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プロローグ
大変長い作品ですが、どうかお付き合い下さい。
鍵の守り人
プロローグ
険しい山肌の、突き出した岩の先端に、人影が在った。
丸い月の下、風が人影の服を翻らせる。
「―――【イスカリオテ】……」
人影が呟く。ぱさり、とその頭を覆っていた布が肩に落ちた。短く切り揃えられた髪が、風に揺らめく。
「見付けた」
人影――青年は空を仰いで言った。その全身を包むローブの腰に吊された金属の輪が、シャラン、と鳴る。
「ジュド」
青年が言い―――青年の傍らに、巨大な影が降り立つ。
飛竜だ。
小さな家程も在る、蜥蜴のような体に、蝙蝠のような翼が在る。飛竜は長い首をもたげ、青年の前に頭を突き出した。
「アーサーシーエン国の王都だ……行こう。ジュド」
青年は優しく飛竜の頭を撫でる。飛竜は甘えるように、その鼻先を青年の腹に擦り付けた。
「行こう」
再度言い、青年は飛竜の背に乗る。飛竜は応えるように呻り、巨大な翼を開いて夜空に飛び上がった。