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6.異世界カルチャーショックと居候

アカネの部屋には、ありとあらゆる魔道具が揃っていた。


尻を洗えるトイレ。しかも水に流せる。

部屋に備え付けの風呂。(アカネに聞くと、もっと安いアパートだとないらしい)

蛇口とかいうハンドルをひねると飲用可能な清潔な水が出る魔道具。

テレビとかいう遠くや非日常を映す摩訶不思議な魔道具。

しかも、ギャランブーやスマホとかいう小型魔道具にも似た機能があるらしい。

電子レンジとか言う、瞬く間に調理する不思議な調理魔道具。

油を使わない、均一で極めて明るい照明器具。

エアコンという、冬も夏も快適に暮らせる魔道具。

パソコンという世界中にアクセスできる魔道具。


これらは照明器具を除いて俺の部屋にはない。

それはいいが、アカネは魔術が使えないようで、これらの魔道具に魔力を充填していないようだ。

よく聞くと、これらの魔道具は「電気」という魔法で動いているらしい。

いや、電気は魔法ではなく、「科学」の力だそうだ。よくわからん。


また、「職務質問」を受けるかもしれないので、アカネと一緒以外は、外を出歩くなときつく注意を受けた。


とにかく、俺の世界とはかけ離れた文明があり、俺の知識など、何の役にも立たなそうだ。


そういえば、この世界に来た翌日、部屋でアカネと話していてショックを受けたことがあった。


俺はアカネに、こんな凄い魔道具を所有しているのに、どうして古いアパートに住んでいるかを尋ねた。

彼女は伏し目がちに答えた。

「家電なんて大した価値ないのよ。横浜じゃ家賃が高くて、私みたいな高卒で低学歴じゃ、アパレルの店員くらいにしかなれないし、お給料も少ないからマンションには住めないの」


まあ、確かに俺様みたいに研究職でもなければ9年も学校に通えることは出来ないさ。

低学歴という事は初級教育の3年間だけしか学校に行っていないだろう。

でも、アカネは頭がいい。もしかしたら2年間の技術教育を受けている可能性もあるか?

