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ハルの剣士と冬の華  作者: カノン
第2章 グラオシュナイト学園へようこそ!
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第2話 魔法科 Ⅰ

学園は外見と同じように中も城のような造りをしている。

図書室へと続いている廊下も外廊下、つまり壁が無く柱などで天井を支えた道となっていて、他の校舎もしくは塔と名が付く場所に行くのにも外廊下を使うことになる。また、外廊下の屋根は連絡通路の床となっている。

勿論階段や普通の廊下を使い別の塔に移動することも出来るが別の塔を経由したり、違う階に下りてからまた上ったりと面倒らしく、生徒の殆どは外廊下や連絡通路のある場所はそこを通じて移動しているらしい。

城壁や室内の家具なども白と水色を基調としている学園だが、外廊下は魔法が施された半透明なまるで宝石のような水色の柱と同じ色のタイルが敷き詰められて出来た床が続いている。


「まずは…近いから魔法科から行くか」


『科ってことは他にもあるの?』


そんな廊下を歩きながらハルは隣の(浮いて移動している)私を見たがすぐに前を向いた。


「そうだ。グラオシュナイト学園はシェルゼ様が学長を務める国唯一の初級から上級まである巨大な魔法学校だ」


『へぇー!初級とか中級っていうのは階級みたいなもの?』


「まあ大体は合ってる。けど、分かりやすくいうと“学年”を表している。」


『学年?』


「初級は六年間で内容は歴史や言葉、計算とか基礎的なことだ。加えて初級は国が定めた義務教育期間でもある。その後の中級は三年間でこれは試験があり受けたいものが受け、合格すれば続けて授業を受けられる。そして最後の上級も三年だが、こちらは中級合格者以外は試験すら受けられない。

まあ、大抵の奴は中級合格後に城や貴族の下で働くことを選ぶから、上級は魔法や剣をまだ追及したい者が多く在籍している。」


ハルの話に耳を傾けつつ、私なりに解釈してみた。

つまり初級は小学校みたいなもので中級は中学校、上級は高校みたいなものだろう。ハルにもっと詳しく聞くと、大学や専門学校のように上級以上の学校という施設は無く、もっと魔法や剣といった自分の追求したいものがある人はそう言った魔法を、剣を使う仕事に就くのが当たり前らしい。


『じゃあ、ハルは?』


「俺は中級Ⅲ年、クラスはAだ」


(つまり中学三年生ってことね。…なんだ、私と同じ年なんだ!)


ハルが同じ年頃だということを初めて知ったからか、それともハルが自分のことを素直に教えてくれてからか、もしくは両方の事をが何故か嬉しくて自然と笑みを浮かべた。


「何、笑ってんだよ」


『ううん、何でもないよ。そういえば、そのクラスAとかってのは?』


「ああ、それは…進級試験時のランクだよ」


『試験?』


「そう。初級の時はただ教師が割り振っただけのクラスだったけど、中級の進級試験は筆記と科ごとで違う実技試験があるんだ。その結果次第で上からS、A、B、Cの四つにクラス分けされる。…他の科は詳しく知らないが、魔法剣士科は剣術と魔法の両方を試す模擬戦闘だった」


試験の時、何かあったのだろう。ハルはどこか遠くを見つめると悔しそうに拳を握りしめた。

その震える拳にとても強い意志を感じ、それが私の中にも流れ込んできた。

それは憧れ、尊敬の念、嫉妬と言った感情だったけど一番強く流れ込んできたのは―――


(“次は絶対に勝つ”…か)


燃え盛る炎を思わせる“闘志”だった。


(相手は誰なんだろう。すごく気になるけど…)


