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side.Yuya…


お待たせしました

祐哉さんsideです



楽しんでいただけると嬉しいです




「では誓いのキスを…」




俺はぼんやりと神父の声に耳を傾けながら、キスを交わす2人を見つめた




俺の名前は金子祐哉

今日は友達の結婚式に来ている




和彦が結婚した

高梨和彦は同じバンドのメンバーで、長い時間をともに過ごしてきた大事な友達で

嬉しいはずなのに、心のどこかで別の気持ちが渦巻いている。心の底から祝えてない

その原因は新婦にあると思う




旧姓、柳林友乃ちゃん

今日から高梨友乃ちゃん

和彦の大事な人

俺達の5つ年下の女の子。大人しめの普通の女の子だ

けれど時折見せる笑顔がすごくかわいいことを知っている




けどその笑顔は俺には向けてもらえない

初めて出会った時から、その笑顔は和彦だけに向けられていたから

そう、初めて出会った時から…




彼女に初めて出会ったのは小さなライヴハウスでやったライヴのあとだった

ライヴ後、すぐ消えた和彦を翔太に探しに行かせた。そしたら翔太まで戻ってこないから、涼を楽屋に残して探しに行った

そして出会った

和彦と翔太と話していた女の子2人の片方。それが友乃ちゃんだった

目をぱちくりさせて和彦を見上げる彼女と、頬を赤く染めた和彦

一瞬で分かった

女の子が苦手な和彦の初恋だ、と

なら俺はそれを後押ししよう

そう思っていたはずなのに




和彦を通して彼女を知る度に、彼女に惹かれている自分に気づいてしまった

彼女が和彦だけに向ける笑顔に惹かれている自分に

あの笑顔を自分だけに向けてほしいと思っている自分に




苦しかった

2人は両想いだと分かっていたから

叶わない恋に苦しむなんて俺らしくない




自分でもなんでと思う

2人がつきあうことになって、それを素直に祝福できない自分がいやになる




「大丈夫か?」

ぼんやりしていると涼が声をかけてきた

「あ?ああ…」

「ならいいけどな。披露宴の会場に移動するってさ。行こうぜ」

「ああ」




そうして、式場から少し離れたホテルに移動した

お色直しをした彼女はすごく綺麗で、なんでその隣が俺じゃダメなんだろう…って考えた

ぼんやりと彼女を見つめていると、和彦がこちらに近寄ってきた

「よ。来てくれてありがとな」

「ああ、おめでと」

涼が笑って言うのに続けてお祝いの言葉を述べる。浮かべた笑顔がわずかにひきつっているのは気づかれるだろうか

すっと視線を移すと、友乃ちゃんは夏音ちゃんと翔太の2人と話していた




「…や……うや……祐哉!!」

急に呼ばれて、沈んでいた意識が一気に浮上した

「あ、ああ悪い」

気づくと和彦は別の参加者の所に行っていて、涼が俺の顔を覗き込んでいた

「ほんとに大丈夫かお前」

涼が形のいい眉を軽くひそめて首を傾げる

「大丈夫大丈夫」

「ならいいけど」

軽く手を振って答えると、涼は半信半疑の様子で頷いた




本当は大丈夫なんかじゃない

胸の奥底がズキズキ痛い

ふと視線を向けると、和彦は友乃ちゃんのところに戻ってきていて。2人の笑顔に胸の奥がさらに痛む

女々しいなぁ、俺

和彦を応援したかったのに

好きになるつもりなんかなかったのに

好きになった時、諦めるって決めてたのに




その時

ぼんやりとしていた俺の後頭部に衝撃が走った

「いっ!?」

ばっと振り返る前に

「あ、由祈」

涼の嬉しそうな声が聞こえた

「…お前か」

「あらやだ怖い顔ー。久しぶりに会った従姉妹にそんな顔しないでよぉ」

そう言ってけらけら笑うコイツは確かに俺の従姉妹だ。さらに兼…

「涼〜」

涼の婚約者だ

由祈と俺は母親同士が姉妹で、由祈の母親はどういうわけか勤務先の社長Jr.に気に入られ、結婚。所謂玉の輿というやつで、由祈ん家は金持ちだが俺ん家は一般家庭だ。その割に俺と由祈が親しいのはやたら母親同士が仲の良い姉妹だったからだ。由祈と涼が婚約者なのは父親同士が仲が良く、幼い頃に決められたから

「ったく…」

叩かれた頭を擦りながら由祈に目をやると、座っている涼の首に抱きついて満足気ににこにこしている。涼もまんざらでもなさそうで、頬を緩めている。くそ、このバカップルめ




ぶちぶちと内心文句を言いつつ、まったく手をつけていなかったテーブルの上の料理に手を伸ばす。やけくそな気分で次々と料理に手を伸ばしていると、いつの間にか横に座って同じように料理に手を伸ばしていた由祈がこちらを向いた

