表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

side.Natune…

更新遅くてごめんなさい



夏音さんsideです



楽しんでいただけると嬉しいです

夢にも思わなかった

憧れていたあの人に

あの人に

見てもらえるなんて





「は〜…」

私が彼を初めて見たのは、彼氏に連れて来てもらった小さなライヴハウスだった

私は彼氏に渋々でついてきただけだったから、つまらなくて一人後ろの壁にもたれていた

そのライヴは、いくつかのバンドの共同ライヴで、彼らはまだちっとも有名じゃなかった

ロックのことなんて分からなかった私は、次々と出てくるバンド達をぼんやりと眺めていた

そして、彼らに、彼に出会った



なぜか私には彼がひときわ輝いて見えた

今思えば、あれが一目惚れってやつだったんだ

叫ぶように、思いを叩きつけるように歌う彼から目が離せなかった

逸らせなかった

「…ね、あの人、ヴォーカルの人、なんて人?」

彼から目を逸らせないまま、隣に来た彼氏の佑に問いかけた

「ん?ああ、確か…Syoさん、だったかな。俺、このバンドそんな詳しくないからちょっと曖昧だけど…」

…Syoさん…

ドクン、と胸の奥がうずいた気がした




それからだった

彼らのCDを買い漁り、聴き漁った

彼に会いたくて、ライヴにも通うようになった

彼らをきっかけに、様々なロックバンドも聴くようになった

そうして、友乃ちゃんと出会った

妹がずっと欲しかった私には、友乃ちゃんが可愛くて仕方なかった

二人でライヴにも行くようになった





そして

運命の日は訪れた




二人でライヴに行った時だった

「か…か…Kazu…さん…?」

友乃ちゃんの唖然とした声に振り返ると、彼女の目の前にはKazuさんが立っていた

「え?あれ?なんで…」

私だって彼らのファンだ

私も驚きを隠せなかった

彼は片方の眉をひょいと上げると友乃ちゃんに向かってゆっくり微笑んだ

「さっきライヴ中に目ぇあった子だよね?」

「は、はい…」

友乃ちゃんの頬は真っ赤で、すごい感激してるんだろうってすぐ分かった

その時




「おーい和彦おー…って何してんだ?」

聞こえてきた声に耳を疑った

何度も何度も、CDでもライヴでも聞いた声

間違えるはずがない

「……Syo…さん…?」

呆然と呟いた

自分の目が信じられなかった

Syoさんはくりっとした目をちょっと驚いたように開くと次の瞬間、にやあっと笑った

「なんだ和彦〜ナンパか〜?珍しいな〜」

「ちげえよ!!」

真っ赤になったKazuさんをからかう彼を信じられない思いで見つめる



Syoさんはあははっと笑いながらステージから飛び降りると、とっとっとっと歩いてきた

「ファンの子?」

にっこにっこと笑いながらSyoさんは私達に向かって首を傾げた

あんなにも憧れていた彼が目の前に立っている

感激し過ぎて、私達がぼんやりしているうちに、SyoさんとKazuさんは話しを進めていて

次のSyoさんの言葉に、感激のあまりへたりこみそうになった

「二人共俺らとお茶しよう!!おごるから!!和彦が!!」




本当に夢みたいだった

食事に行くために街を歩いている間、隣をあんなにも憧れたSyoさんが歩いていて

笑顔で話してくれて

…夢みたいだった





それがきっかけで、よくメールや電話をするようになって

嬉しくて嬉しくて堪らなかった




「あっ、翔太さん!二人ゲーセンに入りましたよ!!」

「マヂだ!何やんだろ!」

ある日

私と翔太さんは、友乃ちゃんと和彦さんのデート(?)を尾行していた

珍しく翔太さん達は仕事が休みで

和彦さんは友乃ちゃんに会いに来ていた

それを面白がった翔太さんが尾行をしようと言い出し、私も見たかったので今に至る

「…太鼓の〓人やってるけど」

「…白熱してますね…」

「ガキかあいつら」

「…楽しそうだからいいんじゃないですか」

…楽しそう、ほんと

和彦さんを見上げて、軽く頬を染める友乃ちゃんを微笑ましい思いで見つめる

すると声が聞こえてきた



「あの人、友乃先輩の彼氏さんですかね!」

「でも友乃そんなこと一言も言ってなかったじゃない」

「でも分かんないわよ?友乃ちゃん恥ずかしがりやさんだし…」

声の方向を向くと、友乃ちゃんと同じ制服を着た子が3人

「「あ」」

その中に見覚えのある顔が一人

確か…琳ちゃん

友乃ちゃんと同じ部活の子だ

「夏音さん!?」

向こうも覚えてくれていたようだ

「琳ちゃん?どうしたの?」

「夏音さんこそ。あ、もしかして友乃の尾行してた、とか?」

「当たり。そっちも?」

「えへへ…」

話を聞くと、今日の友乃ちゃんの様子でおかしかったので追いかけてきたのだそう

「だって授業中もずっとそわそわしてたし、部活来たと思ったら休むとだけ言って走ってっちゃうんですもん。怪しいと思って追いかけたら男の人と一緒だし」

気になって部員選抜メンバーで追いかけてきちゃいました、と琳ちゃんは軽く舌を出した

…あなた部長さんじゃなかったっけ

半ば呆れながらも、友乃ちゃん一人のために部をあげて尾行するような彼女達の部は素敵だと思う

邪魔しちゃ悪いし帰りますね、と言って琳ちゃんは他の二人を引き連れて去っていった

ちょっと含み笑いをしていたように感じたのは気のせい

…と思いたい




「くううう…和彦がうらやましい…」

「は?」

その後も尾行を続けていたのだが、突然翔太さんが呟いた台詞に気の抜けた声が漏れた

「よし!!なつ!!」

「は、はい!?」

満面の笑みを浮かべた翔太さんにおののきつつ返答すると

次の翔太さんの言葉に、また膝からへたりこみそうになった

「俺らもデートしよう!!」




…何でこうなった?

