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第17話 草原でキノコ狩り

 太陽が西の山々の向こう側に近くなるにつれ、辺りは次第と暗くなっていく。こんなところも地球……? と全く同じなのに、魔法なんて現象があるのが不思議だよ。

 月も空に一つだけ。その月の模様は俺が見たことあるのと全然違ってる。月の模様は何で出来るのか知らないけど。その模様がウサギの餅つきに見えるような純粋さを俺が持っていたなら、外国で見える月の模様に興味を持って調べていたかも。その模様で現在地が大体分かりそうだし。

 生憎向こうに居た時には月を見上げる気持ちを持ち合わせていなかったんだろうね。


 さてと、トミーさんの教えてくれたジリスが居そうな地点情報だけど、ハッキリ言って役に立たなかった。

 目印が大きな岩とか大きな木? そんなのは人によって基準が違うだろ。

 でもジリスは巣穴の出口に見張りが立っていて、敵を見つけるとキャンキャン鳴いて仲間に報せるお利口さん。つまりその鳴き声が聞こえた方向に居るって訳だ。


 その敵ってのが鷹とか野犬みたいな姿の。肉食系魔物なんだよね……一つ言っても良いかな?

 その肉食系魔物が人間を襲う習性を持っていたら、俺の命が危ない筈だよね? トミーさんがそんなことは一言も言ってないから大丈夫……? あの人のことだから、聞かれたら答えたよって顔色一つ変えずに言いそうで怖いんだけど。

 当たり前のように俺を送り出したけど、俺が今日便利屋に行かなかったら、トミーさんが替わりにここに来てたってことだろうし。

 言っちゃなんだけど、あの人も武芸はポヨヨンで弱そうだから、きっと人を襲わない獣なんだろう。


 取り敢えず今は野営の準備をして、それから後のことを考えよう。完全に暗くなる前に準備を始めるのがサバイバルの基本だっけ?


 まずは近くに人が居ない場所を探す。観光目的で来ている人は居ないと思うが2組の先客がテントを張って居るのが遠くに確認出来る。


 何をしているのかは少し気になるが、冒険者が居ること自体はよくある話だ。わざわざ首を突っ込む理由もない。

 マナー的なものがあるのか知らないけど、とりあえず1キロぐらい距離を開けときゃ大丈夫かな?

 念のためもう少し離れておこうか――よし大体どちらからも2キロぐらい離れたかな。


 キノコアイは遠くも良く見えて便利だけど、計測機能までは付いてないから誤差3割ぐらいはあるかも。まぁ、そんなことはどうでもよくて、もう太陽が沈み掛けてて薄暗くなってるから急がなきゃ。


 荷物を広げてまずはテント立てから。なるべく平坦で石の無い場所を選びたいな。えーと、取説には『地創石(アースジェム)』で土を作って水平な場所を確保しよう、と書いてある。工具差しにある細長いコレか。ジェムって形を変えても効果は変わらないんだな。


「土よ出ろ出ろ、土よ出ろ」


 ドサドサっ! 土嚢から中の土を勢い良く放り出したみたいに出てきたぞ。土って色々な成分が混ざって出来てると思うけど深くは考えまい。

 テントのサイズより広めにして、土の厚みがある程フカフカになるからもう少し土を出しておくか。

 それから真ん中に柱を立てる……ワンポールテントを立てる要領で……自信はないけどやってみよう。テントを立てなきゃ寝場所に困る。


 悪戦苦闘しつつ何とかテントの形になったところで、キャン!キャン!と犬に似た声が聞こえてきた。

 ジリスが敵を発見したのか?

 テントを出て鳴き声のする方向を覗いてみる。キノコアイモードで視力アップ! こりゃ双眼鏡要らずだな。

 早速モグラ塚と二本脚で立っているジリスを発見。俺の方を見て鳴いているみたいだけど、ひょっとしてこのテントを敵認定してるのか?

 テントと言うか、何かが居るって認識なんだろうね。

 モグラ塚と言うかジリス塚は幾つかあって、頭だけ出しているジリスも居るようだ。一夫多妻のコロニーを作る習性があるらしい。


 それで問題はあのジリス達をどうやって捕まえるかだよ。多分走って逃げられたら俺の脚じゃ追い付けないだろうし、巣穴に入られたら手が届かないだろう。きっと地面の中は蟻の巣穴みたいな感じになっていて、出入口は複数あるんだろうね。


 巣穴に水を流し込んで逃げ出す個体を捕まえるか? 大量に溺れてそうでイヤだな。

 それとも穴を強引に広げる地上げ屋方式? ……イメージ悪いな。

 ヒマワリの種をやって餌付け?

 他の人は一体どうやってジリスを生け捕りにしたんだろう。網でバサッと捕らえたか、それとも眠らせる魔法が使える人が居たとか?


 トミーさんの持たせてくれた道具にそれっぽい物はないか……ヒマワリの種、種、種、種、種……これだけヒマワリの種が好きって、どこのメジャーな体操選手だよ?

 くそっ、トミーさんはヒマワリの種作戦一択だったんだ。まさか種を巣穴から一直線にテントまで撒いて檻に誘導するつもり?