未だ知り合って間もない私が聞いてはいけない気がした。いや、今はまだ…聞いてはいけない気がしたんだ。私は話を逸らすようにハルの前に浮遊した。


『ねぇ、ハル!早く学園を案内して?私、話を聞いてたら早くこの学園のこと知りたくなっちゃった!』


「さっきまでアインの話すら聞いてなかった奴の発言とは思えないな?」


『そ、それとこれとは話は別なの!』


「ホントかよ、それ」


苦笑交じりに文句を言いつつもハルの顔に柔らかさが戻った。

言い合いばかりしてしまうけど、彼の行動一つが彼の優しさを表している。それはさっき私を図書室から連れ出した時も同じだ。


(最初は嫌な奴だ!なんて思ったけど、まだ二日でこんなにも仲良くなれたのは一成くん以来だなぁ)


不意に浮かんだ一成くんの顔に寂しさが胸を締め付けた。

もしシェルゼ様の言っているように私が死んでいないとして、彼方(日本)では私はどういった扱いになっているのだろう。

海で溺れてそのまま行方不明?それとも時が経てば死亡扱いになってしまうのかな?

考えれば考えるほど不安が胸に広がった。


「魔法科のある校舎は左に曲がると見えてくる、右の道は創製技術科だ。このまま真っ直ぐ進むと剣士科と魔法剣士科がある。まあ、順に説明していってやるから…まずは言った通り魔法科に行くぞ」


交差する道を前にハルが私の手を引いて左に曲がった。

幽霊は嫌いだと、近づくなといった少年の温もりと優しさに私は先程の寂しさや不安が消えていることに気付く。


『ねえ、ハル?』


「なんだよ」


振り向かずに返事をするハルに私は緩みそうになる口元を何とか抑え、なるべく平然とした顔で言う。


『私ってハルの嫌いな幽霊だよ?』


「知ってるけど…今更なに?」


『手。握っても平気なんだね』


「え?………っ―――ぎゃああああぁ!!?」


絶叫を上げたハルは数十メートルも先まで走って行ってしまった。

それを廊下を同じように歩いていた生徒はギョッとしたように見送り、私はというと笑いを堪えるのに必死だった。


(ハルってば、一つの事に集中すると他の事を忘れちゃうんだよね。それこそ自分が幽霊を嫌いだってことも)


そんな事が本当にあるのだろうかと最初は思った。けれど契約の時といい、今といい確かにハルは私が嫌いな幽霊だという事を忘れていたみたいだから本当らしい。


『でも、それだけ私の事を気に掛けてくれたって思って良いのかな?』


優しいハル。けれどそんなハルよりも私は嫌いだとはっきり自分の想いを伝えて、言い争ったり、喧嘩したりするハルの方が好きみたい。

まあ、好きと言っても恋愛とかそんな感情は一切ないけどね。


(でも、彼となら使い魔としてやっていけるかな?それに…帰る方法も見つかる。そんな気がするんだ!)


自然と零れた笑みに私は遠くから文句を言いつつ戻ってきたハルに飛行して近寄った。


「たくっ、そういう事は早く言えよな」


『そういう事って?』


「っ~~~!何でもない!」


自分から握ったという事実をハルは覚えているのか、これ以上私に追及されることを恐れたのだろう。ハルはそっぽを向いたのだが、案内するのを止めるつもりはないらしく歩調を合わせるように歩き出した。そんな彼にまた私は笑みを浮かべたのだった。

――――その後、外廊下を進み辿り着いたのは西の塔・魔法科校舎。外廊下と塔を隔てる部分には淡い紫色の光を放つ石の扉があり、硬く閉ざされていた。


『此処が魔法科校舎?』


「ああ。普段は此処の扉は開いている。けど授業中はこうやって結界で固く閉ざしているんだ。」


『結界って?』


「なんていうか、こう…侵入者を弾き出す障壁?みたいなものだ」


『ふーん…』


(説明投げたわね)


理解しているはしているが人に説明するのが苦手。ハルはそういうタイプだという事が分かった。


(まあ、ファンタジーの小説とか読んだり、ゲームはよくやっていたから大体は分かるかな)


自分なりに納得しながら話を聞きつつ、結界を意味を考えていれば一つの考えが浮かぶ。


『もしかして…遅刻防止とか?』


「よく分かったな。此処は結構規律が厳しい所なんだ、少しの遅刻も許さない。だから生徒は閉まる前に校舎に入らなくてはいけない訳だけど、効果は覿面。遅刻者がすごく減ったってシェルゼ様や教師が喜んでいた」


