キャロのしてみたい事
今回も特に変更点はありません。
「お願いハクヤにぃ、森に連れてって!」
朝の鍛錬を終えリビングに戻ると、突然キャロが森に行こうと言い出す。
すでに準備もしているようで、動きやすい服装に回復薬などを持っている。
「森か...別に行ってもいいが急にどうしたんだ?」
「今日はママもパパもいないから森の少し奥に行って魔物が見たいの、でも私とシャロちゃんだけじゃ怖いし、ついてきて欲しの!」
「うーん..まぁいいけど、それよりシャロはどこいるんだ?」
「シャロちゃんは部屋で着替えてるよ」
ここにいない、シャロも行く気満々らしい。
今日は父さんと母さんが近くの街に行ってて夕方まで帰ってこない、それを見計らって行こうとしてる訳で、最近のキャロは魔物見たさに、よく父さんに森に連れてってもらっている。それでも中々遭遇できず、しかも普段森には、父さんと一緒じゃなきゃ入る事を止められている。
森、正式には[古代森林]と呼ばれているが、エンド村に住む住民はみんな森と呼んでいる。
この世界に転生した直後、父さんに拾われたのもこの森だった。
森は相当な広さでこの世界でも有名らしく、奥に行けば行くほど強い魔物と遭遇する。
古代森林にはある噂がある。中心地には誰とも交流を取っていない種族や、1つで生涯遊んで暮らせる程の値が付く、宝があるとか。そして森を抜ければ魔族の住む国に行けるらしい。
魔族とは、この世界の一種族で、元地球から来た俺は初め魔物が進化したものだと思っていたけど、魔族は魔物と違い、まったく違う。魔物に理性はなく、本能のままに行動している。逆に魔族は普通に意思疎通ができて、文化的生活をしている。
森に入っても浅いところでは魔物とは滅多に遭遇しない、少し奥の方に進まなければ魔物に遭遇する危険もある。
おそらく父さんは、キャロに魔物と合わせないように、なるべく浅いところを探索させてると思う。。
だけど魔物が見たいキャルからしてみたら不満なのだろう、だから父さん達がいない日に俺を誘ったんだと思う。
「キャロどうして、魔物を見たいんだ?特に理由がないなら、俺はやめた方がいいと思うけど、魔物は危険だ、いきなり襲ってくるし、油断してれば怪我じゃすまないかもしれない、それでも見たい理由があるのか?」
「.....」
「黙ってても分からないよ、それとも言いづらいことなのか?」
「...魔物と戦いたいの」
「は?」
意外すぎる理由に唖然としてしまった、俺の妹は戦闘狂か?
キャロはまだ6歳で、そんな思想があるなんて...
「勘違いしないでね、別に私戦闘狂ではないよ」
「え、違うの?」
「違うよ!!」
思考を読まれた、しかも否定された!
「じゃあ、どうして魔物と戦いたいんだ?」
「あのね、実戦をしてみたいの、1度だけでいいから」
その言葉を聞いて、少し腑に落ちた、俺や父さんとの模擬戦はあくまでも模擬戦で、しかも俺も父さんもかなり手を抜いてる。実際まだまだ実力差があるから本気で打ち合ったりしない。手を抜いてる気配をキャロは感じ取っているんだろう。それに不満を抱いてるから、もっとスリルある戦いがしたいのかも...戦闘狂よりやばいのでは?
キャロは一般の6歳児と比べるなら、圧倒的に強いと思う、けど
「キャロ確かにキャロは、普通の6歳の子供に比べれば、明らかに異常と言ってもいいレベルで強い、だけど実戦になれば死ぬかもしれないんだぞ、怖くはないのか?」
「危険なのはわかってるわ、でも戦ってみたい、それにシャロちゃんもいるし、何かあればハクヤにぃが助けてくれるでしょ?」
どうやら俺は妹にすごく信頼されてるようだ全く仕方ないな。可愛い妹に言われたらこれ以上は止める気もない。
これで許す俺はすごく甘いのだろう。
「わかった、俺も一緒に行こう。だけど危険になったらすぐに逃げること、それを約束してくれ」
「ありがとうハクヤにぃ!!」
「キャロちゃん私は準備出来たよ〜」
そこにちょうどシャロが降りてきた。
森に入る準備万全と俺達の前でクルンと一回転した。
「シャロお前も分かってるのか?もしかしたら死ぬかもしれないぞ」
「油断する訳じゃないけど、兄さんとキャロちゃんがいれば問題はないと思ってる〜」
どうやら妹たちは完全に俺を信用している。
この2人の期待を裏切らないような頑張るか以外の選択はないな。
「わかった俺も着替えてくるちょっと待ってろ」
「「はーい」」
そう言って自室に戻った。
動きやすい服に着替えて、部屋にある回復薬などを必要な物を選定し、それをアイテムバックにつめて下に降りた。
「ところで2人とも武器はどうするんだ?」
「私はいつも使ってる木の槍を使うよ」
「私はとりあえず木の杖を持ってくよ〜」
キャロはよく訓練で使う槍を、そしてシャロは魔法効果を少し上げる杖を持っている。
だけど少し不安だ、木の杖はまぁまぁいいとして、木の槍では魔物に対して友好的な攻撃手段ではない。
「キャロの持っている槍、少し貸してくれないか?」
「どうして?まぁいいけど」
キャロから借りた槍をしっかりと見て記憶するそして
「〈武器作成〉」
その魔法を発動し魔法の槍を作る。借りた武器の見た目を写した魔力の塊り、鉄製の武器じゃないから重さもなく、木製でもないから刺したり、斬りつけたりと鋭さを持ち合わせる。
この武器は作り手の魔力に依存する。武器を作るための魔力量、形を形成するための魔力操作、あまり使われる魔法ではないけど、俺が使えばそこそこの物が出来上がる。
「兄さんは本当に色々できるね〜」
「別になんでも出来るわけじゃないぞ、キャロこれなら切れ味もあるし、戦うなら、これの方がいいだろう」
「何これ、重さは変わらないのに刃がついてる」
「木の槍も返すぞ」
キャロは魔法の槍を不思議そうに見ながら手に取った。
そして何度か武器を使ってみて感覚を掴んだようだ。
「よし、準備もできたし行くか」
そう言って家を出て森に3人で向かうのだった。
キャロ「これから森に潜入するわ」
シャロ「森に入れば何も起きないはずがなく~」
ハクヤ「何も起きませんように」