いやだったら、店員なんてしてないな。


「まあまあ、学校なんて6歳から3年も行けば十分だろ」

俺は励ますように明るく言った。

「はあ?何言っているのライナー。日本じゃ6歳から6年間小学校、それから3年間中学校、そしてほとんどが高校を3年間通うのよ」

え~!12年間も教育受けるの?それで低学歴!?、どんな世界だよ、それ。


「うーん、俺高学歴だと思っていたが、9年しか教育受けてないわ」

俺は唸りながら言った。

「え~!ライナーってアラサーなの。もっと若く見えた。

9年て言ったら、高校出て大学4年、大学院修士2年、博士課程3年でしょ。

昔の知り合いが、俺はドクターだぜって自慢してたから覚えてるの」


ゲゲゲ、おいおい、21年間も学校行っていたら人生半分終わりじゃないか。

ていうか、俺27以上に見られたの。


「そんなことあるか!6歳から9年間みっちり勉強したの。それから仕事始めてまだ22歳だ!」

と俺は反論した。

「何それ、私より低学歴じゃない」

アカネは明るく答えた。


「ふふふ、気を使ってくれてありがとう。

 ジョークを言ってくれたのよね。

 そっか、22歳か。私と二つしか違わないんだね」

え、アカネは20歳なのか?もっと若く見えたぞ。

教育の長さといい、この世界の人間はエルフとまではいかなくても長命なのかもしれないな。


それから、昼間はテレビを見ながら、この世界の勉強をして、夜はアカネと食事をしながら、日本の常識を教わった。


大したことないと思っていた食事が、これまた難題であった。

この世界でいう、パンとソーセージ、シチューくらいしかなかった、俺の国の食生活。

アカネに言わせると「イギリスみたい」だそうだ。


ご飯といって米という穀物を蒸かした主食がメインで、他にパン、麺類(パスタ、うどん、そば等)がある。

この、ご飯、うどん、そばを食べるには、箸という2本の木の棒を上手に操つらないといけない。


これが、結構難しい上に、力が3倍になった俺の握力のせいで箸をさんざん折ってしまい、アカネに怒られた挙句、隣国製と言われる金属製の箸で特訓させられた。

なんとか、食物をつまめるようになったが、アカネには、「外人なら許してもらえるんじゃない」

と言われてしまった。


そして、食べなれていると思っていたシチューのテーブルマナーがまた厄介だった。

アカネがシチューを作ってくれて、パンと一緒にだしてくれた。

俺はいつものように大きな具をナイフで切って、器を持ってシチューを啜った。


すると、アカネが怒鳴った。

「なんて、みっともない食べ方してるの!スプーン使いなさいよ!」


スプーン?この先っぽが丸くへこんでいる器具?それとも三又に分かれている器具?

シチューなんて、ナイフで大きな具を切ったら直接器から飲んで、残りはパンできれいに拭いて食べるもんだろ?

そうアカネに言うと、アカネは大きくため息をついた。


アカネに言わせると、スプーンというへこんでいる器具でシチューの中身をすくって飲むらしい。

また、肉を切るときはフォークという三又の器具で肉を押さえて切るのがマナーなのだとか。


こちらも特訓されたが、すぐに使いこなせるようになった。やっぱり箸は難しい。


しかし、料理の種類はすさまじかった。和食、中華、イタリアンと3種類もある。外食すると他にフレンチだの、タイ、ベトナム、マレーシア、スパニッシュだのあるそうだ。異世界凄すぎ。


しかし、3日もすると、そろそろ金を稼がないといけないと思い始めた。

それに身分証明書の問題もある。なんとかしないといけないが、アカネもその辺の知識はなく、誰か相談できる協力者が必要だ。

そんな相談をアカネにしたところ、

「野毛やみなとみらいの大道芸でパフォーマンスしてお金を稼いで、その場で知り合う人から情報を得て、身分証明書を目指すのはどうかな?」と、提案された。


自分の技能が役に立つ上に、他に良い案が思いつかないので、その線で進めることにした。

魔法(火・風・土)とアクロバットな身体能力を活かせば、小銭は稼げるだろう。


ということで、翌日はアカネの休みなので、野毛とアカネの職場に近いみなとみらいの大道芸をしている場所に行って、どんなパフォーマンスをしているのか実地検分することにした。

アカネは「デート?何着ようかな?」と喜んでいたけど、技術見学だぞ。

女の考えはよくわからん。


しかし、アカネに何事も常識を聞いたり、色々な場所に着いていってもらうのも悪いよな。

仕事帰りで疲れているし。順調に稼げるようになったら、やっぱり奴隷が欲しいよな。


平和なこの国では戦時奴隷はいないだろうけど、借金奴隷はいるだろう。

常識を教えてもらい、俺の代わりに買物に行かせ、そして美人だったら夜はムフフ。


ちょっと下心はあるものの、アカネのためにもと思い、

「ところで、この国では奴隷はどこで買えるんだ? 便利だろう?」

と質問したら、

「何を言っているのよ!!!」

と激怒したアカネに膝を折らせて座らされ(正座というらしい)、みっちり説教された。

この国どころか、この世界では奴隷は禁止で、違法な売買組織はあるものの凶悪な犯罪と見なされること、

冗談でもそんな事を言ってはいけないとのことだった。おまけに夕ご飯は食べさせてもらえなかった。

解せぬ。


まあ、翌日には機嫌が治ったからいいか。




意外と異世界から来た人達って、カルチャーショックを受けない設定が多いんですけど、絶対違和感が多いと思うんですよね。


そして、順調にヒロインに調教される主人公。

キミの未来は明るい(のか?)

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