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第23話 見付けたよ

「ところで4人はどうしてここに?」

「探し物の依頼だ」

「俺達もだ」

「え? 戦闘の依頼じゃないのに、複数のギルドに同じ依頼が行くことがあるんです?」

「あぁ、実際を言えば、依頼人によりけりなんだよ。

 金がある依頼主が早く何か達成させたい時に、こう言うことをやると思えば良い。それにここに戦えない人間だけで来させるのは危険だからな」


 成る程。何を探しているのか知らないけど、便利屋助け隊に依頼が来てないなら関係ないから放置だね。俺は俺の仕事を完遂することだけ考えれば良いし。


 あ、結局トミーさんの話になったせいでカツアゲ犯の話に結論が出てないわ。


「俺としてはトミーさんのこととか探し物の依頼のことはどうでも良くて、カツアゲ犯はグサッとやっても問題ないんですよね?」

「……」


 誰か何か言えよ。

 雄弁は銀、沈黙は金なんておかしなこと言ったらホコリタケの刑に処すからね!

 でも4人がこれだけバッカニアに対して消極的だと、逆に苛めたくなってしまう。良いこと考えたっ!


「あの、この辺りに生えてるキノコって食べたらどうなるんです?」

「少量なら腹を下すか幻覚を見るぐらいだが、量が過ぎると頭がおかしくなるらしいぞ」

「それは好都合! 俺も夜と朝に食べたけど、味が今一つだったんで残したから幻覚も見なかったんだね」

「あの黒いのを食ったぁ? 君みたいな体だと1本食べただけでもトリップすると思う」


 桁が1つ違うことは黙ってよっと。


「それなら2人がトリップしたことにすれば大丈夫!

 ん……? それか、ちょっと待てよ。

 もし探し物を2人が見付けてて、互いに手柄を奪い合ったとしたら?」


 先に見付けた者勝ちなら手柄を奪い合ってその結果2人共にこの世から退場ってこともありえるし。

 これでうまく行かなかったら、トミーさんかラドさんに助けてもらおっと。まぁ、他の人も否定してないし、これで大丈夫だよね?


「お前……顔に見合わずえげつないことを考えるな」

「褒めても何も出ませんよ」

「……」


 あれ? 俺って呆れられた感じ?

 バッカニアの2人は会話が出来ない悪党だったけど、他の4人は話せば分かる人達だったのでひと安心。


「ゴホン……それだとやはり探し物を見付けておく必要があるな」

「ケーンさん、気を遣わなくて大丈夫ですから」

「……そうか」


 俺みたいな善良な小市民が危険思想の持ち主と勘違いしてるのかな?


「で……探し物は何ですか~♪」

「歌う必要は無いと思うが」

「急に空から何かが降りてきたんでつい」


 俺は悪くないっ! 悪いのは俺を菌肉マンにした神様だよ!


「リーク、誰にも言わないと誓えるか?」

「言っちゃマズイヤツ系? 言うと誰かに消されるのなら言いません」

「本当だな?」

「死ぬの、いやですから」

「絶対に言わないね?」

「俺のおクチがバツマークのウサギ並みに堅いです!」


 何のことか知らんし、ウサギは喋らんでしょ?


「今一つ信用がなぁ」

「そうだけど……先に2人を笑いに行かないか?」


 ぐずるケーンさんよりジンさんの方がまだ話が分かるらしい。

 じゃあ、そうするかと同意を得てバッカニアの2人の方へ進み始めた、その瞬間だった。何かがバキッと壊れる音がした。

 ――嫌な予感ほど、当たるものらしい。

 それは音を聞いてから、遅れてやってきた。


「てめぇっ! もう許さねぇ!」


 立ち上がったバーバリアンが、そう怒鳴った。

 今まで上手くやれていたはずなのに、俺の作った拘束具は――いや、俺の慢心ごと――力づくで叩き壊されていた。

 胸の奥で、心臓が嫌な跳ね方をする。


 どこか痛めたのか彼の額の汗を俺の目は見逃さなかったが、完全な殺意が俺に向けて放たれた。

 腰の後ろにでも差していたのか、くるくると回転しながら斧が飛んできたのだ。

 驚きと恐怖が体を支配する。俺に出来たのは目を閉じることだけだった。


 俺の近くで何かが素早く動く音、それが起こした風を肌に感じたと思った瞬間、閉じた目の前で甲高い金属同士がぶつかる大きな音がして、耳の奥にまで強く届いた。


「邪魔をするな!」

と怒鳴るバーバリアンの声で、誰かが俺を助けてくれたと安堵し目を開ける。

 俺の前にはケーンさんの背中しか見えなかったが、そこにあった剣が見えないってことはバーバリアンに向けているのだろう。


 前を見ようと首を動かす。視界の隅に滑空している何かが入った。見たこともない大きな鳥だった。

 声を出すこともなく空から降りて来るその鳥が、真後ろからバーバリアンを襲う。

 聞きたくもない悲鳴が上がったのが合図だったのか、そこから次々と同じ姿の鳥達が群れをなしてバーバリアンに襲いかかった。

 それだけでは獲物が足りなかったらしく、まだ倒れていた狐目の方にも牙を剥いた。


 痛い! やめろっ! くそがっ!


