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第36話 お頭の秘密

前半はトミーさんの無自覚描写、後半が本題です。

 オーガ率いるオークの群れとの戦いは終わった。全員は無傷だった。


「やっぱりオーガ程度ならこんなものよね。

 でも、君達って運動足りてなくない?」

 

 殆んど時間を掛けずにオーガとオーガボスを倒したトミーは、その後オークの群れを始末するのは君達の役目だよ、と声援を送っただけ。

 トミーの被害者とも言えるフレック、エリオが2人で倒したオークは20体を越える。人間基準ならこれでも充分強者と言って良い。

 ゴーショー元将軍もオークぐらいは一撃で倒せるので、2人は人外の強さだと思っていたのだが。


「……まあ、理由を聞く必要はなさそうだな」

「……連れてきた理由は、今は聞かなくていいですね」


 それ以上の会話は必要ないと、2人ともが同時に判断していた。


 終えたフレックとエリオがオーガボスの検分を行ったが、特に怪しいものは見つからない。

 それでもトミーは違和感があると主張する。


「随分とチグハグな団体だったね」

「チグハグ? それはどう言うことです?」

「これだけの数なら、本来はオーク側が主導しているはずよ」


 トミーの頭の中では、頭に王冠を被ったオークがふんぞり返り、その脇を固めるように槍を持ったオークが立っている映像が流れている。


「規模から考えて、オークの集落から出て来たと思うの。

 だけど、そのオークが居ないってことは、オーガのボスが倒したってことよ」


 フレックとエリオは別におかしくないのでは、と素直に思う。弱者、強者とはそう言うものだと知っているからだろう。


「親分を殺されたオークが仇に付き従うって不自然よ。

 オークにとってオーガは捕食者。いつか食われると分かってる相手に従う理由は無くて、普通は逃げるか徹底抗戦するのよね」

「……詳しいな」


 軍部上がりの2人は人間を相手にすることが多く、魔物の生態に詳しくない。


「食う側と食われる側の話よ。

 オーガはオークは餌だし、そもそもオーガはそんなに利口じゃないよ」

「そうなると、何者かが仕組んだって可能性が出てくる訳か」

「うん、そう思った方が安全だわ。

 ノックスにこの群れをけしかけて嫌がらせをしようとしたのか、それとも既にどこかの村を襲撃してて、次の場所に移動してた途中か」


 考え込むトミーを見て、この人が居れば魔物の群れがノックスに攻め込んで来ても大丈夫ではないかと思ってしまう2人だ。


「運動したらお腹減ったでしょ。焼いて食べようよ」


 倒されたばかりのオークは切って焼くだけでも充分に旨い。効率重視で切るのはトミー、焼くのは2人組となり、オークが解体される隣で石を組んだ竈が作られる。 

 木剣を作るのに切った幹の残りで木串を作り、肉を刺して2人に渡す。

 トミーは皿も作った。木工職人と遜色は無いと言っても良いレベルの腕前である。

 トミーが出した火炎石を薪の代わりに竈にくべる。一度発火用の魔力を通せば一定時間燃え続ける特別製だ。これで無煙焼肉コンロの完成だ。


 トミーが森に入り、何かの丸い小さな木の実をたくさん採ってきた。それをナイフで叩いて細かくすると、

「焼く前にこれ使って」

とフレックに渡す。刺激的な香りがスパイスだと主張する。

 肉とスパイス、串と皿、火も用意できたので後は焼くだけだ。ゴーショー達が戻るのを待ちきれなかったトミーが自分の分を先に焼けとフレックに催促し、そこからなし崩し的に焼肉パーティーが始まる。


 肉は棄てる程もあるのだから、運良く通り掛かった者達にも振る舞われた。だが、ゴーショー達の帰りが思ったより遅い。

 その時のゴーショー達はと言うと……


 山賊達が隠していた、ある魔道具を目の前にしていたのだ。


「転移の魔道具と魔方陣じゃな」


 2人のお供の内の1人、ザレックがお頭達が食事に使っていた空間の床が魔方陣だと暴いたのだ。魔力の流れに敏感だった彼が居なければ、魔方陣の上に蒔かれた砂による擬装を見落としていただろう。