ハルの言葉に関心よりも畏怖の念を学園に対して抱いてしまった。


「…まあ、あの学園長を初めに見てたらそうでもなさそうに見えるけど」


『はは…それ、確実にリヴィグさんに怒られると思うよ』


どういった人か。なんてものはシェルゼさんに対してのリヴィグさんの行動を見ていれば誰でも分かる事だろう。証拠に、私が初めて会った(昨日だが)時もリヴィグさんは過保護すぎるくらいシェルゼさんを気にしていた。


「うっ。それは…まずいな。前言撤回だ」


ハルもリヴィグさんのシェルゼさん信仰率が高いことを知っているので、すぐさま先程の言葉を取り消した。


「と、言ってもこんなに厳しいのは魔法科くらいだ」


『そうなの?』


「ああ。他の…あ、まだ言ってなかったか。グラオシュナイト学園には四つの科があるんだが、一つは魔法科、二つ目は剣士科、三つ目は創製技術科、そして四つ目が魔法剣士科だ」


指を折り説明するハルに首を傾げる。


『さっき道が分かれてた時にも聞いたけど…。魔法と剣士は分かるんだけど…創製技術科って何?それに魔法剣士科も』


「俺も詳しい説明は出来ないが…この学園のパンフレットにはこうあった。

“中級へと進みし者よ、己が求めし道を行け。

魔法科:魔道を極め、深き知識を求めし者よ此処へ集え。…さすれば己がだけの魔法を手に入れる事だろう。

剣士科:剣のごとき揺るがぬ意志と強さを求めし者よ此処へ集え。…さすれば己がだけの剣を手に入れる事だろう。

創製技術科:新たな魔法、新たな技術を追い求めし者よ此処へ集え。…さすれば己がだけの世界が広がるだろう。

魔法剣士科:魔道の深き知識、剣の揺るがぬ意志と強さ、両方を求めし者よ此処へ集え。…険しき道なれど、さすれば己が求めしものが手に入る事だろう。


道を決め、進みし者に輝かしき未来が訪れる事と願う――――学園長 シェルゼ・メリーシャ・ド・ポリィースト”…ってな。」


いつの間にか手にしていたパンフレットを読み上げるハルに私は驚きよりも今までに体験した事の無い不思議なものを目の前にしてワクワクするような、そんな感情が込み上げ何度も相槌を打っていた。


「初級では簡単な魔法とかは学ぶことができる。けど初級の六年間を過ごすうちにやりたい事とか見つけて、人それぞれ考え方とか違くなるだろ?だからシェルゼ様は中級から色んな道に進めるようにこうやって選択肢を与えて下さっているんだ」


パンフレットを仕舞ったハルはそう言うと固く閉ざされている石の扉へと歩み寄った。


「ま、口頭での説明はこれくらいにして―――見た方が早くて分かりやすいと思うか、らっ!!」


ハルは言葉の最後を発するのと同時に片手を扉に強く叩きつけた。

次の瞬間、扉が発していた紫色の光がハルの叩いた場所からまるで皹が入るように亀裂が生じ、パリンッと音を立てガラスのように砕け散った。

すると石の扉はギギギ…と不気味な音を立て、小さく開いた。そこに手を掛けたハルは強く手前に引き、人一人が通れるくらいの隙間を開けた。


「なに、ボーッとして。行くぞ」


『え。あ、うん。』


中に躊躇なく足を踏み入れるハルに慌てて付いて行こうとして、ハッとする。


『いや、いやいや!いいの!?結界、壊しちゃったんじゃないの?!』


慌てる私とは対照的にハルは澄ました顔で首を傾げた。


「こんなの中級Ⅲ年の奴等なら簡単に壊せると思うぞ?現に遅刻した奴はこれを壊した後、巧妙に作り直して証拠隠滅を図っている」


『まず遅刻することがいけないんじゃない?』


ズバッと突っ込む。


「だが、結局は授業開始時間に間に合うわけはなく、教師に叱られている」


『遅刻しているんだから当たり前でしょう。間に合わないことに何で気づかないのか不思議よ』


続けて冷静にツッコミを入れればハルが溜め息を吐いた。その手は苛立ったように石の扉をコツコツと叩いていた。


「もう、この話は良いだろ。来るのか?来ないのか?」


(自分が話し始めたくせに…)


