森の悪魔
「おい、聞いたか。最近はこの辺に森の悪魔が現れるらしいぞ。」
「ああ、隣の集落が壊滅したらしい、俺たちもここにいたんじゃ危ういかもな。」
「明日あたり、長老から集落を移す話があるかもしれないな。」
「そうだな、しかしお前のところは子供が産まれたばかりだから、移るにしても大変だな。」
「まあ、しょうがないさ。まだ軽いからな、首にさえ気をつければむしろ楽なくらいだけどな。でも移動した後の生活がな。建物が出来るまで病気なんかにかからないといいんだが。」
「優先的に住めるように、村のみんなも手伝ってくれるって。」
「そうだな、みんないい奴らだからな。よし、今日も見張り頑張ろうか。」
「おう。・・・・ごはっ。」
「はっ、急に・・・おいっ!」
「にっにげろ。森の・・、早く早く行けーー。村に知らせろーー!」
「すっ、すまん。」
「ちっ、なぶり殺しかよ。・・・楽に殺してすらくれねえのかよ。だが、みんなが逃げるまでの時間を稼ぐには好都合、最後の意地だ!傷の一つでもつけてやる!かかってこいや!」
「はあはあ、みんなーー!逃げろ!森の悪魔が森の悪魔が来たぞ!」
「なんだと、みんなすぐに逃げろ。まとまって・・・いや、ちりぢりに逃げろ。集合先は前から決めたところだ!」
「すまん、妻と子供のところに行く。」
「ああ、わかった。俺も逃げるが無事でな。」
「じゃあな。」
「はあはあ、おーい。」
「あなた。どうしたの慌てて。もう、子供が起きるじゃない。」
「すぐに逃げるぞ。森の悪魔が来た。行くぞ。」
「えっ、そんな・・・わかったわ。行きま・・・あっあっあ悪魔」
「何?!くそっ、もう来やがった。お前はすぐに逃げろ。俺が時間をひでぶーー!」
「あっあなたーーー!」
「ぐぼっ、はあはあ。いいから早く行け。こんな奴倒して後から追いかける。だから早くいけー!」
「わっわかったわ。必ず追いついてきてね。」
「ああ。ほら悪魔め!お前の相手はこの俺だ!」
「きゃっ。えっ、やだ。こっちに来た。えっえっえっ。」
「おい、こっちだ。こっちだ。頼む、こっちだ。妻と子供だけは。頼む頼むから。」
「いっいやーーー。」
「オギャーオギャー。」
「そっ、そんな。つっつまが。妻が。」
「オギャー、オギャー。」
「くっくそくそ。俺たちが何したって言うんだ。平和に暮らしてた俺たちが。くっ、くそーーー。」
と言うわけでやってまいりました。害獣狩りです。本日の害獣はジャパニーズファンタジー御用達のーーーーゴブリンでーーーす!イタズラ妖精のはずがいつからこんな存在になったのだろうか。
さっきから「ぐぎゃぐぎゃぐきゃぐきゃ」とうるさいわ。意味わからんのだが。とにかく不快だ。今、メスゴブリンを始末したところだが、あっちのオスゴブリンが何あれ?壊れた?
「オギャーオギャー。」
ふむ、さっきのメスゴブリンの赤ん坊かな?ここで取り逃すと、また繁殖するからね。害獣は一つ残らず退治だ!と言うことで、ぷちっとな。
「ぐぎゃーーー!」
何急に血涙流しながら・・・・ははあーん。これは君の子供だったのかな。ふむ、申し訳ない。一匹残らず退治するので、例外はない。
「ぐぎゃーー。」
そんな粗末な棍棒振り回しても、吾輩のこの柔らかで手触りもいい毛並みには効かないけど。
「ぐきゃ、ぐきゃ。ぐきゃ。ぐきゃ。ぐ・・ぎゃ。ぐ・・・。」
もう、しょうがないな。一緒のところに送ってあげよう。この集落は君で最後だ。アディオス。
必殺!猫ばーーんち。
「ぐっぎゃーーーーー!」
汚ねえ花火だ。
ふう、終わった終わった。これで街の平和が守られるね。
えっ、皆様どうしました?そんな苦虫を噛み潰したような顔して?ゴブリンって経験値やクエストのために虐殺される奴でしょ?何が問題なんです?
ほら、大工の息子のお母さんが未経験のあの人も言っているじゃないですか。信じるものは救われる。信じないものは地獄行きだ。って。
他にもあのパンとワインしか出さない飯屋のオッサンはこうも言っている。隣人を愛しなさい。でも、ユダヤ教を信じない奴は人間じゃないから何してもOK?イェース!
って。あの、中東の人間でハサミや髭剃り用の刃物なんて庶民には程遠い時代で長髪の上に髭面の戒厳なユダヤ教徒のあのおっさんが。なんだか、急に空中浮遊しそうだな。
現にあのオッサンの弟子が作った宗教では、肌の色の違う狩猟生業にしてる言葉の通じない野蛮な民は皆殺しにしたり、奴隷にした歴史があるじゃないか。
ぷんぷん。吾輩何も悪くない。人間のために害獣退治しただけなのに。ぷんぷん。
大体、勝てば官軍負ければ賊軍でしょ?
13州から50州になったことを誇らしげに旗に据えてるあの国は、130年前にもハワイ王国に侵略しといて、自分の国でもないのに軍事基地を置いておいて、当時まだ準州で自国ではないなのに、リメンバーパールハーバーって、忘れてるがな。結局一切の反省もないままだから、今だに戦争振り撒いてるし、それでも許されるくらいだし。強ければ何をしてもいいと歴史が証明しているでしょう?
ふう、とりあえず今日も街の平和のために働いた働いた。早く帰ってご飯ご飯。
本日の吾輩はあくまでも害獣退治屋さん。である。
・・・・
「オギャーオギャー」
「ふう、行ったか。何故見逃されたかわからないが、助かったのか?赤ん坊も無事だったか。よかった、お前だけでも無事で。」
「あなた。」
「お前も無事だったか。よかったーーよかった。」
「死んだかと思ったわ。あなたもこの子も無事でよかった。」
「無事だったが、もうこの集落には居られない。・・行こう。」
「ええ、村のみんなも無事だといいわね。」
「ああ、そうだな。」
「オギャー、オギャー。」




