絶望の闇に堕ちてくルリ
ハクヤがルリの腕の中で静かに息を断った後、ルリは1人、ハクヤを抱えながら。絶望の中にいた。
(これはきっと、悪い夢。目が覚めればハクヤはいつも通り、私に向かって微笑んでくれる。きっとこれは、最悪な状況を想定した、私の夢なんだ)
そんな事を思いながら、ルリは一度ギュっと思いっきり目を閉じ、ゆっくりと瞼を上げていく。
だけどその光景は変わらない。
いつまで経っても、ルリの中では最強で、一番の思い人は目を覚まさなかった。
「ア...アァァァァ」
一度、現実だと理解してしまえば、それは覚めない悪夢、ではないと嫌でも分かってしまう。
こうして、また深くルリは、絶望と言う名の闇に堕ちていった。
(私が弱いから、私がハクヤと肩を並べられるほど強くないから、ハクヤが危険な時に動けなかったから...私が、私が、私が)
それから、ルリが壊れていくのは早かった。
次第にルリは、抱いてはいけない黒い感情が芽生え始めていく。
それと同時に、ルリの周りに黒い靄のような物が立ち込めていく。
圧倒的な力で、未だ本気で戦ってないナフティカも、お互いがお互いをカバーし合い。ボロボロではあるが何とか戦えている、フィンとミリアも、ルリと同じように、義理であっても尊敬する兄が死んだ事に、絶望しているキャロもシャロも、皆がルリの変化に気が付き、ルリの事を観察するようにじっくり見ていた。
「ッ!?ルリさん!それ以上はダメだ!!」
誰よりも早く、ルリの状況に気が付いたフィンは必死に呼びかける。ミリアも夫のかなり焦っている様子と、ルリの状態に気が付いて、必死に呼びかける。
だがその声は、今のルリには届かない。ルリは自分の殻に閉じこもり、その中で、何も出来ない自分を貶し続け。どんどん黒い感情に支配されていった。
そしてその中で、1つの答えを見つける。それは見つけてはいけない、最悪な答え。
(そうだ、ハクヤの居ない世界なら、いっそ壊してしまえばいいんだ)
「アアアアアアアア!!」
黒い靄の中から、咆哮に近い、声が上がる。その瞬間にフィンとミリアは理解した。
間に合わなかったと
その声が止むと同時に、靄も消えていく、当然そこからは、ルリが出てくる。
だが、今のルリは、人間状態に寄せるのを止め、完全な魔人状態。元々ルリに羽など生えてなかったが、今は背中に、ルリの身長と同じぐらい大きな羽が生えている。尻尾はそこまでの変化は無いが、よく観察すれば、確実に伸びている。
誰もがその姿に見入ったいて、動こうとはしなかった。
だが本人は違う、目の焦点は合っておらず、理性なんて物は残っていないが、ナフティカに突っ込み、全力で殴る。
流石にいきなりの事で、ナフティカも対応しきれず、もろに一撃受けてしまったが。対したダメージにはなっていないようだ。
それを証明するかのように、今まで以上にニコニコ、不気味な笑みを浮かべている。
「君のその力、面白いね。ぜひ殺して、奪わせてもらうよ」
ナフティカが言葉を発してるときも、ルリはお構いなく殴りかかる。だが油断してないナフティカにとって、理性も無く、ただまっすぐ突っ込んでくるだけの、ルリの攻撃は、物凄くスローモーションで殴られるのと同じで、避けるのは簡単なものだった。
結果としてルリはかなり強化されたが、替わりに知能が著しく低下し、ナフティカの足元にも及ばなかった。
「ルリ...」
転生の間から、直ぐに戻ろうとしたが、それをドゥエサス様に止められ。ルリとナフティカの戦闘を見せられてる。
余談だが、ドゥエサス様が水晶を取り出したとき、これで何か見るのでは、と思っていたのだが。どこからかスクリーンが登場し、水晶に移る映像がそのスクリーンに反映されて、水晶ではなくスクリーンで映像を見ている。何でも「最高神じゃから、これぐらいは朝飯前じゃ」との事。
「今のルリは、暴走しておる。ただの暴走ではないぞ。スキル〔魔王:暴走、狂気状態〕と言うやつなのじゃ」
確かに、暴走と言われれば納得する。普段トリッキーな攻撃を仕掛けてきたりする、あのルリが、ただ突っ込み殴るだけ、こんな戦い方をするわけが無い。
「ルリは、お主が死んだと思い込み、深い絶望を味わい、あの状態になっておるのじゃ。だが問題はそこではないのじゃ」
いや、俺にとっては、それもかなり重要な問題なんだけど。ルリに悲しい思いをさせてる。そう思うだけで罪悪感が凄い。俺が死んでいるなら、どうしようもない、と諦めも付いていたが、実は生きているからなおさら。
「スキル〔魔王〕は、あの状態では、本来の力の半分も引き出せないのじゃ。だけど、強力なことには変わりないのじゃ。それなのに、ナフティカは苦戦を一切していない。それほどまでにあの者も化け物って事じゃ」
そう言って、スクリーンの映像が切れる。続きが気になるが今はそれど頃でもない。
今すぐルリを助けに行きたい。その気持ちが今の俺の全てだった。
「よいかハクヤ、お主はただ強くなったわけではない、さっきは言いそびれたのじゃが、わしが力を与えた事で、神の使者などではなく。半神となっておる。じゃけど、油断だけはするでないぞ。足元を救われる可能正じゃって、あるのじゃからな」
...え?さらっと言われたけど。俺、半神になったの?それってもはや人間では無いじゃん。
色々、言いたい事はまだあるが俺の体がだんだん透明になっていく。
「時間じゃわしの方でも、まだ話せておらん事もある。じゃから今回のことが終れば、また改めて連絡をするのじゃ」
「分かりました、色々ありがとうございます」
「気にするな、じゃがわしにも1つ頼みがあってのう。それはわしと話すときは、タメ口にして欲しいのじゃ」
ちょっと、照れたように、もじもじしながらドゥエサスがお願い事を、口にしているが、ちっとも可愛くない。むしろおじさんがやると引くレベルだ。
「わかったよ。ただし文句は受け付けないからな」
「あぁ文句など、言うはずがないじゃろ。そして本当に時間切れじゃ、あっちの事は頼むぞい」
「分かった、任せろ」
俺は自分の中で思う、いい笑顔で、親指を立てながらドゥエサスに答える。
そして次の瞬間、意識が消えていった。
「はぁ~~、ドゥエサス、あんたとんでもない化け物を、いや、神を生み出しちまったねぇ~」
ハクヤを見送った後、どこからかババア事、ニュクスが現れた。こいつ本当に神出鬼没じゃのぅ。
わしの空間なのに、わしの空間なのに!!
だが確かに、ババアの言う事はわかる。まさかハクヤが半神になるなんて。
本来、力を与えても。初めは、神の使者。になるはずなのじゃ。そして長い年月を生き。格が上がり半神、ゆくゆくは、神になるのじゃが。シオンは1つの工程をすっ飛ばしてしまったのじゃ。
しかも、見たらかなり完成された、半神じゃったのだ。これには流石のわしも驚いていた。まぁハクヤには、驚いた事がばれないように、必死に隠してたんじゃが。
「ドゥエサス、もしかしたら本当に、あの子がニュクスをやってくれるかもしれないねぇ」
「そうじゃな、ハクヤの今後に期待じゃな」
そう言いながら、わしとババアは、スクリーンに再び映し出された映像を観戦するのじゃった。
ルリ「コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス、コロス」
ナフティカ「うへぇ、おっかないや」




