表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/45

第33話 闇商人の処遇

 ドクツルタケの毒で重態となったゴーショーさんだが、闇商人の召喚した霊芝のお陰で事なきを得ることが出来た。

 だがこの闇商人の男の能力、使われ方によってはこちらが全滅していた可能性がある。


「あれが……異邦人特有の“何か”か。凡人の俺らにはとても説明のつかん回復現象、というべきか」


 オレリアさん、ザレックさんが死にかけていたと言っても良いゴーショーさんの超回復に奇跡を見たようだと感想を述べた。

 神から与えられた特種スキルだから、確かに奇跡の技と呼んでも大きな間違いではないだろう。

 既に立ち上がったゴーショーさんが手をグッパグッパして調子を確かめ、左右の拳をゴツンゴツンと2回ぶつける。まさか寝起きにいつもやってるのかな?


「うむ、体に異常は無さそうだ」


 診断方法が独特過ぎると思うが黙っていよう。それより体から霊芝が生えてこないか心配だよ。


「さすがにこの男は我らの手には負えぬ。

 鑑定と切り札召喚だけならまだしも、アイテムボックスを持っている者は、軍部に所属した我らから見れば歩く戦略兵器と同等であるからな」

「手に負えぬって、どうするの?」


 ゴーショーさんの手に負えないって、権力的なことじゃなくて武力的な意味だよね?

 アイテムボックスって便利だから俺も欲しいんだけど、運送屋視線で考えたら仕事が失くなるから困るぐらいじゃない?


「分からんか?

 では逆に聞くが、もしリークが国家安全を担う立場だったとして、目の前に何でも収容可能な人物が手ぶらで立っているとする。

 君はその者を安心な人物だと胸を張って王の前に連れて行くことが出来るかな?」


 アイテムボックスぐらいあっても平気でしょ……ん? 平気で兵器を運送屋……てことは、俺、まさかだけど持ってなくて良かったのかも。


「いぇ……何を持っているか分からない、そう言う相手だと知っている以上、100%安全だと言って王族の前に出すことは出来ませんね」

「その通りだ。その話は別に王の前に限らん。外国から入って来たときに禁輸の品を持ち込んでいないか、国を出る際に機密文書を持ち出していないか。犯罪の証拠を隠していないか。疑えばキリがないのだ。

 アイテムボックスには実体が無く、我々でチェックする事が不可能な以上、使わせないと言う選択肢しかないのだ」


 そうなると、アイテムボックス持ちは何処からも動けなくなるって訳で、牢屋じゃなくても軟禁状態にされちゃうか。

 よく勇者が魔王を倒した後に殺されるのも、似たような理由なのかも。


「しかもコヤツは我らを殺そうとした、特に儂は死にかけたな。となると取れる手は一つしかない、分かるだろ?」

「でも、それだと……あまりにも……」


 言いたいことは分かる。

 国のルールに基づいて、ゴーショーさんが『アイテムボックス持ち』という理由だけで、この闇商人を排除しようとしている理屈も理解出来た。


 ただ――


 その考え方は異世界人が英雄になる余地を潰すものだ。

 力を持てば危険視され、管理され、最悪排除。


 俺の好きな“ファンタジー”は成立しない。

 ……だけど納得してしまった時点で、俺はこの世界の住人なんだよ。


「我らは性善説で判断はせぬ。

 もしリークが異邦人でアイテムボックス持ちだとしても、そこそこ信頼に足る実績があるので多少の考慮はするが、コヤツは無理だ。

 知っていることを吐かせた上で処刑することになる」


 考慮はして貰えるのね。それなら何とか……でも無くて良いやと考えていると、ゴーショーさんの言葉を聞いた闇商人が激昂する。


「おい、ジジイ! ふざけるなっ!

 アイテムボックスを持ってるぐらいで殺すとか、お前ら頭おかしいだろっ!」

と殴り掛かるが、拳はペチッと止められ、逆にあっさり転ばされて攻撃は終わったが。


 さっきの説明聞いたら、他人事なら納得出来ちゃうけど、自分の事だと納得出来ないってのは理解してやるよ。

 でもゴーショーさんは偶々生き延びただけで、死んでいたら俺がコイツを殺してただろうから結果は同じことか。


「今回は運良く殺人未遂で終わったが、ここに来てからお前は何人殺してきた?

