領主一族
「たまー。はい、どうぞ。」
そう言うと、本日の魚を中に放り投げやがった。だが、甘い。吾輩の空中三回転捻りを見せてやるのだ。
しゅた。決まった。
「おおー。すごいすごーい。(パチパチ)」
一度芸を見せたところ、味を占めやがって。どうせなら鯵を締めて持ってこい。
さて、食うべ食うべ。
「ねえ、あなた。」
誰?気に入らない奴の靴に画鋲入れそうなTHE貴族のお嬢様は。大体のオマエラの令嬢のイメージは少女漫画のライバルお嬢様が起源である。異論は認めなくもない。
ほら、何も容姿を言わなくても金髪お嬢様が思い浮かんだでしょう。ほら、縦ロールでしょ。トーン貼らないでいいから楽なんや。
「名前はなんて言うのかしら。」
「なーーー。」
「アリスだよ。」
アリスだと。雷を使いこなし、王者へと駆け上がって、女性の胸を揉みしだき「あんた、バカ」「逃げちゃダメだ」「痴漢冤罪は逃げろ(弁護士いわく)」あっ、逃げやがった。あっ、捕まった。「やったのか。やったならイエスと言え。」「ヤーヤー、やってないの。」ってなりそうなアリスだと。(いや、お前のイメージおかしい。)
大丈夫、昭和のころはケツ揉むとか挨拶だったんだし、中世ヨーロッパ風ファンタジーなら胸揉むくらい挨拶だって。
「ふーん、アリスちゃん。おいで。」
と吾輩を撫でようと。って吾輩?
「アリスは私だよ。」
「しっ知っていましたわ。冗談ですのよ。」
顔赤い。ちょっとかはゆし。
「で、この子の名前はなんですの。」
「タマだよ。他の人はミケとかポチとか呼んでるの聞いたことあるけど。」
「ダサいわね。」ダサいタマ・・・・吾輩は太宰じゃない。(本名 津島修治)
「ガーン」
こいつ、口で言いよった。そんな奴おらんやろ。
往生しまっせ。こだまでしょうか。いいえ、効果音です。
「ダサい、タマは駄目ね。」
誰が東京の金魚の糞、日本一のひんぬー県だ。東京に遊びに出て、ちゃんと夜寝ないから、成長ホルモンがうまく出ないだと。
ちなみにダサいの対義語はナウいなので、吾輩はナウいタマである。うわっ、ダサっ。と言うかタマではない。
「くどいくどすぎるわ。」
あっ、すみませんでした。ギャグがくどいのは作者の仕様です。あっ、どうぞ進んでください。
「そうね・・・ジョセフィーヌ・・ジョセフィーヌにしましょう。」
「なーーー。」
「えっ、それはちょっと。マダムの可愛がりに耐えきれず逃げ出して、探偵に依頼で捕まって、嫌がってるのを探偵が苦笑いで流してそうな名前だし。」
「なによ。文句があるの。」
「ええー、やっぱりタマはタマっぽい顔してるし。」
「どう見てもジョセフィーヌじゃない。ね、ジョセフィーヌ。」
「ねータマー。」
だから吾輩は
「なーーー。」
「ほら、ジョセフィーヌだって返事してるわ。」
えっ、どんな都合のいい耳してるの。抗議ですけど。本名名乗っての抗議ですけど。
「違うよ。タマに返事したの。」
ブルータスお前もか。
「違うわ。ジョセフィーヌに返事したに決まってるわ。」
さいですか。投げますか。川にですよね。
投げるなら匙か。
せやから、くどいて。
「そもそも、初めて呼んだ名前に反応出来るわけないじゃん。」
「にゃーー。」
「くっ。」
あっ、とりあえず行っていいですかね。もう、食べ終わったんで。
「あっ、タマ。バイバイ。またね。」
「くっ、明日こそ。そうだわ、私も餌を・・・・」
「にゃーーー。」
シーユーレイター。餌はうまいのを頼む。
・・・・
昨日はツッコミが大変だった。ツッコミ不在でボケ倒し。吾輩はギャグ担当なのに。おもしろくないって。ほっとけ。あっ、ホッケ食べたい。
「あっ、タマじゃなかった。ジョセフィーヌ。きましたわよ。」
昨日の・・・お嬢。
「ふっふっふ、驚いたでしょう。私が先に来て。彼女なら今日は遠くに行ったわ。」
馬鹿なアリスが遠くへだと。いや、家でしょ。
「はい、約束通り持ってきたわよ。最高級カルビ肉よ。」
「にゃににゃーー。」
「はい、たんと召し上がれ。」
すばるあしい。
「にゃうにゃーーー。」
うまい美味すぎる。久々に美味い肉を食べた。
幸せだなあ。吾輩は食べ物さえあれば24時間寝てられるのに。
「タ・・ジョセフィーヌ。あのね、ほんとは昨日と今日ね。お父様と買い物に出かける予定だったんだ。それがね。急に仕事が入ったって言って、約束破ったの。お父様なんて嫌いよ。」
「ニャー。」
「領主だから、急な仕事が入ることがあるのはわかるけど、ずっと前から約束してたのよ。」
ははーん。あそこだな。よしついてくるといい。子分よ。
「えっ、もうどっか行っちゃうの。」
「ニャーー。」
いいから着いてこい。
「着いていけばいいの。」
「ニャー。」
よし。
「タマ、こんなところ通るの。」
タマじゃない。ジョセフィー・・・っとと。
「なーーー。」
「待って。」
「お嬢様、このようなところ、ああっもう。」
ほら、待ってるから早く来い。ここは子供なら潜れば通れるな。
「ここ通るの。あっ。」
「お嬢様。くっ、私では通れないわ。お嬢様戻ってくださいまし。」
次はこの上だけど、人間の子供じゃ登れないか。ちょっと遠回りして、向こうの階段か。
「ニャー。」
「はあはあ、ちょっと。待って。」
早く行かないと、遅くなるぞ。
「はあはあ、休憩。休憩させて、喉も乾いたし。」
しょうがないな。うーーーーん、ふんぬ。
「にゃわーー。」
「はあはあ、あれ。疲れが取れた。えっ、どう言うこと。えっ、もしかしてジョセフィーヌが何かした。まさか違うわよね。」
水は出せなくもないけど、もう少しで目的地だからそこでもらってちょんまげ。
「ニャー。」
「あっ、行くのね。もう大丈夫よ。水は欲しいけど、この辺りに井戸はないしね。」