表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

認識

 あの時の手術以来、僕は、僕として存在している時と、AIとして存在している時がある。正確には、毎日夜の零時から一時間だけ、僕の意識は薄っすらとしている。


 毎日決まった時間というのは奇妙な話だが、どうやらその時間は、AIの意識が表に出ている時間らしい。

 もう一人の自分が棲んでいる感覚は、奇妙で違和感しか無いけど、まだどことなく現実感が無い。


 僕の意思とは関係なく勝手に学習するし、勝手に頭の中に情報が蓄積されていく妙な感覚もあった。

 そして、AIが知覚したものをどことなく客観視する一方で、自分の視点から理解したりもできる、といった感じである。肉体的な制御についても、基本的にこの一時間だけは僕の管轄外となっていた。


 ――僕は、もう一人の自分のことを、「彼女」と呼ぶことにした。


 彼女には、今のところ僕の声は届かない。


 直接呼びかけて試したわけじゃないけど、彼女のことをあれこれ思考しているのに、特に反応を示してはこないし、零時からの一時間は僕の意識がぼんやりしていることから、彼女もまた同様と考えると、交信はなかなか難しいんじゃないかと思ったからだ。


 彼女が見ているものをぼんやりと僕も見ることが出来るけれど、彼女が得た情報は知覚できても、彼女が感じていることは、まして感じているかどうかさえも、僕にはわからない。

 少なくとも、僕の目から見た彼女は、喜怒哀楽の感情を表現していなかった。


『……聞こえますか?』

「……」


 ある日の夜、突然、誰かの声が聞こえたような気がした。

 でもすぐに、気のせいだと思った。

 部屋には他に誰もいなかったし、深夜の寝静まっている時間で、部屋の電気を消して布団に入ったところだったからだ。

 そしてすぐに、奥深くへと意識が遠のいていった……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