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稀代の癒し手

 ミリアさんに案内された部屋に着くと、丸テーブルと椅子に座った魔女の様な格好をした年配の女性が待っていた。


「あの人は?」

「あの方はグレイスさんといって、ここに来た冒険者の職業適性を占ってくれる占師さんです――今まで一度も外したことが無いんですよ?凄いですよね!」


 隣にいたミリアさんに女性について小声で尋ねると、キラキラした目で彼女を見ながら説明してくれた。


 なるほど、彼女に適性を占ってもらうのか。

 一度も外したことがない占いなんて凄いな……


 俺はミリアさんに手を引かれ、彼女の正面の椅子まで連れてこられる。


「グレイスさん、冒険者さんを連れてきました!占いお願いします!」


 割と大きな声でミリアさんが声を上げた。


「あらあらミリアちゃん、今日も元気一杯だねぇ」

「私の唯一の取り柄ですから!」

「そうかいそうかい。で、そちらの女性かい?」


 まるでお婆ちゃんと孫みたいだなぁと思って見ていると、グレイスさんがこちらに顔を向けて尋ねてきた。


「あ、はい。ユーキと言います。適性を教えてもらいたくて来ました」

「あら驚いた、アリシアちゃんにそっくりねぇ」


 彼女は懐かしいものを見る様な目をすると、そう呟いた。

 あぁ、そういえば今の俺ってアリシアさんって人に瓜二つなんだっけ。


「あ、やっぱりグレイスさんもそう思いますよね!私もさっき受付した時、目の前にいきなりアリシア様が現れたからビックリしちゃって!」


「アリシア様?」


「あれ、ユーキさん知らないんですか?――この国で四人しかいない魔法士の一人だったんですよ、アリシア様。ちなみに私のお姉ちゃんの幼馴染でもあったんです!」


 ――あぁ!そういえば最初にセリアさんと会話した時に昔は四人魔法士がいたって言ってたけど、それがアリシアさんだったのか!


 というかお姉ちゃん? 見た目は似てないけど、名前が似てるしもしかして?


「ミリアさん、お姉さんってセリアさんの事?」

「そうです!……あれ、私ユーキさんにお姉ちゃんの事話しましたっけ?」

「実はここに来るの、セリアさんに連れて来てもらったんだ」


 えぇっ!と驚くミリアさん。


「お姉ちゃん、アリシア様が亡くなってから『あの子に冒険者なんて勧めるんじゃなかった』って後悔してたから、アリシア様に似てるユーキさんを連れて来るなんてびっくり」


「そうだったんだ……確かにお願いした時、不本意って感じだったけど」


 あの時の反応とかもそれが原因だったのか。


「さて、ユーキちゃん。そろそろ占おうかい?」

「あっ、お願いします」


 そう、ここには適性を知りに来たんだ。アリシアさんの事とか色々驚いたけどさ。


「では始めるとするかの――ユーキちゃん、手を出してもらえるかい?」


 言われた通り手を出すと、それをグレイスさんの手が包むと、そのまま彼女は目を閉じた。


「これは……凄いわ、今まで見たことのない様な眩しい光が見える」


 そう言うと彼女はゆっくりと目を開けた。


「えっと、つまりどういうことでしょう?」

「光は癒しの象徴――つまり癒し手の適性を指すの。つまり貴女の適性は回復職(ヒーラー)、それも稀代の癒し手になれる素質があるわね」


「凄い!ユーキさん凄いですよ!稀代の癒し手だって!回復職は適性が少ないのに!」


 それを聞いたミリアさんはまるで自分の事の様に喜び、俺は逆に落胆するという対象的な事になっていた。


 いや……こっちでも回復職(ヒーラー)とか……


 見た目がアリシアさんに似てるらしいし、どうせなら魔法の素質も似て欲しかったなぁ……




 グレイスさんにお礼を言い、部屋を出るとミリアさんから声を掛けられた。


「ユーキさん、この後どうする予定ですか?」

「えっと、セリアさんと待ち合わせしてるので、まずは合流しようと思ってます」

「あ、お姉ちゃんと一緒に来たって言ってましたもんね!」


 そっかそっか、とミリアさん。


「ならこれからも会う機会は多そうですね!――それで、あの、良かったら私と友達になってくれませんか?」


 元々ギルド職員の彼女とは会う機会も多そうだけど……それを言うのは野暮ってものかな。


「もちろん喜んで。お――私のことはユーキでいいよ」

「ありがとうございます!じゃあ私のこともミリアって呼んでくださいね!」


「あー、敬語じゃなくて良いよ。同い年なんだし。私も普通に話すから」

「分かった!じゃあこれからよろしくね、ユーキちゃん!」

「うん。よろしく、ミリアちゃん」


 少し気恥ずかしくも温かい気持ちになり、セリアさんとの待ち合わせ場所に向かうのだった。




「あ、来たわね。どう?ちゃんと登録できた?」


 合流して早々にそんなことを言われる。


「ええ、大丈夫です。ミリアちゃんが対応してくれたので」

「ん?妹が対応したの? そっか、ならあの子驚いてたでしょ」


 頷く俺に、あの子アリシアに憧れてたからねとセリアさん。


「それで、適性診断も受けてきた?」

「受けました」

「そう……結果は何だった?」


 そう尋ねる表情は少し暗いように見える。

 アリシアさんの件があるからかな?まぁ、適性は真逆だったんだけど。


「回復職の適性でした。稀代の癒し手になれる素質があるそうです」


 それを聞いた途端、表情が明るくなるセリアさん。


「そっか、回復職かぁ!それも稀代の癒し手なんて凄いじゃない!」

「む、私としては魔法職か剣を使う職が良かったんですけど」


 全く嬉しくない結果であった。


「まぁまぁ、そんな事言わずに。それにしても回復職かぁ、今人手が足りてないから需要高いわね」


 あぁ、やっぱりこっちも回復職不足なのね……

 なんでこう、回復職は人気無いのかねぇ。やっぱ地味だからかな?


「あ、ちなみに魔法とかってどうやって習得するんですか?」


 RPGならレベルが上がって習得って感じだけど。


「基本は魔道書ね、それで魔法と呪文とを覚えてって感じ。まぁ呪文を唱えても魔法のイメージが出来ないと発動しないし、素質にも左右されるんだけどね」


 ふむふむ。魔法のイメージが出来て素質があれば発動すると。

 仮にここでイメージ出来る魔法を唱えたら発動するんだろうか?

 そんな疑問を持った俺は、掌をセリアさんに向けると


回復(ヒール)


 と唱えてみると、彼女の体を淡い光が包み込んだ。


「おぉ、発動した」


 どうやら現実で得た知識とイメージでも発動するようである。

 一人で達成感に浸っていると、セリアさんが信じられないものを見るような目でこちらを見ていた。


「ちょ――ユーキさんまだ魔法知らないのよね?ていうか今詠唱してなかったんじゃ……?」

「えっと、知識では知ってたのでいけるかなぁと」


「いやいや、知っててもそんな簡単には発動しないわよ……?それに魔法の発動には呪文の詠唱が必要なのに」


 そうなの? 割とあっさり発動したんだけど……


「逆に呪文を知りません」

「呪文の詠唱無しに知識だけで魔法を発動出来るなんて……稀代の癒し手どころか、間違いなく世界一の癒し手じゃない」


 そんな俺の言葉に呆れた様子でそう返すセリアさんだった。



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