埒が明かないだろうし、しかしこの状況どうすれば……。
と思っていた矢先、玄関のドアが勢いよく開けられる音がした。
「フン……邪魔が入りましたか……」
「健斗ー、いるんだよね?入るよー!」
誰かと思えば、このよく通る声は綾音のものだ。幼なじみで、俺にグイグイ近づく割にはまだ生き残れているやつ。
「まったく、なかなか上手くいかないですね……さすがは魔王の……いや、なんでもないです。とにかく絶対また来ますから、とりあえずこのコタツとやらは持って帰ります。それじゃー、また」
次の瞬間、極彩色ロリはコタツごといなくなっていた。
ってか俺のコタツ!!!生命線だぞ!クソ寒いじゃんどうすんだよ……ほんとになくなるって……悪魔って言ってたけど、本当だったってことか?
親もコタツも失った俺は、完全に思考停止して、その場に倒れ込んだ。
コタツがない冬なんて具のないおにぎりみたいなものですね。続きます。