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第26話 2つのギルドの後始末(+金の……)

2日続けて、2話投稿していました……何故だろ?

 草原でリークと別れた白鷲、海蛇の計四人が夕方にノックスの町に到着する。この一番混む時間帯に町へ着くよう、あらかじめ移動速度を調整していた。

 国宝の剣と鞘は外観からは分からないようにそれぞれがテントに包んで持っている。帰りの道中にもバッカニアギルドの者に追い越されることがあったが、特に何か言われることはなかった。


 城門で門番によるメンバーカードの確認をしてもらう際、大きな革袋に入ったコヨーテの頭部を見た新人の門番がプチパニックを起こし、先輩に怒られる一幕があったのを微笑ましく見ていた。


 5匹分のコヨーテの頭は白鷲の2人で3匹、海蛇の2人が二匹分のコヨーテの頭を持ち込んでいて、ここで申請することで後日役所の方から報酬が支払われる。

 コヨーテの頭のように一見無価値に見える物でも、その灰は肥料として利用される。生きているコヨーテは人を襲う厄介者であるが、死んでから人の役に立つなど皮肉過ぎる。

 この世界では、善悪問わず真に無駄と言える物など恐らく無いのである。


 コヨーテの処理は至ってシンプルだが、この4人は国宝の剣を領主に献上すると言う面倒な仕事がまだ残っている。

 だが、彼らはそれぞれのギルドに戻り、草原でのことの顛末をギルドマスターに話す、そして今後のことを両者で擦り合わせる必要があると考えていた。


 冒険者ギルドと呼ばれる組織が1つの町に幾つもあると、どうしても他のギルドの状況が気になるものだ。

 特に国からのギルドへの支援に関わる事柄についてはアンテナが高く張られる傾向にあり、今回の宝剣探索などはその最たるものである。


「じゃあ、今日はこれで」


 白鷲の2人と海蛇の2人が通りの途中で別々の方向に分かれる。

 町に入ってからは、どこに人の目と耳があるか分からない。

 彼らは余計なことを口にせず、自然を装って歩いた。

 はっきり言えば、見つからないままの方が良かったとも言える厄介な品を持ち帰ったのである。出来れば今後もこの件に関しては秘密裏に全てを終わらせたい。


 白鷲のケーンとジョージはギルドハウスへ向かう前に一度自宅へと戻る。自宅と言ってもギルドが借り上げ、管理しているアパートメントである。

 現役の間は一軒家を持つより、管理人の居るアパート暮しの方が何かと便利なのだ。


 ちなみにケーンは妻と子供が2人、ジョージは妻は居るが子供はまだ出来ていない。その2人が家族と少し語らった後、アパートからたったの徒歩3分程のギルドに揃って向かう。

 ギルドの近くにアパートを用意するのが、ギルドメンバーを獲得する最善策の1つであったからだ。


 ギルドの中では彼らは実力者であり、2人がギルドのホールを歩けば会釈したり手で挨拶する者も少なくない。

 だが、この2人が宝剣の探索に出ていたことを知る者は1人しか居ない。ギルドのトップであるギルドマスターが領主に直接依頼を持ち掛けられ、2人にこっそりと依頼したからだ。