 そんな馬鹿な方法で捕まる魔物なんて居ないでしょ? これを試すのは最後の手段に決定。


 さて、ジリスを捕らえる作戦は夜中に考えるとして、取り敢えず夕食の支度に移ろう。

 一番の問題はトミーさんがどんな食糧を用意してあるかじゃなくて、この辺りにキノコが生えているかどうかだ。

 地球にも乾燥地帯に生えるキノコが存在しているらしいし、草原にもキノコは生える。砂漠や火山地域以外の陸上には、よっぽどのことがない限りどこでも何かのキノコが生える可能性はあると前向きに考えよう。

 と言う訳で、レッツ キノコ探索にゴーっ!


 キノコどこどこ ないかいな♪

 ナメタケあたまに ゴッツンコ♪

 キノコどこどこ どこだろな♪

 たのしくさがそう キノコ♪


 ……何故かこんなフレーズが降りてきたけど、なんでナメタケ? まぁ、何でもいいや。


 あっ、真っ黒の小さなキノコを発見っ! しかも結構生えてるな。ちっちゃいなぁ……試しに一本オクチにポイっ。ムシャムシャ……うーん、食えるけど味が無い。

 ひょっとして、俺の体は毒のあるキノコの方が美味しく感じるのかな?


 おや? ツクシみたいな形の白いキノコを発見。傘が開く前の状態なら高級食材扱いされるヤツじゃないかな? 食べたことはないから味は知らん。

 これは迷わず味見だな。ムシャムシャ……傘は柔らかく噛んだら消えてなくなる。軸は意外と歯ごたえがある。これ、マッシュルームより旨いかもな。けど、やっぱり緑光茸の方がピリッとして旨いな。

 他には……ゴルフボールみたいな可愛いキノコを発見。うんうん、見た瞬間にビビっと来たよ! これ絶体旨いヤツって! 勿論実食。うん、甘味、酸味、最後に刺激っ! コレコレ!

 ここ、草地の割にキノコが多いな。あまり味の無い黒色のはたくさん生えてて、あとはどれも少ないなぁ。黒いのも味付けしたら美味しく食べられるかな?

 見つけた物から採っとくか。この場所にはキノコを食べる魔物が居なくてキノコが増えるんだろう。


 採取したキノコはトミーさんが持たせてくれた革袋にポイっとイン。そうしながらキノコを探して歩いてみると、草が生えていない地面には争ったような形跡があったり、人の持ち物だったと思われる物が落ちてたり。ひょっとして、何かの魔物に人が襲われたんじゃ?

 草むらの中にも落ちてる物はあるだろうけど、ドーム球場数個分の広さの草むらをくまなく探すなんて無理。捜査系の能力があったとしても、漠然と草以外の何かって条件で探したら石や魔物の糞ばかりヒットしてどうしようもないだろうね。


 でも便利屋をやるなら探し物が出来る能力ってかなり有用なんじゃないかな? あればちょっと嬉しいな。そう言うのって魔法で何とかなるものか?

 自分が出来ることがまだ良く分かっていないから、色々と試してみるのも良いと思う。ただ、この世界の当たり前を知らないから、あまりにかけ離れたことだと知らずに誰かに披露してドン引きされるかも知れないな。


「おっ、良さげな剣だ」


 何か硬い物を踏んづけたと思ったら、運良く錆の無い剣を草むらから回収出来た。鞘に収められていないと言うことは、何かと戦闘中に紛失したってことか? それとも鞘は朽ち果てて土に還ったのか?


 トミーさんのくれた冊子には、外に落ちていた物はなるべく拾って持ち帰ることと書いてあった。

 その理由は所有者本人、またはその遺族に返還することで心証が良くなるからだ。とは言え、腐る程売られている店売りの剣なんかに所有権を訴えた人が出てきたとしても、それが事実かどうか確認のしようが無い。


 だからこの世界の一流の鍛冶屋は銘やシリアルナンバーを柄頭か剣身の刃の無い部分(リカッソ)に刻印するそうだ。剣の知識も無いのに良さそうと言えたのは、丸い柄頭に付いて入る宝石部分に刻印があったからだ。

 こんな草むらに剣を落とすようじゃ、腕の方は知れてるだろう。それでも持ち帰ればお金に繋がるかも……はて?


 トミーさんが剣を鍛冶屋に持って行くのは良いとして、よその鍛冶屋で打たれた剣を持ち込まれたら鍛冶屋が困るんじゃないかな。それとも何処の鍛冶屋の作か分かるのかな? 

 まぁ、その辺はトミーさんに任せれば問題無いでしょ。俺は俺の出来ることをやるだけだ、それがキノコ狩りだとしても笑ってはいけないのだよ。


「あれ? 町の方にテントが1つ増えてら。後から来たのか、それとも場所を移したのか。まさか俺を追っかけてきたんじゃないよね?」


 キノコアイは優秀だけど、全周囲が見えるわけではない。視野そのものは人間と変わらないから尾行されても分からない。山賊達のお仲間ってことはないと思うけど、用心はしておこう。

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