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相棒との別れ

 暖かい日差しと草木を揺らす音、さわやかな風を受け意識が覚醒する。


「ふわぁ……」


 両手を上に突き出すように伸びながら欠伸をする。

 最初はぼんやりしていた視界も、徐々に鮮明になってくる。


 ……おや?

 辺りを見渡すと、一面緑のカーペットかのような草原と、遠くには中世の城のようなもの(RPGとかで出てくるようなやつ)が見え、その周囲には街と城壁らしきものが見えた。


 これは一体どういうことでしょう?

 ――初歩的なことだ友よ、これは夢なんだ。

 夢ならしょうがないね!


 ……なんて脳内で現実逃避するものの、頬を撫でる風や暖かい日差しがこれは現実だぞ、と主張している。


「おかしいな、昨日間違いなく部屋で寝たはずなのに」


 間違いなく部屋のベッドで寝たはずである。アラームをセットしてそのまま横になって……目が覚めたら草原で横になっていた。


「考えれば考えるだけ分かんないなぁ。まぁ少なくとも異常な事が起きてるっていうのは間違いないんだけど……」


 と、独り言を溢して気が付く。――あれ?俺の声ってこんなに高かったっけ?


「あーあー、本日は晴天なり」


 試しにもう一度声を出してみて確信する。間違いなく声が高くなってる……

 それに起きた時から頭が重い気がする。


 ふと頭に手を伸ばしてみると、ごわごわとした感触が――返ってくることは無く、サラサラとした絹の様な感触が返ってきた……しかも長い。


 元々の俺の髪は黒髪で、短くも無いが長いというわけでも無く、前髪は眉より少し長く、後髪は首を半分隠す程度であった。

 そして髪質は少し固めというものの筈だった。


 しかし、今は前髪こそあまり変わっていないが、後髪がかなり長くなっており、腰の辺りまで伸びている。しかも髪質は絹のように柔らかくさらさらで、髪を前にもってきて確認すると、髪色は白銀に変わっていた。


 これは……まさか……

 いやな予感がし、自分の体を確かめると


「無い……無くなってる……!」


 ――そう、生まれてから今まで常に行動を共にしてきた相棒(マイ・サン)がなくなっていたのである。


 嘘だと言ってよバー〇ィ……

 すまねぇ相棒――お前を使ってやることが出来なかった……ッ!

 相棒(マイ・サン)「ええんやで」

 そんな幻聴が聞こえた気がした。


 相棒を失った代わりに、胸部には今までなかった膨らみが出来ていた。


「あ~。やっぱこれ……もしかしなくても女になってるよなぁ」


 ここまでくると認めざるを得ない、というか自分が男である証が一つも残っていないのだから。


 こうしてこの日、目が覚めると見知らぬ野原だっただけでなく、長年連れ添った相棒を失ったのだった……

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