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第39話 ニルポーチへ向けて(腐女子現る

 そんなイベントがあったことなど微塵にも顔に出さず、ゴーショーを先頭にした4人がトミー達の待つ街道沿いの待避所に到着した。


「ゴーショー君、遅かったね……で、リー君は?」


 リークの姿が無いことをトミーが尋ねる。

 最悪、リークが死亡していたとしても、遺体を運ぶだろうし、先に救助要請が届く筈。

 それが無いことで、リークはこの場には来られない何らかの理由があったと判断してる。


 リークがうっかり転移でキトラが拠点にしているニルポーチの町に転移したことが、串焼きを両手に二桁ほど掴んでいるゴーショーからトミー達に伝えられた。


「ほぉ、この小粒なピリッとしたスパイスが良いアクセントになっておるな」

「山椒だ……」

「コヤツには効きすぎらしい。スパイス無しで焼いてやってくれ」

「ちげうよ! 上手くて泣いてんだよ!」


 捕虜として連行されているキトラが無断で1本パクり、久し振りの山椒の味に涙目になる。


「肉は余ってるから食べるのは構わないけど、リー君のこともちゃんと考えてよね?」

と、トミーがクチの中を肉一杯に満たすゴーショーに苦言を呈する。

 ちなみノックスに向かう馬がトミー達の前を通ったので、オーク肉回収要請を言付けてある。そのうち荷馬車が何台もここに到着する予定なので、肉が無駄になることはない。


「ゴクッ……ふぅ、茶は無いか?」

「少し青臭い薬草茶ならあるよ」


 ゴーショー達を待つ間に、オオバコやヤブニッケイなど茶になる物を採取してトミーが魔法で洗浄、乾燥、粉砕を行って作った茶である。さすが見た目以上に長生きしているエルフ、森の中では生きていくのに困ることがないと思われる。

 フレック、エリオの2人は時々トミーの肩を揉む係と成り下がっているが、そんな小さなことを気にしていてはこの世界では生きていけない……。 


 少しニッケの風味をブレンドしたオオバコ茶でおクチをクチュクチュしたゴーショー達。大人しくしているが、山賊の3人組も連行されていてチャッカリとご相伴にあずかっている。

