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第22話 自業自得(+染めるって?)

 先に遭遇したバッカニアの二人と違って、白鷲と海蛇の4人はまともな人だった。無駄にドキドキして損したよ。余分に心拍数が上がった分だけ、俺の寿命が磨り減ったんじゃないかな?


「アントウォーカーの仲間なら、バッカニアの2人でも手を出せないか」

と、おさ……ジョージさん。


 ん? アントウォーカーって?

 まさかと思うけど、

「トミーさんの蟻の散歩の話、実話なの?」


 『ジャイ』って名前の蟻だから大きくなったって、冗談だと思ってたんだけど。

 この4人は話が通じるから問題なさそうだが……蟻の話を続けて欲しいのに、何故か俺のリュックの上に皆の視線が集まっている。おかしな物があったっけ?


「何かある?」

「何かある、じゃなくて疑問しかないだろ」

「そう?」


 俺の後ろ……あっ、このリュックが珍しいんだ。

 確かにお洒落なバックパッカーみたいな感じで、ファンタジー世界のアイテムぽくないもんね。


「なんでジリスが……6匹もそこで寛いでんだ?」

とケーンさん。残り3人も同意して頷いている。

 ……そうだった。シリアス展開に入りかけてたから、すっかり忘れてたよ。


「俺はジリスの捕獲の仕事で来たから、ジリスを連れてて当然でしょ」

「あぁ……そっち……理解したよ、無自覚か」


 そっちって、どっち? 俺、何かおかしなこと言ったかな?


「貴族のペット用のやつだな。

 しかしジリスは捕まえたばかりで、そんなに人に懐くものなのか?

 野生の魔物だと普通は警戒心がもっとあるだろ」


 ケーンさんの言葉に他の3人が頷いている。

 そう言われても、この子達が懐いているのは事実だし。高い所が好きなのと、コヨーテを倒したことになってる俺をボディーガードにしているだけだと思う。


「はしょって説明すると、俺がテントから出ている間に2匹が俺のテントに入って勝手に飯を食って寝てた。

 それでキノコ探してコヨーテに襲われてる間に、他のジリス達もテントに集まってて。

 それでトミーさんから子供かカップルって要望があったから、この6匹になった感じ。言ってる自分も少しおかしいと思うから、疑問に思わないでね」


 種のこととか細かなことは言わない方が良さそうだし、嘘は言ってないと思う。4人がその話を聞いて暫く考える様子を見せる。


「……君が普通じゃないと、よーく分かった」

とジョージさん。

 多分動物好きなんだろう、ジリスを撫でたそうな顔をしてるよ。それとも食べ物認定?

 この子達なら人からの敵意を感じればリュックの中に逃げるか。


「それで、トミーさんのアントウォーカーって何?」

「ああ、答えてなかったな。

 あの人、エルフだからね。種族特性で特種魔法が使えるらしくて、だいぶ前に大きな蟻を散歩させたからアントウォーカーって呼ばれるようになった」


 あの話は実話だったのか……

 ん? と言うことは、今後俺がその蟻の散歩をさせられる可能性が出てきたってことか?

 仕事ならやるけど、紐付けて蟻の散歩……これに意味があるのかな? 呆けた老人の依頼だったか。

 そう言えば、あの人はもっと不穏なことを言ってた気がする……そっちも聞いとくか。


「ドラゴンの散歩はさすがに無いよね?」

「もうだいぶ過去のことだが……あると言えばある。

 大きな個体でなく幼いドラゴンだったが、人に噛みつくわ、火を吐くわで誰も相手に出来んかった。

 それを、あの人はあのドラゴンをしばいて引きずったんだ……あれが散歩と言えるかどうか……は別だが」

「良く分からないけど、本人には聞かないことにしとくよ」


 ケーンさんが言いにくそうに答えてくれた。

 トミーさん、普通じゃないと思ったけど、エルフだったからか……大きな個体じゃなくても皆が引いてるって、ドラゴンってやっぱり強いんじゃ?