 何度も2人からそんな声と悲痛の叫びが発せられていたが、それもいつの間にか聞こえなくなった。

 お前達が今まで何度も聞いてきたであろうその言葉を、自分が出していたことに気が付いただろうか?


「あの鳥って?」

ハゲ鷲(バルチャー)だな。2人倒れていた奴らを見て餌に決めたんだろう」


 そう言うことか……この平和そうに見える草原に、こんな危険が潜んでいたなんて考えてもなかった。

 トミーさんが抜かしていたのか、知ってて黙っていたのか、それとも偶発的な事故だったのか。

 ブランフラジールが壊されたことは俺の能力の足りなさに過ぎないかも知れないが、いつか事故を起こすことへの暗示かも。

 ここの4人とお長々とお喋りして時間を潰していなかったら、俺は後ろから刺されていた筈だ。


「なるほど……バルちゃん1号、2号、3号、4号、グッジョブ」


 本物の死を目の当たりにして足が震えているけど、出てきたのはそんな言葉だ――


「……お前のそのノリが怖いぞ」


 そうかな? ……そうかもね。

 俺、自分の手では怖くて殺せないけど、何かがやっちゃった分には素直にありがとうと思える。だって俺を殺そうとした人には当然の報いだよ。何かに責任転嫁して、そう割り切らないときっと心がいつか壊れる気がする。


「うん、これでここに居る皆が共犯ですよね?」


 ケーンさんが眉を寄せて言う。


「そう言うことを嬉しそうに言うなよ」


 別に本気で嬉しいとは思っていない。俺が動けなくしたから魔物の脅威による死の訪れを防げない2人。

 やり過ぎたかも知れない。でも本当にそうだとしたら、ここに居る2つのギルドの4人が黙って見ていないで襲われている2人を助ける筈だ。その事が俺に心の免罪符を与えてくれた。


「一つ問題は解決したんですよ、後は探し物を見付けるだけです。

 あっ……ちなみに探し物の持ち主って、とっくにあんな感じで?」


 テレビでは放送出来ない場面を指差すと、

「そうだ、既に亡くなっている」

「遺品回収は割に合わない仕事なんだよ」

と2人のリーダーが肯定する。

 そして彼らが言うには、この草原で亡くなった高貴な身分の人の持ち物を回収に来たのだとか。これ以上は立ち入ると悪い話しかなさそうだから、ここは素直にトンズラするのが利口だろう。


「何も見なかったし、聞かなかったことにして帰りますね。俺はジリスの納品があるんで」


 くるりと踵を返して町を目指そうとした俺のリュックが引っ張られる。帰っちゃダメって?


「お前も共犯だよな……むしろ主犯格だろ」

「そうだね、こうなったら今後のことをしっかり協議しないといけないと思うんだけどね」


 リーダー2人の目に本気だぞって書いてあって怖い。


「俺の方が被害者なんだよ、皆も見てたから知ってるよね?」

「その荷物を背負ったまま戦えると言うことは、君は魔法師だろ?」

「その魔法師って言うのが、どんなことが出来るのか知らないんです。

 俺が使っているのは魔胞子(マジックスポア)って言ってます。魔力を直接使った魔法とは系統が違うので」

「よく分からんが、マジックキノコ推しな訳だな?

 そう言えば、この辺りに生えているキノコを食べたと言っていたが」

「あ、黒くて小さいのと、ツクシみたいなのとボールみたいなキノコをね」

「黒いのが幻覚を見て、ツクシは若いうちなら食用、ボールのは大きくなった物は潰すと粉を出すんだけど、全部食べたのか?」

「そうだよ、俺の体はキノコの毒に耐性があるみたいだから食べても平気」


 俺の話を聞いて4人共が困惑した顔になる。わー、凄い!って褒められるべきでしょ?


「さぁ、ハゲ鷹の食事を邪魔しないように先に奴らのテントを確認するぞ」

とケーンさんが露骨に話題を変える。

 ひょっとしてキノコ談義をしたくないのか? それなら別の話題でと。


「そうそう、キノコを探している時に拾った剣があるんだけど」

「剣っ!?」


 4人が一斉に声をあげたのだった。

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