 リークは魔力が漏れていることに気が付かないぐらい鈍感なので、これに気が付く訳もない。


「この転移魔方陣とお頭の持っているネックレスが対になってるのか。ここに来る道が無かった訳だ」


 道が無いから怪しいと思ってたんだけど、まさかキノコ天国のフライパン広場が転移先とはね。


「これ、書き移しても使用出来るんですかね?」


 ザレックの疑問は出てきて当然かな。


「恐らく無理じゃろ。誰が書いたのか知らんが、魔方陣には制約があるらしい。土地的な何かがあるのか、まだ何も解明は出来ておらん」


 軍事部門の偉い人なら、魔方陣のことを知ってても不思議じゃないか。

 親方とキトラのネックレスを接収し、対になる魔方陣をノックスの町に作れば移動と物流がラクになる、誰でも町にこの魔方陣を作りたいと考えるほだろう。


「こう言うのって、初回起動時に使える人が限定されたり、凄い魔力を必要としたりするのがお約束だと思うんだけど。

 お頭、その辺の事を含めてじっくり教えてね、男の子のままで居たかったらね」


 後ろ手に縛られたお頭にそう言ってナイフをちらり。


「分かった分かった! 喋るからおかしな真似はするな」

「ゴーショーさん、お頭はどうも息子さんと別れたいみたいだからやってあげて」

「ん? そうか、なら仕方ない。こちらもいつまでもここに居るわけにはいかん。ズボンを降ろせ」


 ゴーショーさんが剣を手に取りお頭の股間に切っ先を向ける。

 そんな脅しが効いてお頭達が半ベソになって教えてくれた。


「要するにじゃ。

・魔方陣は他にもある

・ネックレスが鍵

・移動範囲は使用者別に制限あり

・奪われると死ぬ

・奪った者が次の所有者になる

 ……便利だが、呪い付きじゃ使いにくいのぉ」


 ざっとこんな感じか。万能ではなく制限があり、且つ呪いのような効果まである。


「お頭がこの洞穴を拠点にしてるのは、そう言う事情があるんす!」

「お頭からネックレスを奪わないでくださいっ!」


 ロンとヤスのコンビが深く頭を下げて懇願する、なかなかお頭思いの良い手下を持ったじゃないか。

 でも、お頭からそのネックレスを奪ったら、その人がお頭の立場になるのだから罰ゲームみたいで意地が悪い。


「しかし、本当に移動出来なくなるのか検証せねばならんな。今の話が嘘か真実か、儂には判断が出来ん」


 確かにゴーショーさんの言う通りだよ。いくら強迫して喋らせたからって、山賊が全て真実を語ると思うのは甘ちゃんも良いところだな。


「この洞穴を拠点にした理由は分かったが、お頭は他にもアジトを持ってるんだろ。そっちは?」

「他の所は寝泊まりするのが精一杯の場所で使いたいとは思わんわ。そうでなければとっくに移動しておる。

 ここは荷物を運ぶのも簡単で、一番居心地が良いからの」


 それで闇商人が来るのをじっと待ってた訳か、そりゃ納得だ。


「で、キトラが移動範囲の広さを行かして、奪った荷物を回収してるってわけね。闇商人じゃなくて、ただの運び屋だな」

「うむ、それならキトラを殺さなかったのは正解だったな。

 キトラはパッデス・トール男爵の命令で動いているのは間違いないな?」

「パッデス本人がここに来た訳ではないが、キトラがそう言っていた。

 キトラが嘘を吐いていなければ間違いない」

「ならば、キトラの転移する先はどこか知っておるか?」

「それはアッシが見ていやすぜ。

 トール領の一番東の方にあるニルポーチの町のキトラの私有地っす。結構広い林の中なんで、どうして建物の中じゃないのか不思議に思ってたんで」


 屋外に魔方陣って、何かの制限があるのか?

 単にサイズの問題?


「ニルポーチ……急いで移動してもここから1日半先か。キトラが起きたら転移させてみるかのぉ」

「それは危険過ぎます! 出た先で敵が待ち構えているかも知れません」


 ゴーショーさん、行く気満々だね。

 でもエリオさんが言う通り、出た所に出迎えの人達がたくさん並んでいたらヤバいでしょ。

 と言うか、キトラは1日半も歩いてここに来たのか。そりゃ大変だったな。

 パッデスって奴がどうやってキトラを使うようになったのかとか、解明しなきゃいけないことが色々出てきそう。


 でも、お頭が着けてたネックレス、擬装している外装を外すと中身がどう見ても白いキノコの丸い笠の部分みたいなんだよね。シロオオハラタケじゃないのかな?

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