世界の抜け穴
ねぇ、知ってる? 世界って実はひとつじゃないんだよ?
あ、もちろん日本とか中国、アメリカとかじゃないよ? ボクたちのいる地球っていうか、宇宙っていうか、もっと大きな、、、、、、あ、そう! パラレルワールドみたいな話。
この世界にはいくつもいくつも世界があって、平行になっている世界もあれば垂直、いびつな斜めに交わる世界もあるの。
でね、その世界、ひとつひとつに小さな抜け穴があってね、その抜け穴を通り抜けると、そこは交わる全く違う世界なんだって!
、、、、、、あ、その顔は信用してないでしょ? 本当にあるんだよ! だって、だってね?
「ボクはその穴を通ってきた人間だもの」
その時の彼の顔を僕はよく覚えていない。
僕はあの時なんと答えたのだろうか?
でも、そんなことはもうどうだっていい。
だって、僕はとうとうその穴を見つけたのだから。
本当に分かりづらい所にあって、一体何があるのか、先は全く見えない。
でも、多分ここがそうなのだろう。
なんとなくそんな確信が僕の心にはあった。
その確信が揺らがないうちに、そっと中へ足を踏み入れる。
ねぇ、その先に君はいるの?
君は今、どこにいるのかなぁ。あの頃、毎日のように遊んだ君、いつもひまわりみたいな華やかな笑顔を浮かべていた君。ある時、君と歩いている時、ひまわりを見つけて、「君はこのひまわりみたいだね」と言うと、君は驚いたようにぽかんとしてから、クスクスと笑って、「この花はひまわりじゃないよ?」と言った。「ひまわりとすごく似てるけど、これは違うんだよ」僕は、その言葉に何だかとても恥ずかしくなって俯いてしまったけれど、その子は弾んだ声で「ありがとう」と僕にあの笑顔で笑いかけてくれた。
僕はその笑顔に救われていた。
僕にとってその笑顔は心の支えだった。
大嫌いだったひまわりの花が、太陽が、温もりが、優しさが、愛が、少しだけ好きになれたのは君のお陰だ。
この先に君がいるかは分からないけど、いつか絶対に君を見つけ出して、僕は言うんだ。
君に負けない笑顔とともに。
「久しぶり、またあったね」




