表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/30

2.異世界ヤバ過ぎる

  2人組の服装はスカートらしきものを穿いているから女性と思われた。しかし、丈が膝よりかなり上と言う常識では考えられないほど露出度が高い服装だった。

  それはまだいい。二人の髪は闇のように黒く、瞳は暗黒を閉じ込めたように漆黒であった。それ以外は人間にしか見えないところがまた不気味だった。

  通常の人類ではありえないその色は、伝説に出てくる悪魔そのものであった。いつ背中から暗黒の翼が生えてきてもおかしくない。


  あの幼女め!平和と言うのは魔物に支配された諦念による仮初の状態とでも言うのか!


  恐怖のあまり硬直して棒立ちになっている俺を見て、右側の女(と思われる)が心配そうに話しかけた。もしや見かけは異常だが、ただの女かと一瞬安堵したが、その言葉を聴いてまたもや絶望に落とされた。


 "Sounds like you are so evil. Are you sick?"

 " May I help you?"


  何を言っているのかさっぱり分からなかったからである。やはり相手は人間ではないのか?


  困惑している俺を見て二人はぼそぼそ何か囁いていた。そして、今度は左側の女がためらいがちに話しかけた。

 "guten Tag"


  やっぱりわからん。


 "Sind Sie Deutscher?"


  全然分からん。


  やはり魔物はこの国の言葉は知らないのか。途方にくれた俺はどうしようかと考えて突然閃いた。そうだ、世界共通語がある。これなら魔物でも理解できる可能性が高い。

  いや、それしかないであろう。万が一この二人が他国の人間でも理解できるだろうし。俺は相手の警戒心を解くように薄く笑みを浮かべて話しかけた。


 Bonan tagon. (こんにちは)

 C^u vi estas esperantisto?(あなたは世界共通語を話せますか?)


  今度は二人が困惑した顔をした。やはり、魔物なのか?言葉は通じないのか!


  思わず俺は最初に翻訳魔法を掛けてもらったこの国の言葉で、ここに送り込んだ幼女を罵った。

「糞ったれ!何が世界共通語だよ、全然通じないじゃないか。あのアマぶっ殺してやる」


  すると二人は驚いた顔をして、それから何故か笑顔で俺に話しかけた。

「なんだ日本語話せるんですか。ずいぶんお上手ですね。英語は通じないし、この辺のドイツ企業の方かと思ったら違ったし、私たちも困ってたんですよ。具合が悪そうですが大丈夫ですか?」

  いきなり、流暢にこの国の言葉を話しやがった。今までの苦労はなんだったんだ。


「いや、大丈夫です。ところでここはどこですか」

  しかし、魔物の線もあるので警戒しつつ場所を聞く。とにかく、まともな人間の住んでいる町に辿り着きたい。


「ここはセンター南の近くの公園ですけど」

「センター南?」

  俺が訝しげに尋ねた。そういえば、この言語のことを女は「日本」語と言ってたな。この国か地域に関係する名前だろうか。


「ええ、市営地下鉄の駅名です。あ、都筑区と言ったほうがいいのかしら」

「港北ニュータウンじゃ大雑把過ぎるよね。さすがに横浜ってことは分かるだろうし」

  いきなり地名が複数出てきたので俺は混乱した。


「あの、近くの町に行きたいんですが。疲れたので泊まりたいですし」

  この場所を把握するのを諦めた俺はとりあえず近くの町の場所を聞いた。

  右の女が答えてくれた。

「この道を下ると駅がありますから、横浜方面に乗れば4つ目の駅で新横浜に着きます。あそこならホテルも多いし、駅前から羽田や成田行きの空港直通リムジンバスが出ていますよ」

「買い物するなら横浜だね」今度は左側の女。


  もう何がなんだか分からなかったが、今はこれ以上聞いても余計混乱するだけだと俺は二人にお礼を言って森を出た。


  森を出たところは普通に植え込みがある公園だったが、ちらほらといる人間たちはみな先ほどの女のように黒髪黒目だった。

  いや、何人かは茶髪で俺は少しほっとして、公園を通り過ぎた。

  高台にある公園から下を見下ろして俺は目を疑った。

 城より高い箱型の建造物が立ち並び、広い幅の道には、うるさく吼える魔獣が凄まじいスピードで疾走している。

  いや、よく見ると魔獣の中に人らしきものがいる。もしかしてこれは魔道具のような馬車なのかもしれない。

  そして、道行く人々は黒髪が大多数だった。他は茶髪がほとんどだった。

  呆然とする俺の頭上を突然、恐ろしい轟音が襲った。見上げると翼が高速回転しているのか良く見えない怪鳥が恐ろしい音を立てて飛んでいる。俺は思わず地面に伏せたが周りの人間は平然としている。

  いったい彼らは怪鳥が怖くないのか。


  俺はゆっくりと森のほうに戻ろうとしたが、幼児が俺の前に立ちふさがった。

「おじちゃん、大きいくせに怖がりなの?」

「君はあれが怖くないのか」

  俺は世間知らずの幼児に語りかけた。


「ヘリコプターの音なんて怖くないよ。おじちゃん恥ずかしいよ」

  ヘリコプターと言う音を聞くと頭の中に空を飛ぶ乗り物のイメージが浮かんできた。

  俺はゆっくり立ち上がって、埃をはたきながら公園を下っていった。


  この世界では空飛ぶ乗り物が実用化しているのか。


  そして、それは俺の生前の知識や技能が何の役にも立たないかもしれないという懸念に繋がった。


  異世界ヤバ過ぎる。

異世界の正体が分かりましたが、さてほとんど何も持っていない主人公はどうするのか。

そういえば主人公の名前も出ていませんが伏線なんでしょうね。もう意味なさそうですが。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