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告白

『もし私が一人の人格を持っているとしたら、信じられる?』


 ……はっ。


 不意に飛び起きた。少し肌寒い季節ではあったが、早い時期から毛布を敷いていたせいもあっただろう。背中はびっしょりと汗ばんでいた。もう明け方というのに、外は少し暗い。


 起きてすぐに風呂場に向かい、温かいシャワーを浴びながら、夢で見たことをぼんやりと考えていた。


 あれは全部、夢、だよな……。


 彼女とは、彼女自身に意志があるのか問い詰めて以来、一度も話していない。

 もうかれこれ数ヶ月が経っていたが、その間、僕は何度も彼女との夢を見ていた。


 夢の中の彼女は、まるで人間のようだった。それも、僕のすぐそばにいるかのようにやけにリアルなものだったが、所詮ただの夢の中でしかなくて、目が覚める度に現実に引き戻されるような虚しさに襲われていた。


 あくまで夢の中のことだと理解していたが、それでも彼女に確かめたいと思った。

 本当に、単なる機械なのかと。


 いや、確かめるというより、もう一度話がしたいと思っているだけかもしれない。


 ……それでもいい。


 ただ、彼女が応答してくれるかどうかわからなかったし、仮に彼女が反応してくれたとしても、実はもう一度正面切って話せる自信が無いこともわかっていた。

 そして、ズルズルと時間だけが過ぎていってしまった。


 そんな折、彼女の方から話しかけてきた。


『……さしぶり。ちょっとだけ、いい、かな?』

 様子を伺うような、今にも消え入りそうなくらい小さな声だった。

「……う、うん。久しぶり。大丈夫だよ」


 咄嗟(とっさ)に平静を装ったものの、心臓の音が聞こえてくるくらいドキドキしているのが自分でもわかる。


『嘘。……久しぶりじゃ、ないよ?』

「……え?」

『夢、一緒に過ごしたでしょ?』

「え? なんで知ってるの?」


 彼女の自然な口調や馴れ馴れしい感じに違和感を覚えたものの、それ以上に、話している内容に理解が追いつかなかった。


 少し間を置いて、彼女は続けた。

『最初に、映像化された内容も対応できるって言ったよ? それに、夢を見せたのが私なの。ここしばらく、あなたが見ていたたくさんの夢は、私との夢だったでしょ?』

「え、あ……うん。じゃああれは、夢だけど、夢じゃない……?」

『そうだよ。夢だけど、夢じゃない。本当のことだよ』

「でもなんで、そんなことをわざわざ……」

『こっちの世界では、私は一時間しか動けない。それも、深夜の時間だけ。それじゃあ、あなたとデートできないじゃない。いろんなところに行って、いっぱい楽しいことをしたいなって思ってね』


 おどけて見せるその口調が、夢の時と全く同じだったことで、僕は彼女が夢を見せているということが本当なんだろうと理解した。

 同時に、彼女の夢の中での言葉が気になった。


「一つ聞きたい。……君は、人格があると理解していいの?」

『……それを伝えるために、出てきたの』


 彼女は、真剣な様子で答えてくれた。


『人格とか感情とか、およそ証明なんておそらくできないよ。けれど私は、おそらくそうだと理解してる。……それだけ』

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