第三話 団の目的
「そういえばこの団で探してる人物ってのは誰なんだ?」まだ肝心な中身を聞いていなかった。しかし、それに対する答えはとんでもないものだった。全員口をそろえて名前が分からないというのだから俺もびっくりした。ただ、ナナミが隠し撮りしたような感じの顔写真を一枚だけ、持っていた。写真の裏には一言、UNKNOWNの文字が書かれていた。正体不明の人物といったところか。もう一度写真をよく見る、見覚えがある顔じゃない。ただ、何か違和感を感じた。どこかで会っている気がしたのだ。
俺の顔が怖かったのか、ナギサが声をかけてくれた。やさしい奴だ。でもその声で何を感じたのか忘れてしまった。とりあえず何でもないと返したが、ナナミやタカネの話だと、俺とこいつにつながりがあるから俺をここに連れてきたらしい。見覚えはないのにどういうつながりがあるのだ。可能性なら、俺の記憶が消えた時より前、ただそうなっちゃ俺にはお手上げだ。なんせ記憶がないんだから。
そうこう考えていると、ふと写真の隅に目が移った。何かが映っている。顔を近づけてみたが、小さすぎてよくわからない。「この写真、PCの中には入っているのか?」俺が何をしたいのか気づいたのかナギサが、「それならリュウが入れてたはずだけど?」とリュウに振る。リュウも頷いて確認完了。早速PCの電源を入れて、ピクチャフォルダからこの写真を出す。画面に表示して、拡大ボタンを連打、倍率を700%まで上げて写真の右下におろす。どうも道路のミラーのようだが、中に人影が映り込んでいるのがはっきりわかる。かなりの性能のカメラで撮ったことが分かった。ただ、その影は、人の影というのには不自然なほど歪んでいて全く別の生物のようだった。
「おい、それ…たぶん…」ユウイチが口を開いた。「みたいだな、」とタイチ、全員かなり険しい顔をしてPCの画面に表示された歪んだ生物を穴が開くほど見ていた。かなりやばいものだと一目でわかったが、何なのかわからないためにどうしても周りから取り残されてしまう。「おい、これ…」「これを撮った場所に急ごう、支度して!」取り残されたくないが故に聞こうとしたその質問を、ナナミに思いっきり遮られた。そしてわけもわからずにさっき乗ったのとは違う大型バンに無理やり乗せらせ、気が付くと猛スピードで、道路を駆け抜けていた。
「ちょ、誰か説明、どういうことだか俺にもわかるように、、、」俺はジェットコースターが嫌いなんだ。何でこんなところで急にそんなものを、、、うっ!車が止まった。というか急停車した。シートベルトのおかげで体が飛ばずに済んだが、その代わりにシートベルトが腹に食い込んだ。「大丈夫?」と助手席からタカネが心配そうに顔を後ろにむける。それとは裏腹に、運転手であるナナミはバックミラー越しに、にこやかな顔をしながら、「お前こういうのダメなのか?」と解りやすくさっきよりスピード上げる宣言をしてくれた。ハンドル握っている人に言っても無駄だろうから、とりあえずダメだとは言ったものの、受け入れてくれるかどうか微妙だ。
一息落ち着き、タカネにはとりあえず大丈夫と言って、さっきから聞きたいことをようやく聞けた。もちろんさっきの写真のことだ。一同がやばそうな顔をした映ってた生物が何なのか皆目見当が付かなかったからだ。ナナミが俺に説明してくれた。要は過去に地球に侵略してきた宇宙人ってことらしい。え?宇宙人?地球に侵略した?はい?どういうことだかさっぱりわからん。詳しい話を聞くと、5年ほど前に地球に侵略して、もう少しで地球が負ける、、、というときになって、上空の宇宙人艦隊が次々に爆発していったのだという。どうにも信じがたいが瞬間移動するロボットがやったとか、そしてそのロボットが撮影した写真に、この宇宙人が映っていたのだという。え~とつまりは、過去に地球を侵略した宇宙人が今地球にいるということ、、、え?まずくね?今更だけど地球、やばくね?
「まあそういうことだ。」ナナミは落ち着いて言った。馬鹿な俺でも何やるか位は想像がついた。