今私と翔太さんは映画館にいる

私の目の前では翔太さんが嬉々として、観る映画を選んでいる

「なーなー、なつは何が観たいんだ?」

翔太さんがにっこにっこしながら振り返る

…何このかわいい生き物

「んー…翔太さんは何が観たいんです?」

「全部!!」

翔太さんが目をきらきらさせて答える

「……。…じゃあ私はこれが観たいです」

…聞かなくても良かったかも

とりあえず兼ねてから観たかった映画を指さすと、翔太さんはよっしゃ!と言って、チケット買ってくるー!と走っていってしまった




翔太さんが戻ってから二人で映画を観る

うす闇の中、隣に翔太さんがいる

手を伸ばせば触れられる距離に

ちくり、と心の隅に罪悪感がわいた

彼氏の…佑の顔が頭をよぎったから

私は彼がいるのに




翔太さんを好きになってしまったんだ

きっと最初から

初めて翔太さんを見た時から

好きだったんだ

今までは遠すぎて気づかなかっただけ

近くなった今は

きっともうこの気持ちを隠せない




映画の後、翔太さんとはまたメールする、と言って別れた

私はそのまま、ふらりと佑の家へ向かった

「あれ、夏音?どうしたんだ?」

チャイムを鳴らすと、佑はすぐに出てきてくれた

「…話したいことがあって」

「ん…入れば」

「お邪魔します」

じくじくと胸の奥が痛む

何度も来た佑の部屋

ここに来るのも最後かもしれない

佑に促されて、ぽすんといつものように彼のベッドに腰かけた

「…話したいことって」

隣に座った佑が促す



「…別れよう」

ずきずきと痛む胸を抑えながら、きりだした

「…なんで」

トーンの低い佑の声が続きを促す

「…好きな人、が、でき、た」

途切れとぎれの言葉を絞り出す

「…そっか」

佑は俯くと、口を開いた

「何となく…予想はしてた」

「え?」

驚きに目を見開く私を見て、佑は淡く笑って自嘲気味に続けた

「見てりゃ分かる。…好きなんだから」

「…」

「…夏音」

「きゃっ!」

突然腕を引かれてひっくり返る

反射で瞑った目を開けると、私はベッドの上で、佑が天井を背景に私を見下ろしていた

まっすぐに私を見つめる佑から目が逸らせない

「た…佑…?」

恐怖で声が震える

私の上に乗っかるように、佑は私を抱き締めた

耳元で佑の声が聴こえる

「…気づいてた。夏音が俺を見てないことくらい」

「…」

「夏音が他のやつを見てるのくらい、気づいてた」

佑の声が震えているのが分かる

「好きだから…だから分かっちまった」

私を抱き締める腕の力が強くなった

「…分かっちまったのが怖かった。いつか言われる。そうなると思ったから」

「…佑」

佑の震えが伝わってくる

「悪い…」

「え?」

「最後にこれだけ」

ちゅ、と水っぽい音と同時に、唇に違和感

キスされた、と理解するのにそう時間はかからなかった

佑とキスをするのは初めてだった

それと同時に頬に冷たい感触

佑の涙

…佑は泣いていた

胸が張り裂けるような痛みが襲った

佑はほんとに私を好きでいてくれたのに

私はその気持ちを裏切ってしまった

…私は佑にどれくらい辛い思いをさせたんだろう

「…言うの、辛かったよな」

ぽつり、と佑が呟いた