 その間に洞穴で何があったか、トミー達に伝えられた。


「儂はキトラを連れてニルポーチへ向かうつもりだ」

「キトラは危険ですよ!」


 ゴーショーの言葉にフレックとエリオが意義を唱える。毒殺されかけたのだからそれも至極当然である。


「殺しはしない! 俺を信じろ!」

「ムリだろっ!」


 キトラが居なければキトラのアジトに到着するのが遅れてしまうかもしれない。リークを一刻も早く保護するには、呑気に串焼きを食べている場合ではないのだが。

 キトラがもう『切り札召喚』を使わない、と言っても能力が封じられているわけではない。

 だから、ハイ、そうですねと安心出来る筈が無い。

 フレックとエリオの2人の懸念はもっともなのだ。


「それなら私も同行しよう。毒キノコ程度、別に怖くもなんともないから」

「山賊3人の護送はフレック達4人に任せれば問題は無いしの。それで行くか」


 トミーの桁外れの強さと魔法の腕前を見せられたオレリア、ザレックは、トミーが居れば問題は無いと3人がニルポーチへ向かうことに同意する。

 だが、破壊の天使の毒で死にかけたばかりのゴーショーに無理をさせたくないフレック、エリオは複雑な心境である。


「それならオーク回収の荷馬車が来たら、山賊の搬送にオレリアとザレックが同行し、フレックとエリオは後から儂らを追いかけてこい。

 もし儂が死んでおったらキトラを探して殺せば良い。トミー殿が居る限り、そのようなことは起こらんだろうが。

 洞穴に置いたきた遺体の検分はオレリアとザレックに任せる。道案にロンかヤスを使えば良かろう」


 それが妥協案として採用され、ゴーショー、トミー、そしてキトラがすぐにニルポーチへ向かうこととなった。

 リークが馬鹿をやらかしたお陰で、キトラはあの洞穴で処刑されることを回避出来ただけである。

 元々彼は、パッデスの言いなりになってヤバい商売を続けるのは限界だと感じていたので、何とかゴーショーを味方に付けようと考え始めていた。


 自分には鑑定とアイテムボックスがある。

 先程論破されたばかりだが、それでも多くの人間が金を積んででも欲しがる能力だ――と、キトラは何度目か分からない自信を抱いた。

 これまでも同じ理屈で人を選び、同じように失敗してきたと言うのに、窮地に立つと都合の良い未来だけが見えてしまう。

 それでも今回だけは違う、と考えてしまうのが、キトラだった。


 それに部下として使ってきた3人は殺されており、元将軍と言う肩書きの怖い男性と同行しているのだから、これがパッデスの耳に入れば裏切ったと思われるに違いない。

 そんな危険を犯してニルポーチへ向かうのだから、ゴーショーだって少しは考えてくれるに違いない、そう勝手に考えていた。


 それに、パッデスが使っている山賊はお頭達3人以外にもまだ他にも何組か居て、殆んどの山賊の居場所を彼は知っている。この情報を教えれば、充分に情状酌量に値するのではないか……。

 この世界に生まれて30年が過ぎ、元いた世界の常識が通用しないことは分かっている筈なのに、それでも都合の良い方向に考えるのがキトラの悪い癖であった。



 全裸の俺をチラチラと指の隙間から覗くのは、今の俺より少しだけ年上の女性だろう。セミロングの濃いブラウンの髪で、地味だが目を凝らせば美少女枠だ。

 その視線の行き着く先を辿れば、俺の股間の辺りに到達するのは気のせいだろうか?

 問答無用で、攻撃されたり人を呼ばれることは無さそうだな。


「あなたは誰? キノコのキャッ! キノコの妖精?」


 何を見てキノコと間違える? どう見ても人間だろうが。でも、おかしな勘違いをしているのなら、ひと芝居打ってみるか。

 とりあえず、不安そうな妖精ムーブをしてみる。。


「俺は、妖精? それとも人間? 分からない」

「そのネックレスは……キトラ様の付けてた物では……」

「キトラ? あぁ、ここから西の方にある山で会った男性だね、あの人間は生きているよ。このネックレスはキノコの力を利用した移動の道具だけど、人間が持つと呪いに掛かる。僕はその呪いを解いたのさ」


 ゆっくり落ち着いた様子を心掛けてそう答える。


「そうだったのね……そんな訳あるかーーっ!」


 彼女がそう叫ぶと、腕に通していた藤籠から小振りなナイフを取り出し、凄い速さで投げてくる。

 あまりに一瞬のことで反応が間に合わない。


 ヤバいっ!


 そう思った時、キラキラと光る魔胞子が俺を守るように円柱を形作ると、ナイフを音もなく弾き返したのだ。


「面妖な真似を! ナイフが駄目なら……こっ……」

「こっ?」

「降参デス! 殺さないで下さい! 田舎には通風で苦しむ両親と肥満で悩む兄弟姉妹がたくさんいるんデス!」

「あっそ、それじゃ同情したくても出来ねぇや」

「そんなぁ! 酷いです! 昨日、あんなに愛し合ったじゃないですか!

 何度も何度もキスをせがんできたのに!

 もう、このお腹の子供を忘れたと言うんですか!」


 わざとらしくおよよ~と泣き崩れる振りをする残念系美少女に軽~く殺意が沸いてくるよ。


「で、君は何しにここに来たんだ?」

「俺に会いに来てくれて嬉しいぜっ、と言う場面デス!」

「どこの三枚目俳優だよ! 初対面っ!

 昨日も会ってないし、妄想するなら人には迷惑掛けないように、ルールとマナーを守ること!

 出来ないならシロソウメンタケの刑だから。詳細は省く」

「きゃあっ、素敵です!」


 この女、一体どんな刑を想像してんだ? 想像を絶する腐女子かも。

 それより、意思に関係なく俺を守ったこのキラキラは一体何だ? 俺の体から魔力が出た感じはしなかったから、外部から自動で発生したと思う。

 フェアリーリングの近くに居れば、自動防御が働くのかな?

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