表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/47

焼き払え!

 目的の本は割と簡単に見つける事が出来た。

 背表紙に回復魔法ノススメと魔法百科事典と書かれた本二冊を本棚から抜き取ると、結構な重量に苦労しながらも何とか運び出し、読書スペースまで辿り着くと早速読み始めた。



「えっと――まずは回復魔法ノススメから見ていくかな」


 一冊目の本を開くと、回復魔法の歴史だったりが書かれているページがあり、その後に回復魔法の種類と効果、呪文が載っているページが続いていた。


 歴史は兎も角、まずは種類だな。

 暫く集中して読み進めて、読み終えた辺りで一度情報を整理する。


 回復魔法を大きく分類分けすると、肉体を回復するものと精神異常を回復するもの、その他の三つに分けられるようだ。


 肉体回復は言わずもがな、回復(ヒール)だったり再生(リジェネレイト)といった外傷を癒す魔法である。


 次に精神異常回復は、混乱(コンフューズ)魅了(チャーム)に掛かった者の効果解除を行う浄化(ピューリファイ)など、精神状態を回復する類の魔法だ。


 そしてその他だが――蘇生(リザレクト)といった魂を呼び戻す魔法や、シールドのような物を張る守護付与(プロテクション)動く死者(リビングデット)を代表する悪魔を祓う悪魔祓い(バニッシュ)といった魔法が相当する。


 ちなみに、この『その他』に分類したこれらの魔法は、神官など高位の癒し手でないと使えないらしい。


 そして一番俺が驚いたのは、なんとその高位の癒し手にしか使えない魔法には攻撃魔法があった事である。

 光の矢を撃ち出す聖なる矢(ホーリーアロー)、光の光線を放つ聖なる光線(ホーリーレイ)などである。


 俺がやっていたRPGでは、回復職はちまちま殴るしか無かったので、攻撃を食らうリスクに対し与えるダメージが割りに合わないという事もあり、回復に専念するのが一般的だった。

 その反動で俺は攻撃職に憧れてた訳なんだけど。


「攻撃魔法使えるなら――むしろ回復職こそ最強なのでは?」


 回復出来て、その上魔法で殴れるなんて隙が無さすぎる。

 ――まぁ高位の癒し手しか使えないらしいし、普通は回復のみなんだろうなぁ。


 でも一応俺も稀代の癒し手になれるって言われてる位なんだし、使えるかもしれない。

 攻撃のイメージは出来るから、後で試してみるかな。


「さて、お次は魔法百科事典かな」


 百科事典っていうだけあって、流石に量が多いな……

 回復魔法の項目は飛ばしつつ読み進める。


「ほ〜、やっぱり攻撃魔法は種類が多いんだなぁ」


 四大元素と呼ばれる火水風土を用いた魔法が所狭しと書かれている。


風刃(ウィンドカッター)――うん、やっぱり発動しないか」


 属性毎に一つずつ、掌を床に向けて唱えてみるも発動する気配が無い。

 薄々感じてはいたけど、四大元素に分類される攻撃魔法には全く適性が無いようだ。


 なら無属性魔法はどうだろうか。

 自分の行ったことのある場所に瞬間移動する転移魔法(テレポート)、五分間身体機能を向上させる肉体強化(フィジカルアップ)といった物があるようだが……

 ちなみに転移魔法は適性が高いと魔方陣が無くとも使えるらしい。


 物は試しと言う位だし、試してみるかな。


肉体強化(フィジカルアップ)


 さて、唱えてみたは良いけど、どう試そうか……

 あ、この百科事典。持ってくるときかなり重かったし、これを持ち上げれば効果の有無も分かるか。


「よっ、と。おぉ! さっきより軽く感じる!」


 元々この身体は筋肉があまり付いてないため、本を持ち出す時はかなり苦労したのだが、今は少し重い程度に収まっていた。


「なるほど、四大元素は無理でも無属性なら使えるのか」


 これは大きな収穫だな。


 肉体強化が続いている間に本を元あった場所に戻した頃には、陽がかなり傾いていた。

 夕方に防具を受け取りに行く約束をしていた事を思い出した俺は、駆け足でアドルフさんの店へと向うのだった。



 店の前に着くと、アドルフさんが布袋を持って待っていてくれた。


「お、来たなユーキちゃん。防具出来てるよ」

「ありがとうございます、アドルフさん!」

「おう、これからもうちを贔屓にしてくれよ!」


 お礼を言って防具を受け取り、店に戻る彼に一礼してから街の出口へと向かう。


 門を越える頃にはすっかり陽も落ち、辺りは暗くなっていた。


「街は明るいから大丈夫だけど、外は明かりが無くて暗いなぁ」


 日本のように街灯があるわけでも無く、街の外には闇の帳が降りている。


 んー、どうしようか。このまま歩いて帰っても良いんだけど、明かりが無いのはなぁ。

 ――あぁ!そういえば無属性魔法に自分の周りを明るくするのがあったっけ。


灯火(イグナイト)


 そう唱えると自分の周囲が少し明るくなった。

 よし、これなら歩いて帰れるな。


 道中、図書館で見たあの攻撃魔法を使えるか試しながら歩いていた。


聖なる矢(ホーリーアロー)


 掌を暗くなった空に向けて唱えると、一筋の光が夜空に向かって飛んで行く。


「おおー、なんとなく使えるんじゃないかとは思ってたけど、本当に使えた」


 それなら次はあれかな。


聖なる光線(ホーリーレイ)


 同じく掌を空に向けて唱えると、ちょっと洒落にならないような光を放ち、辺りを明るく照らしながら太い光線が夜空に向かって伸びていった。


「……これは酷い」


 回復職が放って良い魔法じゃないでしょ……

 焼き払え!とか言う台詞が似合うような光線を見て、自分の発動した魔法ながらドン引きしていた。


 緊急時以外は封印しようと心に決めながら、セリアさんの家に向かって再び歩き出す。



 ちなみにこの夜、とんでもない光が夜空に向かって飛んで行ったという目撃情報により街中が騒然となったのだが、元凶のユーキは知る由もなかった。



 セリアさんの家へ無事辿り着いた俺は、彼女から『ユーキさんの部屋を用意しておいたから、お風呂に入ったらそこで休みなさい?』と言われた。


 セリアさんにお礼を言ってからお風呂に入り、温まった後にベッドで横になると、色々あった疲れからか睡魔に一瞬で意識を刈り取られ、深い眠りに落ちていったのだった。

次回からユーキが冒険を始めます(予定)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