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バルキーノ  作者: sherry
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第四話 初めての作戦

「そんじゃあまさか、その撮った場所に行って本当かどうか確認するのか?」俺は冷や汗を出しながら冷静を装い、ナナミに聞いた。本人は「車の中から周辺の詳しい写真を撮って今日は帰るから安心して大丈夫。」と返してくれた。今日は大丈夫なら明日はどうなんだよ?俺は心の中でそうつぶやいた。


それから少しの間、俺はジェットコースターに耐えながら、外の風景を眺めていた。「もうそろそろ着くよ~」と元気な声でナギサが寝ていた俺以外の男子陣を起こす。お前らよくそんなに寝れるな、俺なんか怖くて目も閉じられねーのに。

その時、車のスピードが落ちてくっきりと目に飛び込んでくる物があった。二つの柱に大きな鉄製扉が付いている、立派な門だった。どっかで見たような見てないような雰囲気の門だった。「そうそうバルキーノ、病院の先生が見つけたの、この近くの空き地なんだってさ、なんか思い出さない?」とタカネ。勿論俺のことだ。

ンなこと言われても知らな…いや、さっきの鉄門扉、あれと同じようなものをどっかで見た感じがしないわけでもない。まあ記憶ないんだからわからないのが実際のところなんだが、言ってみる価値はありそうだな。

「さっきの鉄門扉、どっかで見たことあるような気がしないんでもないんだが、、、」そこまで言いかけて、さらに目に流れ込んできたものに、俺は驚いた。コンクリートの山、見たことあるという確信があったからだ。


その瞬間、頭の中の記憶のジグソーパズルの1ピースが見つかった気がした。俺は一度ここに来たことがある。さっきの写真のUNKNOWNとだ。でもそれがいつだか、なんて名前の奴とだったかはわからない。


俺は、そのことをすぐに話した。一部ではあるものの、記憶を思い出せたことに少し頭がすっきりした。


団員が褒めてくれたのも束の間、あたりを見回していたタカネが突然口を開いた。「ねえ、ナナミ、ナギサ、あれ、お父さんじゃない?」全員の視線がタカネの指さす方向に向けられた。ナギサがリュウからカメラを半ば強引に受け取ってめいいっぱいズームをかけてシャッターを押す。その写真をナナミとタカネが確認した。「お父さんだ、何でこんな所に、」とナナミ。

「ちょっと私行ってくる!」と言葉を残してタカネが車から飛び出していった。


お父さんのことはタカネに任せておくとして、「そういえば、ナナミたち3人のお父さんってことは姉妹だったのか?」と俺はさっき思った疑問を言った。すると、口を重たそうにナナミが説明しだした。

どうもタカネとナギサは小さい頃に重い喘息があって、それが原因でナナミの家の近くの孤児院に預けられたことがあったらしい。そんな二人を見かねて、ナナミのお父さんが二人を引き取って、養子として育てていたということらしかった。俺は今の明るい二人の過去にそんなことがあったのかと少しショックを受けた。そして、リュウがさらに、「ナナミたちのお父さんと僕のお父さんが昔からの知人でね、喘息のあった二人の主治医を引き受けていたんだ。それでこの団が作られたとき、僕も入ることにしたんだよ。」と付け足した。

へえ、リュウのお父さんは医者だったのか、え?じゃあもしかして俺がお世話になった病院の医者ってまさかリュウのお父さん?顔立ち似ているし。リュウに今のことを聞いてみると、「そうみたいだね」と嬉しそうな返事をした。どうも、俺がこの団に来ることになったのは若干仕組まれていたみたいだった。まあ楽しいから別にいいんだけど。


そこへ、タカネが息も絶え絶えになって戻ってきた。「お父さん、あそこの監視してるんだって」と言いながら例のコンクリートを指さした。どうも、あの山の地下(した)には地下施設があるみたいで、時々人が通るのだという。不思議な話だ。

そこまで聞いて、俺はもう一つ疑問が浮かんだ。「お父さん、職業何してんだよ!」そう、監視ということは大概警察か軍くらいしかしないものだ。ということはそのどちらかということ。案の定、「軍の指揮官?とかって言ってた。」とナナミが説明。あまり詳しくは知らないようなので、結構上の方の役職だろう。じゃなきゃ娘に何してるのか言えないわけないし。


「さて、今日やることは終わったし、そろそろ帰るとするか。その前に少しおなかがすいたな。あそこのお店で何か食べない?」言うまでもなくナナミだった。元から行く予定だったに違いないが寄りによってケーキ屋さんだったとは。そんなわけで誰一人反論できないうちに、気が付いたらケーキ屋に入っていたのである。


思いのほか、ナナミがとっとと出てきたので、あまり待たずに済んだ。とはいってもよく見かける丸いショートケーキを一人で食べるとは、どういう胃袋してるんだか若干気になる。あれって普通4人位で分けて食べるもんじゃないのか?

早く出てきたのにはわけがあったらしく、「重要な話をアジトでしたい」ということだったらしい。そのあとにほんとはもう一個食べたかったのに…とつぶやいていたのは聞かなかったことにしよう。


まあそんなわけで、またジェットコースターに耐えながら、長い一日が終わろうとしていた。

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