 つまり宝剣の話は3人だけの秘密であり、表向きにはジリスの巣穴に落とした指輪の捜索依頼として処理されていた。


「こんばんは、ケーンさん、ジョージさん」

と遅番の受付嬢が2人に挨拶する。


「ギルマス、今居る?」

「はい、部屋に居ますよ」

「じゃあ、会いたいから処理を頼む」


 2人から受け取ったメンバーカードを何かの道具にセットし、何やら操作を始める受付嬢。暫くして、

「すぐ会えますよ」

と笑顔で伝える。

 このギルドに電話や無線は無いが、メンバーカードを利用した特定の信号の送信が可能な魔道具がある。

 『ギルドマスターの部屋に会いに行くが良いか』と問い合わせ、ギルドマスターから了解と返答が送られるまで僅か30秒程しか掛かっていない。


 2人がギルドマスターの部屋に向かうと、ノックする前に中からドアが開いて招き入れられた。


「思ったより早く戻って来たな」

「はい。ちょっと厄介なことになりましてね。物は見つけたんですが、ギルマスから依頼主に知らせるのは少し待って欲しいんです」

「これは急ぎの案件なんだが、訳を聞こう」


 ギルマスに促された2人が事の顛末を全て語り終えると、ギルマスが難しい顔で考え込む。


「領主様に届けるのは式典の日にちから考えてギリギリの日にしようか。

 王都に剣を届けるには最短6日、式典の8日前にノックスを出るように調整したい」


 ここで壁のカレンダーに視線をやり、

「式典は20日後だな。10日間は知らぬふりで寝かせておこう。今日明日のうちに領主館に行けば、間違いなくバッカニアが変に勘ぐるだろう」


 海蛇の2人と話した通りの反応をギルドマスターが見せたのでケーンがホッとした。


「しかし、助け隊に加入したリーク君の話、こっちでもは噂レベルでは聞いていたが。

 噂の内容からはクニンキンとカシガを倒せるだけの実力者とは思えん。

 拘束に使ったと言うブラジール? がどれ程のものか分からんが、恐らく強力なユニーク魔法だろうな」

「形や硬さを保てるのが時間制限付きみたいなので使いどころは考える必要がありそうですが、拘束のツールやトラップとして使えます」

「それに1人でグレイコヨーテを5匹も撃退していますからね。あのアントウォーカーがメンバーに加えたのも納得です」


 ケーンとジョージも実際にリークの戦闘を見た訳ではないので、ギルマスの意見に特に反論は無い。


「恐らくブラジールは防御に使い、それ以外の奥の手で倒したんだろう。それは聞いていないのか?」

「はい。ですが魔法で作った白くて丸い容器にコヨーテの頭を入れていたので、任意の形状の刃物を作ったのかも知れません」

「白が好きなのか? いや、色には意味は無いだろう」


 シロソウメンタケがブランフラジールの根本となっているので、白色しか出せないのだがそれを知るのはリークしか居ない。


「その子は白鷲にスカウトは出来そうか?」

「本人曰く、戦闘はからっきしダメなのでギルドには入りたくないそうです」

「ユニーク魔法を人には見せたくないのだろうな。

 分かった、トミーとは揉めたくないのでこちらから誘うことはしない。君らもそのつもりで」

「もとよりそのつもりです、わざわざ虎の尾を踏む必要はありません」


 2人はリークが自分に向かって飛んできた斧にびびって身を竦めていた様子を思い出す。

 彼の能力は使い方次第で役に立つので欲しいと思った。だが、どう考えても特にギルドマスターが求める戦力としては役には立たない。

 割り切って人を道具として見ることができる者でない限り、今のリークは非常に扱いに困る存在だった。


 その日は悶々としながら寝付けぬ夜を過ごした2人である。


「壁が……もう少し厚けりゃ……」


 いよいよ引っ越しか?



 海蛇のジンとリュークもアパートへ戻り、旅装を解いてからギルドへと向かった。

 この2人が宝剣の捜索に出ていたことは、白鷲と同様にギルドマスターしか知らない事実である。


「まずはお疲れさん。で、物は見つかったか?」

「白鷲のケーンとジョージの2人が本体を見つけ、こちらは容器を。ただ、少々厄介なことになり、報告は日をずらしてから行うことにします。実は――」


 2人が草原で起きたことを全て話すと、ギルドマスターが頭を抱えた。大袈裟な表現ではない。


「ノックスのバッカニア支部に領主様から話が行ったとは考えられない。王都の方で漏らした奴が居るに違いない。

 それよりもクニンキンとカシガが死んだことをあちらさんがどう考えるかだ」

「バッカニアのイズバルですね」

「指切りのイズバル……か」


 海蛇ギルドはこのノックスにしかない小さなギルドであるが、バッカニアは王都以外にも支部を持つ国内でも片手の指に入る規模を持つ冒険者ギルドである。 

 ただし元海賊とあって、ガラの悪さは断トツの1位と言っても良いだろう。

 

「白鷲か海蛇のどちらかが殺したと思うか、それとも協力して倒したと思うか。

 言っちゃなんだが、お前ら2人でクニンキンとカシガのコンビは倒せる相手じゃない。4人がかりでやれば勝てるだろうが」

「やはりクニンキンはそれだけの強さなんですよね」


 ジンとリュークは海蛇の中でも戦闘力において上位に入るコンビである。

 だが、それでも冒険者には明確な力の格差と言うものがあり、下位の者が上位の者に勝つのは困難であった。文字通りレベルが違うのである。


「2人がキノコを食べて勝手に殺しあったとは普通は考えんだろう」

「やはり……無理がありますか」


 ギルドマスターに否定されて、『理由付けに強さが足りないのは分かっている、だがあの場ではそれ以上の案が出なかったのだ』とジンは心の中で弁明する。


「当たり前だ。リークがそう言う安易な考えを持つのは構わんし、むしろそれぐらいの考えしか出来んアホの方が都合が良い。

 だがお前らが同調してどうする」

「浅はかでした、申し訳ありません」


 そんな訳で彼らは今後の対策の練り直しを余儀なくされたのだ。


「まぁ、今からやれとは言わんよ。今日は帰って休め。ただし、羽目は外すな」

「はい、それは分かっています」


 夕食後にでも平気で仕事を出す上司だが、今日は機嫌が良かったのかすぐにやれと言われなかったことにホッとした2人である。

 サブロク協定……なにそれ、おいちいの?



 そして翌日――


 リークが草原から離れて間もなく、ノックス近郊に新たな異変が起こる。

 第二王子達によって傷を付けられたゴールドバイソンが群れを率いて現れたのだ。


 気の荒いことで知られるその魔物は、王子と下級騎士の2人をツノで突き、脚で踏みつけただけでは気が収まらず、戦いの後もなお西へ東へと移動しては暴力の嵐を起してきた。

 群れの出現の報せを受けたザイルズ領主軍精鋭部隊が緊急出動したことで、多少の怪我人を出しながらも群れを追い払うことに成功する。 


 この際に白鷲と海蛇のギルドマスターは急遽予定を変更した。内々でザイルズ領主に接触を図り、宝剣と鞘を引き渡したのだ。

 これを発見したのはザイルズ領主軍として表向きは処理されることになり、バッカニアが白鷲、海蛇への疑念を無くすきっかけとなる。


 リークの出発があと30分も遅ければ、彼の命はなかったかも知れないのだが、本人がこの時知るよしもなかったのは幸せなことである。

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