 直接手を出しておらずとも、結果的にお主が殺した者は何人おる? それを踏まえて、自分がまだこの世界で生き延びる価値があると言うなら申してみよ」

「価値とか関係無いだろ、この糞がっ!

 もう全員死ねっ! 召喚! 破壊の天使!」

「あっ! 馬鹿っ」


 皆がまた白いキノコが出てくるのかと身構えたが、今度はいくら待っても出てこない。

 魔力切れか? それともやっぱり何か制限があるんだろうね。


「なんで出ねぇんだよ? くそ、召喚! 召喚! しょうか――」


 ゴスっと音がした時には、闇商人の頭にゴーショーさんの短剣の柄が叩き付けられ気絶した。生かして連れて帰るだけでもリスクが高いけど、どうするつもり?


「コヤツの能力は危険すぎる。生かしておけば必ず災いをもたらすじゃろうな」


 やっぱりな。ゴーショーさんが言葉で追い込みすぎた気もするけど……確かにコイツの切り札は放っては置けない。次に敵対した時にも絶体勝てるとは思えない、いや、勝てない可能性が高いかも。ここで話を聞いてこっそり処刑って選択肢しか無いんだろうな。

 やっぱり強すぎる能力を持った敵はこうなる定めなんだよ。


「お頭、ロン、ヤス、お前ら普通の山賊で良かったな」

「うるせぇ、変態フルチン野郎」

「変態で結構。犯罪に手を染めて処刑されるよりはるかにマシな人生だ」


 気休めにしかならないけど、そう言って自分を誤魔化す。この3人も今までに人を殺してきたのなら、罪を償う必要がある。死刑か他の刑かの判断は、然るべき人物に任せるしかない。


「そこの3人、死にたくなければ知っていることを洗いざらい吐いてもらうぞ」

「パンスト男爵が黒幕なのは分かってるから、もう少し詳しく説明してね。場合によっては恩赦を考えてもらえるかもよ」


 あ、ゴメン、適当な嘘を吐いたわ。恩赦なんて制度がこの国にあるかどうかも知らないし。でもさっきお頭が闇商人をどついたお陰でドクツルタケの群れが消えたんだし、そこは一考の余地ありだと思う。


「まずは襲撃現場からどうやってそこの荷物を運んだかを教えて貰おう」


 街道からこの洞穴の入り口まで、大小の木やら藪やら急な坂やらがある。そこを大きな木箱を担いで持ってくるのはかなり厳しいだろう。

 別のルートがあるのか、他に何かファンタジックな裏技があるのかのどちらかだ。

 別のルートはこの洞穴を抜けた先にあるのかも。そう言えばだけど、

「この奥にある空間、今から思えばなんか不自然だった気がするんだけど。実は何か秘密があるんでしょ?

 それもゲロっちゃってね」

と、軽く揺さぶりを掛けておこう。


「この奥か? そう言えばこの山には転移の魔方陣があると聞いたことがある。作り話だと思っていたが」


 へぇー、そんな凄いものがあるんだ。さすがファンタジー世界万歳だ。行きたい場所に人も荷物も通れるのなら物流業に大革命だよ。

 でも俺はゴーショーさんに転移とか転送とか、そんなことは言っていない。アドリブか存在が知られているからお前ら持ってんだろ? 吐けよって感じで聞いたのか?


「おぅおぅ、どうやら図星のようじゃな」

「調べて来ます」

「マジ?」


 お供の2人がサッと動いたのでそちらは任せて、俺は山賊の3人が逃げられないようにブランフラジールで拘束しておく。

 地面から生やせば人の力じゃ抜けないぐらいの拘束力を持つキノコって一体何なんだろう? 実はこれが当たり前に思えてきて、便利使いしてる自分も既にどこかおかしいのかもね。


 しかし、分からないことがある。

 この闇商人がアイテムボックス持ちなら、襲撃班に居れば奪った荷物を即回収できたはずだ。

 それをせず、わざわざこんな場所に集積している理由が見えない。

 襲撃に参加できなかった事情があったのか、あるいは失敗時の保険か。

 だが街道から少し森に入っただけの場所に置く意味は薄いし、この洞穴を使う理由にもならない。

 アイテムボックスの容量制限、別のアイテムボックス持ちの存在、移動制限――


 どれも可能性としては浮かぶが、どれも決定打に欠ける。

 推理を転がすのは楽しいが、結局のところ答えは一つだ。お頭たちに喋ってもらう方が、ずっと早い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