ハルの態度にムッとするも、此処で突っ立ているだけでは何も分からない。そう思った私はハルの側に近寄った。

だがその瞬間、ハルは手で制するように片手を私の前に突き出し、顔は逸らした。


「言っとくが半径一メートル以上を歩けよ。それ以上は近づくなよ、いいな?」


『……。はいはい』


忘れていた訳では無いが彼の幽霊嫌いはたまに鬱陶しさを感じる、とこの時思った。


「じゃ、授業見学と行くか」


ハルがそう言って中に入りその後に私も続く。

校舎の中は洗練された空気というのだろうか、とても静かで神秘的な雰囲気が漂うとても綺麗な場所だった。けれど設計は城内というより学校と言った方が近い造りをしていて、壁や床は外廊下と同じ綺麗な半透明の石で造られ、天井はステンドグラスように何色もの鮮やかなガラスがはめ込まれ、それらは日の光を反射し床に色とりどりの光の花を咲かせていた。

その光景に見惚れていると扉が自動で閉まり、また紫色の光を放ち硬く閉ざされた。ハルが閉めたのかと彼の方に視線を向けたが彼は驚いたように扉を見つめていた。


『ハル…?』


私が声をかけた瞬間、ハルは勢いよく振り返ると私を背に隠すように移動した。その刹那、何か光る物が空を切り私達の横をかすめ背後の石の扉に突き刺さった。

恐る恐る背後に視線を移せば、其処には鋭く尖った細長い両刃のナイフがキラリと光っていた。


(これって…忍者とかが使っているっていう苦無?)


しかしイメージする苦無とは色が違く、背後のそれは透き通った紫色の刀身をしていた。突然こんなものが飛んできたことにも驚いたが、刃物が簡単に人に向けて放たれた事に鼓動が速まる。


「魔法で創られた苦無か」


『魔法で?』


「普通の武器は鉄や銀、材料を素に作る。けれど魔法で作る武器は刀身や柄なんかも魔力により構築されている。ようは魔力の塊が刃物になっていると思えば良い。その証拠に刀身は透き通り、向こう側が見えるだろう?」


ハルは辺りを警戒しつつも冷静に説明してくれた。それが私の速まる鼓動を落ち着かせ、冷静さを取り戻させてくれた。


『なんでそんな物が飛んできたのかな?』


「それは…投げた奴がいるからだろ」


『そういう意味で言った訳じゃ――――』


またいつもの言い合いに発展しそうになった時、ハルとは違う少年の声が響く。


「何を一人でブツブツを言っているのかな、ハル・ヴァインセッド」


扉を入ってすぐ目の前にある大きな階段を優雅に下りてきたのはハルと同じくらいの背格好をした金髪碧眼の少年で、その手には一メートル弱はあるだろう先端がクルリと丸まった如何にも魔法使いの杖というような物が握られていた。

ハルが制服に白いマントを羽織っているのに対し、彼は長いワンピースのように裾が床に着いてしまっている黒のローブを着て、おそろいの黒の尖がり帽子を被っていた。だがそれも自分でアレンジを加えているのか少しオシャレな恰好ではあった。


「やはり君か…」


ハルは階段を下りてくる少年を心の底から面倒だという顔で見上げていた。


『知り合い?』


「まあ…」


ハルは金髪碧眼の少年の名を言いたくもないと顔に出していたので、私もそれ以上は聞かない事にした。けれど金髪少年は自分大好き…所謂ナルシスト系だった為、すぐに答えは本人がくれた。


「僕の美しい顔を見忘れたかね、ハル・ヴァインセッド!

