第25話 白鷲と海蛇は同盟を組む(+バッカ +鍵はいいから本題ね)
本文の後に短い他者視点が2つあります。
リークに剣と鞘を押し付けられる形で受け取り、ケーン達はノックスへと戻っていた。
その道中、リークのこと、バッカニアへの対応について話していた。
「どう思う?」
「ケーン、主語抜きで話すのは禁止だろ。それで今までに何回おかしなことになったか。
まぁ、さすがに今回は分かるが」
白鷲のジョージがパーティーリーダーであるケーンに苦言を呈する。
「ケーンさん、リークはかなりの遣り手ですよね。本人は謙遜してますけど、実力が分かってないみたいでした」
「ブランフラジールってオリジナル魔法だよな。
あれがもっと使いこなせるようになれば貰い手が付きますよね」
海蛇のジンとリューも、リークの将来性は高く評価をしている。いずれ機会があればギルドに勧誘したいとも考えている。
「トミーさんが手放さんだろうな」
「戦いは素人、だが魔法は便利。扱いは難しいが」
それは白鷲の2人も同様だったので4人が内心ガッカリする。リークが魔法で作った鉄ぐらいの強度を持つ白い棒が便利で、戦闘馬鹿のギルドだが在籍させて鍛えても良い、出来ればよそのギルドには渡したくない、と思えるのだ。
今はまだ粗が目立つ。だが、磨けば光る。
「少し常識が足りていないのと……性格が……だが、きっと訳有りだろうな。
それより問題は今後のバッカニアのことだ。
我々にも王子の剣の探索依頼が来ていたことを向こうさんにも知られていると思って間違いないだろう」
ケーンの言葉に3人が頷く。
彼らが探していたのは、第二王子が宝物庫から勝手に持ち出した宝剣である。
この大草原に出没するゴールドバイソンを退治することで、第一王子より王位継承権を上に引き上げようなどと短慮を起こし、魔物に倒されたのが先月のことである。そのお陰で第一王子の王位継承が確定したのだから皮肉なものだ。
王位継承権は王子自らの考えだけでは覆すことが出来ない。
生まれが先か後かで第一王子と待遇の違う第二王子の気持ちは彼らにも分からないことはない。第一王子が自分の方が後から生まれたかった、と愚痴を溢しているなど、公にはされていないのだから。
「第二王子が無謀な賭けに出たのは別に構わないんだけど、わざわざこんな僻地まで来る必要は無かっただろうに」
海蛇のジンが第二王子の軽率すぎる行動を非難する。王族が亡くなった地は『冒険者が魔物の間引きをサボっていたから王子が亡くなった』と悪く言われがちだから。
「ゴールドバイソンは逃げ足が速い。追われればすぐに大地の果てまで走ってしまう。
確かに翼持つ獅子が狩るには相応しい魔物だが、正面から打ち合える人間など数える程しか居ないだろう」
「国宝を持ち出せば勝てると踏んだんだろうね。
剣なんて所詮道具に過ぎないってのに」
ケーンの言葉をジンが補足する。
「今回の不始末は公には出来ないから、白鷲、海蛇でも少人数で秘密裏にって話だったのに、どうしてバッカニアが嗅ぎ付けてきたんだろうね? 上の方の誰かが漏らしたとしか考えられないね」
「横取りが奴らの得意技だからな。持ち帰った者への褒美の1割でも情報料として掠めようって奴が居たんだと思う」
ジンの言葉から白鷲のジョージが推察する。彼らにとってバッカニアには商売敵ではなく略奪者扱いであった。
「ノックスに帰るまでも、帰ってからも最後まで気を抜くな」
「分かってますよ。
しかし、『マッスルマスターのクニンキン』と『狐目のカシガ』の2人が帰って来ないってなると、やっぱり俺らが疑われませんかね?」
「だからリーク君も含めて口裏合わせが必要なんだ。
リーク君は別の場所でジリスを探していたから、我々とは一切関わっていない、顔も知らない、これは絶対だ」
「リーク君がうっかりポロリとやっちゃう可能性も高そうだけどね」
ジンの言葉にケーンもそれだけが不安材料であると思っている。
「彼とは暫く極力顔を合わせんようにしよう」
「コヨーテのことはトミーさんが何とかしてくれますよ」
「そちらにも口裏合わせか。
とにかくリーク君と我々が絡んだ事実さえ隠せれば、ここに居る者なら各自で何とか出来るよな?」
「そうですね、皆もそれで宜しく頼むよ」
共通の邪魔者と相対する者同士、互いが冒険者ギルドでありライバルである関係ではあるがここで協力関係が結ばれることとなった。
◇
「おう、剣はまだ見つからないのか?」
「昨日の昼過ぎにクニンキンとカシガの2人を草原に派遣したばかりですぜ。そんなに早く見付かる訳がないじゃないですか」
「うるせぇよ。白鷲、海蛇の奴らが先に依頼を受けて探しに行ってたって聞いて腹が立ってんだ。口ごたえするな!」
バッカニアギルドの一室でこのような遣り取りが行われていたのは、白鷲、海蛇の4人がリークを草原に残してノックスの町へと戻っている最中のことだ。
「それに何でアイツらのとこに依頼が出てウチには来ねえんだ? 条件は同じだろうが!」
「ザイルズ伯爵がウチを嫌ってますから仕方ないでしょ」
「それが何でかってんだよ!
