#2
2人は――――穂香と一七はスーツの男に『理事長』と呼ばれていた女性と共に謎の電車のようなもので地中に引かれている線路の上を移動していた。この女性とあってすぐに「ついてきなさい」と言われ、言われるがままに噴水の中に隠されていた階段を下りてそこにとまっていた電車に乗ったのだ。
「……質問がある」
「私で答えられることならいくらでも」
一七の殺気を放ちながらの言葉に対してもこの女性は顔色一つ変えることなく、涼しげな顔をしながら笑みを浮かべている。一七のことなど眼中にないかのように席に腰を掛けている。
「なぜ俺たちの名前を知っている」
「それは答えられないわね。他に質問は?」
あっさりと答える事を拒否されて一七はより一層殺気を強める。金髪の女性は一七の殺気を感じつつも怯えるどころか聞き分けのない子供を見るような目で一七を見つめる。
「いくら私を殺そうとしたって『今のアナタ』では私に指一本触れる事ですら叶わないわよ」
「なんだと……!?」
一七は遂に堪らず女性に殴りかかる。いや、『殴りかかろうとした』と言う方が正しいだろう。一七が電車の座席から立ち上がった瞬間一七は倒れ込んだ。体を起こそうにも体全体がまるで鉛のように重く、指一本動かすことが出来ない。
「うぐ……! お、お前……俺に一体なにをしやがった……!」
「別に『アナタ自身には』何もしてないわ。他に質問は? お嬢さんも聞きたいことはないのかしら?」
穂香は倒れて起き上がれない一七を見つつ言った。
「『アトランティス』と言うのは何? なぜ私たちなの? 素質って?」
「アナタは中々賢いみたいね。一つ一つ説明していきましょう」
金髪の女は目を伏せながら説明をし始めた。
「まずはアナタたちの周りでこの最近変わったことは何かあった?」
「……力が強くなりました」
「それこそが『素質』のある証拠。アナタたちを呼んだ理由も『素質』があるから」
女性は指をスッと動かす。すると一七の体の重さが嘘のようになくなった。
「アナタは体で感じたでしょう。これが私の力。アナタたちにはこれと同じように異能の力を持つ素質があるのよ」
そして女性は続けていった。
「その異能の力を持つ者、その素質のある者たちを集めた所こそ『アトランティス』なのよ」
女性がそう答えた丁度その時、電車が上昇し始める。
「そろそろ付いたようね。ここが『アトランティス』。これからアナタたちの住む所よ」
一七と穂香は窓の外を見て感嘆の声を上げた。一面に広がる海、どこまでも蒼い空。そして何よりも目を引く海の中に浮かぶ1つの島。とても不思議な島である。遠目からも見てわかる。島の中央には階段が島の一番下から一番上まで続いている。
「素敵なところでしょう? 勿論電気やガス、水道や電波についての設備についてもバッチリよ。生活するには困らないハズよ」
一七と穂香の様子を見て静かに笑みを浮かべる女性。
「この島に来ることについてはご両親には既に話はついているわ。後の事は島についてから話すわ」