「好きだったの?」

唐突な問いに思わず手が止まり、持っていたフォークに刺さっている野菜達からポタポタとドレッシングが落ちていく。ゆっくり由祈に目を向けると、笑っているような泣いているような微妙な顔をしていた

「…何が」

問いに問いで返すと、由祈はほっそりした顎でくい、とある方向を示した。見なくても分かる。彼女が示したのは花嫁―――友乃ちゃんだ

「…違うよ」

ゆっくり目を戻して再び料理に手を伸ばす。横からの涼の視線を感じる。何か言いたげな涼を無視して皿をたいらげると、俺はトイレに行く、と言って2人から逃げるように席を立った




外のバルコニーに出ると、涼しい風が吹いていて。今の俺には寒いくらいだった

バルコニーの柵に腕を預け、ぼんやりとしていると、ひたひたと歩み寄ってくる足音がした

軽く溜め息をついて振り返ると、案の定立っていたのは涼だった

「…何」

「別に」

涼は俺の隣に立つと、何も言わずに柵に背中を預けた

暫く沈黙が続いた

沈黙を先に破ったのは涼だった

「やっぱりそうだったんだな」

「…違う」

「嘘だ」

涼は俺をキッと睨むように見た

「本当のことを言え。好きだったんだろう?」

俺は涼のこの目が苦手だ。心の奥底を見透かされているような気がするから

涼は人の機微にひどく聡い

由祈に言わせれば、いつも笑っている割にミリ単位でしか感情を出さない、という俺の表情をいとも簡単に読み取る。俺は昔から涼と由祈には隠し事が出来た試しがない




「…ああ、好きだったよ」

視線をゆっくりと前に戻す

「俺は友乃ちゃんが好きだった」

自嘲気味の笑みが洩れる

「笑いたきゃ笑えよ」

「笑わねえよ」

返ってきた即答に薄い笑みを浮かべる

「そ」

そう言って再び口を閉ざす

空気でこれ以上を拒絶しているのが分かったのか、涼はゆっくりとバルコニーを出ていった




暫くバルコニーでぼんやりしていると、唐突に後ろから声がかかった

「あれ?祐哉さん」

声ですぐ誰だか分かる。ゆっくり振り返ると、やっぱりそこには友乃ちゃんが立っていた

彼女は不思議そうに首を傾げながら歩み寄ってきて、俺の隣に並んだ

「どうしたんですか?こんなところで…」

「別に何も。友乃ちゃんこそどうしたの?和彦は?」

じくり、と胸が痛む。和彦の話を出す度に浮かぶ笑顔を知っているから

「かずさんなら参列者に挨拶まわりしてますよ。私は…まあふらふらしてました」

えへへ、と笑う友乃ちゃんから少し目を逸らす

じわじわと胸の奥が痛い

自分の女々しさに嫌気がさす

「祐哉さん?」

目を逸らしていた俺の視界に不思議そうな顔の友乃ちゃんが割り込んできた

「うわ!?」

思わず後ろに後ずさると、友乃ちゃんはしたり顔の笑顔を向けた

胸の奥が更に痛む

胸の痛みは甘いけれど、それは時に毒となる

今の俺には毒だ。甘い猛毒だ




「…友乃ちゃん、今幸せ?」

「へ?」

友乃ちゃんがきょとんとした顔を向ける

ついぽろりと洩れた問いに自分でも内心驚いていると、友乃ちゃんの答えが返ってきた

「はい」

友乃ちゃんの顔を見ると、いつも俺だけに向けてほしいと思っていた、いつも和彦だけに向けていたあの笑顔を浮かべていた

胸の奥の鈍い痛みをぐっ、と呑み込む

「俺はさ」

自分に向けられている彼女の視線を感じながら、胸の痛みを堪えながら言葉を紡ぐ

「友乃ちゃんの幸せをずっと願ってるよ」

せいいっぱい作った微笑を向けると、友乃ちゃんは満面の笑みを浮かべて頷いた

「ありがとうございます」




背を向けて去っていく彼女の背中を見つめながら心の中で彼女に語りかける

友乃ちゃん、意味分かってないでしょ

まあ伝わらなくて良かったんだけどね

君は優しいから伝えたらきっと困ってしまうだろうから

俺はね、本当に君が好きだった

きっともう君以上に好きになれる人なんていないだろうってくらいね

だから俺は君の幸せをずっと願っているよ




バルコニーを出ると、出入り口のすぐ横に涼が壁にもたれかかるように立っていた

涼は俺の顔を見て、淡い笑みを浮かべるとゆっくり去っていった

どこまでも人の機微に聡いやつでいやになるけれど、今は何も言わずにいてくれたことがありがたかった




ゆっくり目を向けると、友乃ちゃんは和彦と話していた

2人の笑顔にゆっくり笑みを浮かべる




俺は君の幸せを願う

世界中の誰よりも愛しい君の幸せが、どうか一生続きますように…



楽しんでいただけたでしょうか?



亀更新ですが

次も頑張りますのでよろしくお願いします!!

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