どうしてノックスで一番のウチじゃなくて、二番手、三番手に依頼が出てんだ?」
「ウチは探し物なんてショボい仕事はやらん、とギルドマスターが伯爵に言ったことがあるからですね」
「……宝剣だぞ!」
「物は関係無いとザイルズ伯爵が判断したのでしょう」
サブマスターは以前領主館でギルドマスターが言った時のことを思い出していた。元々は雑用系の依頼も冒険者ギルドが受けていたのだが、粗雑な者が多く、利用者から批判が噴出していたのだ。
それは領主も同じ気持ちであった。そこで雑用系の依頼は商業ギルドが取り仕切り、冒険者ギルドは魔物の討伐を行うこととなったのだ。
元々海賊をしていたバッカニアの幹部達はちまちまとした配達や掃除などの依頼を馬鹿にしており、領主館に各ギルドが招聘された際にそうぶっちゃけてしまった。
それに対し、白鷲、海蛇は場合によっては引き続き雑用系依頼も受けることを承認している。そんな背景があり、正式にバッカニアには宝剣捜索の依頼が出されていないのだ。
だが、バッカニアにを支援する者が宝剣のことを聞きつけ、バッカニアを焚き付けた訳だ。宝剣を持ち帰ればかなりの金が手に入るので情報料として2割で手を打とう、と言う考えなのだ。
もしこれで白鷲、海蛇ではなくバッカニアが宝剣を持ち帰ることになれば、領主は大いに慌てることになる。
支援者は情報料よりそれを狙っているのだがそれは彼らの知る範疇ではないし、既に宝剣の捜索に向かわせた2人が戻らぬ人となっていることも尚更である。
◇
「リドルファン第二王子を宝物庫に誘導した者が判明しました。父親の多額の借金の肩代わりをして貰う代わりにと――」
「そのような些事はよい。宝剣の捜索を急がせよ。
翼持つ獅子の剣はただの武器ではないのだ。私が王位を継承する者と正式に認められる、立太子式までに必ずこの手に取り戻さねばならぬ」
弟が勝手に宝物庫から持ち出した宝剣は、三週間後に開催される重要な式典に欠かせぬアイテムである。
見せ掛けだけの剣であれば新しく打たせれば済むのだが、柄頭に嵌め込まれた宝玉には特殊な役目があるため代用が利かないのだ。
――もし第三者の手に渡っていたら。
その可能性を、彼はあえて考えないようにしていた。
「リドルファンが城を出てからの行動は把握出来たのか?」
第一王子の際側近であるハルボリー秘書官がメモ帳を取り出す。
「王都から西方都市ノックスまでの護衛としてバッカニアギルド本部が手を貸しております。
この際、第二王子護衛騎士団からは下級騎士マードスとタルワリの2名が同行しておりますが、未だ帰還しておりません。
ノックスでもバッカニアのノックス支部がゴールドバイソンの捜索に同行したと情報を得ておりますが、ゴールドバイソン討伐の際には王子と下級騎士2名だけで町を出たと言う話であります」
そこで秘書官がメモ帳をポケットに戻す。
「ゴールドバイソンは皮も筋肉層も分厚いのだ。
宝剣を手にしたと言え、3人で戦うような相手ではなかろう?」
「翼持つ獅子の剣でゴールドバイソンを倒したと言う逸話を真に受けたのでしょう。実際には弓で弱らせた後にトドメの一撃を入れただけだと考えるべきであります。功を焦った結果、まともな判断が出来なくなったのかも知れません」
「騎士団でもサシで倒すのは難しいか?」
「1トンを越す巨体の突進をどう躱すか、躱してからの反撃をどう入れるか、その2点につきます。
剣ではなく槍を用いるならまだチャンスはありそうですが、剣となると命を賭けねばなりますまい」
「リドルファンの剣技が騎士団レベルであったことが、ワンチャンス狙えると思わせたのか」
幼い頃から弟と厳しい剣の修行に明け暮れた日々を懐かしく思い、西方の地で無駄に命を散らした弟を馬鹿な奴だと心の中で叱る兄であった。