こんな時にまで私を気づかってくれる佑

佑の方が辛いのに

ぼろっと大粒の涙が頬をつたった

「…これも…最後」

佑はそう言って私の涙を優しく拭ってくれた



ごめん

ごめんね

ごめんなさい

優しい佑

優しすぎる佑

私は佑が大好きだった

でも私は佑を裏切ってしまった

翔太さんを好きになってしまった

佑、ごめん

ごめんね




気づくと私は自分の家にいた

どうやって帰ってきたのか分からない

佑の声が耳に残っている

…無性に翔太さんに会いたくなった

ケータイを開いて、翔太さんのケー番を呼び出す

「もしもーし、なつか?どーした?」

ケータイはすぐに繋がった

「翔太さん…」

「なつ?」

「今…どこにいます…?」

「…なつん家の近く」

「え?」

「…会える?」

「は、はい…」

「ん。今から行く」




しばらく家の前に立っていると、翔太さんが走ってきた

「よ」

「こんばんは」

「…なつ、泣いてる?」

「え?…あ」

気づくと私は涙を流していた

「あ、あれ?なんで…」

「…」

ぐいっ

「えっ!?」

急に腕を引き寄せられた、と思うと私は翔太さんの腕の中にいた

「しょ、翔太さん…?」

「…俺ね、なんでかなつに会いたいと思ったんだ」

「え…?」

「俺ね」

「?」

「なつが好き」

「へ!?」

「会いたいと思ったら、言いたくなった。だから来ちまった」

「あ…」

自分の頬が一気に紅潮するのが分かった

「…好き」

ぽつり、と呟かれた

私はその言葉に答えるために、口を開いた







「友乃ちゃん!!すっごいきれい!!」

私の言葉に、照れたように微笑む友乃ちゃん



あれから5年経った

今日は友乃ちゃんと和彦さんの結婚式

私と翔太さんは二人の結婚式に招かれていた

二人のお邪魔にならないように、と部屋を出た



「幸せそうで良かった」

「ああ」

ドレス姿の友乃ちゃんを見て、顔を赤くしていた和彦さんを思い出すと、自然と笑いがこみ上げてきた

それは翔太さんも同じだったようで

二人揃って噴き出した

「和彦の顔、おもしかったなー」

「それちょっとヒドイよ…あはは」

「夏音も笑ってるし!」

「ふふっ」

ひとしきり笑うと、翔太さんが私の手を握った

「翔太さん?」

「…幸せだな」

「え?」

「こうして夏音と一緒にいれるのも、こうして笑えるのも」

「唐突…」

「思ったこと言っただけだぞ?」

「照れるから」

ふと、翔太さんの手が私のお腹に触れる

「…体調悪くないか?」

「大丈夫。心配し過ぎ」

そう言って自分のお腹に触れる

「男の子かな、女の子かな」

「俺は男の子がいい」

「男の子なら翔太さん似がいい」




私は幸せな未来を掴んだ

翔太さんと一緒に

別れる時に佑が言った台詞を思い出す

『幸せになんなかったら許さねえからな!!幸せじゃないとか言ったらぶん殴りに行くからな!!絶対幸せになれよ!!』




大丈夫

私は今とても幸せです



いかがでしたでしょうか?




ちなみに佑は『たすく』と読みます




次はちょっと悩み中です


でも頑張るのでよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