 俺には無理だし、聞かなかったことにしよう。


「でも耳は普通だったけど」

「エルフでも耳は変わらんだろ?」

「そうそう、小説に出てくるエルフは長い耳で美形って相場が決まってるけど、本物のエルフは魔法が特種なせいか長生きする以外は人間と変わらないんだ」


 ケーンさんとジンさんが答えてくれる。俺の知ってるエルフと少し違うみたい。


「トミーさんは女装趣味だしなぁ。

 あれで普通に男の格好してれば、女の子達から追い回されるかもしれないか」

「違いないね、強いし美形だから中身を知らない女性にモテない訳が無いだろ」 


 ジョージさんとクリューさんもトミーさんのことを知ってるので、あの人がエルフで有名人なのは理解した。

 で、トミーさんの話はクリアになったからヨシとして、問題は全く会話にならなかった馬鹿の2人のことだ。


「バッカニアのカツアゲ犯はどうしたら良いの?」

「白鷲がここに来ていることは恐らく町に居る奴らに知られている。出来れば穏便に済ませたい」

「そうだね、うちもバッカニアと揉めるのは白鷲以上に得策じゃない」


 ケーンさんとジンさんがリーダーで、様子から察するにここでは白鷲の2人の方が海蛇の二人より上位っぽい感じ。

 年齢的にはそう変わらない気がするけど、外国人の見た目だから判断が難しい。


「皆さんはとても強そうなのに、そんな弱腰で?

 バッカニアのせいでトミーさんとこのメンバーが居なくなったんですよ」

「あー、それなぁ……」

「自業自得だろ」


 あれ? まさかトミーさん側に問題が?

 確かに俺も少しはそう考えたけど。


「ちょっと独特で、ビジネスマンとしては……」

「あれでも良い人なんだよ……言っとくけど」


 そうなんですか……何となく察し。


「無職で非戦闘職希望の俺を雇ってくれるのはトミーさんとこだけって、門番のラドさんに紹介されたんだけど」

「ギルドに行って、無職で戦わないって言ったら相手にされないのは確かだな。

 どこのギルドも戦力になる人材が欲しいからな。雑用系の依頼を商業ギルドが仕切ることになったせいでね」


 フムフム、ラドさんが嘘を言ってないのは理解した。冒険者ギルドは戦闘系の依頼しかやらないんだ。


「白鷲、海蛇もなんです?」

「そりゃそうだ。冒険者ギルドは保有戦力で毎年国から降りる補助金の額が変わるんだからな。どこも強いヤツを欲しがって当たり前だ」


 なるほどね、それなら拘束しているあの2人は黙ってやっちゃった方が、金銭的にもバッカニアの足を引っ張ることになりそうだ。ブラールで身動き出来ない2人なら、放置しとけばコヨーテが餌にしてくれるだろう。

 別に俺が手を汚す必要はないんだよ!

 こう言うのを未必の故意って言うのだろうけど、喧嘩を売る時は命を掛けてもらわなきゃ。それが多分、この世界の暗黙のルール。

 だから俺は自分からは喧嘩を売らないように気を付けようと思う。



「親分、王都の方から染料用の素材の問い合わせが来てます。

 草木染めに使える、新しいものを探したいとか」

「チッ、お貴族様は気楽なもんだな。俺らは食うに精一杯だってのによ。アイツらは食材までも役に立たん染料にするつもりかよ」

「ですが、それに対応が出来れば稼ぎが増えるんだし、『野菜の生育が厳しい土地でも、キノコ栽培が成功すれば、産業として発展することでしょう。その為のサポートが筆必要であれば、十分な資金を提供します』って書いてあるんで、悪い話にならないと思いますが」


 ここで親分と、呼ばれた人物に開封済みの手紙が渡された。ここには親展と言う概念は無いらしい。


「……おっと、忘れていたが、俺のことは親分じゃなくてマネージャーと呼べといつも言ってるだろ」

「へい、親分、承知しました」

「……だーかーらー、それをやめろと言ってんだが。

 それよりキノコでも染料になるのか?

 山に入れば結構生えてるらしいが。椎茸の原木栽培でもすりゃ、染料にするぐらいは採れるか」

「親分、いくら自分が椎茸嫌いだからって、食い物を粗末にしちゃいかんですよ」

「……つうか、この話、うますぎじゃねえか?

 詐偽かも知れん。気を付けろよ」

「へい、親分!」

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