人間の条件
平木名織は大学デビューの不登校だ。
真面目系クズの典型で、彼女いない歴イコール年齢で、勉強は頑張ってきたけれど、成績は振るわなくて、自分なりに頑張ったぶんの、それなりの大学にはなんとか入った。
だけど、そこから本当の彼の不幸が始まる。
高校までは、クラスというものがあって、居場所は確保されていたのだけれど、大学となるとまるで勝手が違う。
ここでは、自分の居場所は自分で作らなければならない。野蛮で残酷な世界だ。
名織はもちろん、大学デビューには失敗した。
最初のオリエンテーションやサークル勧誘で当たり障りの無い会話で乗り切りろうと、頑張ったのだけれども、会話がいまいち弾まなくて、気がついたら、友達と呼べる人は回りに一人も居なくなっていた。
「こんなはずじゃなかったのに・・・」と悔やんでも、もはや後の祭りで、一旦出来上がってしまった人間関係の中に入っていくのには、最初のスタートよりも、かなりハードルが高くなっていてもはや、取りつく島も無い。
それが、本人の思い込みであったとしても、それが出来ないからこそ、コミュ症なのだ。
名織の大学への足は半年も経つとだんだん遠のいていった。モヤモヤした不安な気持ちがつのって授業にも集中できない。居場所がない。
周りのみんなが楽しそうで、自分を笑っているように感じる。
名織はだんだん、自分でも知らないうちに追い詰められていってしまって、一つの選択をすることになる。