ルリ奪還その1
兄さんから、ルリちゃんのいるかもしれない場所を教えてもらい私は急いだ。どうしてルリちゃんを一人にしたのか...
これでもし、最悪の結果になれば、私は一生後悔して生きていくだろう。
スラム街に入るとだんだん人も減り、王都とは違う全く別の場所にいるんじゃないかとも思える。
そう思ってしまうぐらい、スラム街はどことなく不思議な雰囲気が漂っていた。
目的の場所の近くに兄さんより早く着いて、改めて〈索敵〉で周囲の気配を確認した。
「やっぱりルリちゃんの気配はない...」
何度探してもルリちゃんの気配がない。その代わり一つの建物内に複数の気配を感じ取った。
もう少し、詳しく確認しようとしたところで、頭に直接ノイズが響く感覚がした。
『シャロ聞こえるか?』
兄さんが〈テレパシー〉で私の頭の中に直接喋りかけてきた。最近の兄さんはいろいろ規格外で、直接脳内に話しかけてきても、驚いたりしない。
『聞こえてるよ~、私は先いついて付近で待ってる』
『俺ももう着く、すぐに行くからくれぐれも一人で行ったりするなよ』
私に忠告してくれる、兄さんの声はいつもより低く怒ってるのが分かる。
〈テレパシー〉で話し終わった後、すぐに兄さんと合流した。
「シャロ、待たせてすまん」
「大丈夫、それよりさっき〈索敵〉で中を確認したけど、結構人がいるよ~それに建物も見た目以上に広そうだし、どうする兄さん」
私が分かる範囲の情報を教えて、兄さんに指示を仰ぐ。兄さんは少し黙って俯いていたが、すぐに視線を戻した。
「重要なのはルリを助ける事だ、もし邪魔する奴がいたら、俺が対処する。シャロはその援護、やれるか?」
「わかった、やってみる」
「じゃあ、いくぞ!」
「あ、あのにいさ...」
兄さんはすぐルリちゃんの捕まってると思われる家に向かっていった。
その時のチラッと見えた顔は今まで見た事もない怖い顔だった。
「じゃあ、行くぞ!」
俺はシャロに合図を出し、一気に怪しい家の中に入る。俺も〈索敵〉を使っていて入口付近に誰もいないのは分かっていた。。
潜入なら音を殺し、〈気配遮断〉でこちらの存在をばれないように動くが、先に続く入り口は一つ、そこに入った段階で、いくら気配を殺していても姿を視認されてしまう。
だから俺は、慎重さよりも素早さを選び中に入った。
家の中を少し進めば、少し開けた場所に出る。そこには、いかにもがらの悪そうな奴等が、次の部屋の扉を塞ぐように待ち構えていた。
「マジで、入ってきてるじゃねーか、やっぱ入り口に見張りいないとダメだな」
「それにこんな子供なんて、かわいそうに」
「かわいそうも何も、どうせここに来た時点で殺すのは確定なんだから...まぁこのガキ達は運がなかったって事だな」
「いや、男は殺してもいいが、あの小娘は生かして楽しもうぜ」
「グヘへへ、小娘いいな」
複数いる中の代表みたいな奴は、俺とシャロを品定めするように見てきた。
大体人数は20人ぐらい、半数以上は俺よりシャロを見ていた。
シャロは俺の後ろに隠れ少し震えている。
「悪いんですが、そこを通してもらえませんか?」
一応会話だけで、この場所を通らしてもらえないか試してみる。こんなところで争うのは時間の無駄だから。
だが俺の言葉を聴いた途端連中は笑い出した。
「マジか小僧この状況分かってんの?」
「笑止、あなた達はここからでる事も、進む事もできません」
「俺達は悪い大人だからよ、まぁ通りたければ俺達を倒していくんだな」
「小さい子供は最高だぜぇ、あぁあんなに震えてかわいそうに、おじさんが気持ちいいこと教えてあげるからねぇ」
「あの娘はやるけど、きもちわりぃから黙ってろロリコン」
分かってはいたが、お願いするだけでは通してくれない。
一瞬シャロのほうを見る。やはり怯えているが俺の目を見た瞬間、何をやろうとしてるのか理解して、小さくコクコクとうなずいた。
そして俺はダッシュで敵に向かっていった。
「おいおい、走ってきたぞ」
「そんなに死にたいなんて、かわいそうに」
「悪いがお前らのようなクズを相手にしてる暇はない」
「なめられたものだ、ガキ二人で何ができ...な、体が急に」
俺が武器の間合いに入る瞬間、シャロが〈行動制限〉を使い動きを封じる。いきなり動けなくなった事に困惑し始めるクズたち、何人かは〈行動制限〉に気がつき解除しようとしていたが、もう遅い。
俺は瞬時に〈ディメンションバック〉を使い、中にある俺の剣を取り出して、クズたちの脚の筋や腱などを斬っていく。人数が多くても動かない的なら一瞬で無力化する事ができる。
今のうちに部屋を抜けようと扉まで行ったが、扉には鍵がかかっていた。
その扉はこちら側に鍵穴があり、今切った奴の誰かが鍵を持ってると思われる。20人ぐらいいる中から探すのは時間がかかってしまう。
鍵を探す時間を手間に思い、強力な魔法で扉を壊すことにした。
「シャロ魔法で破壊する、少し離れてろ」
「ちょっと待ちな」
「なに!」
魔法を使おうとした時、後ろからさっき喋っていた奴のうちの一人の声が聞こえた。
そいつは斬られる瞬間に〈行動制限〉を解除して、俺の斬る位置をずらしたらしい。
「ガキ共、鍵は俺が持ってる、魔法を使うより早いだろ」
そう言いながら、そいつはポッケから鍵を取り出し、扉を開けた。
「どうしてこんな事をするんだ?」
「ここにいる俺を含めて悪い大人わよぉ、全員非合法の傭兵なんだよ、ここにはその界隈で名が通ってる奴もたくさんいる。俺もその一人でこの中で一応リーダー格なんだがよ、今回の依頼はただの攫いじゃない、普通子供攫いは貴族のボンボンか無差別だが、少し調べてこの国の貴族じゃない事はわかっていた。それに俺達は対象の素性を調べるのを禁止された。それだけでも普通じゃないのに、助けに来た奴らが、お前らみたいなガキで、しかもこの人数を瞬殺、あまりにもおかしいだろ。まぁ攫った奴がどんな奴か興味はないが、ここまで異常なら俺は依頼主よりガキどもに恩を売った方が得だろう。そう思ったら今あけるのを渋ってお前らの時間を遅らせるより。あけるほうがいいと思ってな」
「そうか、あけてもらった事は感謝する。でもいいのか?そんないろんな情報を俺達に喋っても」
「まぁ、大丈夫だろ。ここにいる奴らは俺を含めて、どうせ捕まるだろうしな。それより、死ぬんじゃねーぞガキ共」
俺はそいつの言葉に返事もせず次の部屋に進んだ。そこで俺とシャロを待ち構えていたいたのは...
???「あれが噂の...後で報告しなくちゃな」
ハクヤ「待ってろルリ、今行くぞ」