僕は魔法科所属中級ⅢクラスS、ロイッシュ・ブラーゼクト!西が国フィエストより舞い降りた天使が如く美しき美貌のこの僕を忘れたというのかね!ハル・ヴァインセッド!」


(うわー…ハルより第一印象悪い人がいたなんて)


胸に手を当て踏ん反り返るロイッシュという少年にハルと私はつい冷めた視線を送ってしまう。


「ブラーゼクト、悪いが先を急いでいる。そこを通してくれないか」


早くここから立ち去りたい気持ちはきっとハルも一緒だったのだろう。ハルはそう言いつつも強引に通り過ぎようと階段に足を掛けた。しかし―――


「っ!!」


『きゃっ!?』


ハルが足を乗せようとした途端、水の柱が上がりハルを飲み込もうとした。間一髪でハルはそれを避けることが出来たが、側にいた私は柱の水に少し腕をかすめてしまった。


『熱っ…』


「!…まさか熱湯だったのか!?」


ヒリヒリと激しくなっていく痛みに思わず顔をしかめて腕を押さえた私にハルは素早くその手を退かし私の腕に触れた。


「“緩やかな流れ、ウンディーネの涙、癒しの雫を彼の者に与え給え―――ヴァッサー!”」


呪文だと思われるハルの声に反応し腕に触れているハルの手が水色の光を放つ。すると冷たく心地よい水が優しく私の腕を包むように出現した。

不思議なことにその水に触れた部分から徐々に、赤くなっていた私の腕は元の肌色へと戻り痛みも引いていった。


『ありがとう、ハル』


「いや…まさか魔法にも“触れる”ことが出来るとは思わなかった」


ハルの言葉にシェルゼさんの言葉がよみがえる。


《君は普通の幽霊じゃない。きっと生き物…生きているものには触れられる。逆に考えれば生きている人は君の存在が見えなくとも触れることは出来てしまうという事だ。周りから姿を隠すつもりなら、そのことを深く理解していてね》


ハルの使い魔として彼と行動を共にする事にした後、そう注意を受けていた。だからこそ人に当たらぬように浮きながら移動していたのだけれど、まさか生きている物の中に“魔法”も含まれているとは、私もハルも思っていなかった。

その事実を身をもって知るとはこういう事か。と思っているとハルが手を放し、私の腕はすっかり元に戻っていた。


「ハル・ヴァインセッド…君は何と“話し”をしているんだい?」


ロイッシュは訝しげにハルと先程まで彼が何かに触れるように手を伸ばしていた場所…私の方を見た。


「誰とも。此処にいるのは俺だけだろ、ブラーゼクト」


けれどその視線を遮るように立ったハルの背に私は声を掛けていた。


『ハル…?』


「お前は離れてろ。…魔法科の見学はもしかしたら当分の間できないかもしれないけど、良いか?」


良いか。と疑問形で尋ねたハルだったが、その言葉に有無を言わせぬ威圧感があった。けれど威圧感とは別の感情が流れ込んできた為、私は渋々どころか喜んで頷いた。


『うん、良いよ。私は魔法科よりも魔法剣士科の方が早く見たいしね!』


私の返事に一瞬ハルは目を見開いた。

けれど直ぐに口元に笑みを浮かべると「そっか」と呟き、ロイッシュを見つめた。


「ロイッシュ・ブラーゼクト。」


「なんだい、ハル・ヴァインセ―――」


「先に仕掛けたのは君だ。ならば文句は言わせない」


ロイッシュは自分の発言を遮られた事に不機嫌な表情を浮かべたが、それはハルの手元を見て驚愕の表情に変わった。


「構えろ、ブラーゼクト」


「君はっ…正気か!?」


ハルに声を荒げるもロイッシュは驚愕した顔のまま後ずさるように階段を上ると手にしていた杖をハルに向け構えた。

視線の先では腰に帯刀していた剣をゆっくりと引き抜くハルの姿。その顔つきはロイッシュとは正反対に冷静な顔つきをしていた。瞳に僅かな怒りを滲ませて――――




ここまで読んで下さり、ありがとうございます!


誤字脱字などありましたら、お知らせください。


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