難民ってなんニャン
吾輩はぬこ様である。
本日も街を彷徨い歩くのだ。
ちょっと城壁の外に来た。狩り暮らしのニャンコちゃん。
うん。こんなところに街続いてたかな。
中世ヨーロッパ設定なので、街の中はうんこまみれでもおかしくないのだが、誰得なので普通描写はゼロなのだが、それにしてもここは汚い。ふむ、スラムかな。
「ユリア早くしろ。置いてくぞ。」
「お兄ちゃん、待って。」
・・・・ふむ、孤児か。珍しいなこの街じゃ。とりあえず、狩りだ狩りだ。
・・・・
大量大量。八戒。なにそれ美味しいの。これ、オーク肉だべ。
さて、どこ行っただろう。匂いは・・・こっちか。
「お兄ちゃん、お腹減ったよ。」
「ああ、ごめんな。食べ物なにも取れなかったよ。」
ドサッ。
「えっ、お肉。誰。えっ、ニャンニャン。」
「ニャー(やる。食え。)」
「くれるってのかよ。お前街で飼われてる猫だろう。」
ぐうーー。
「お兄ちゃん、お腹減ったよ。」
「食べていいんだな。くれるってんだな。」
「ニャー。(食え。)」
「よし、じゃあ食べようか。でも、生肉じゃな。」
ああ、人間は生肉食べれなかったな。
「ニャウ。」
「あっつ。おおっ、すげ。肉が焼けてる。」
「すごい、すごーい。ニャンニャン。」
「じゅる。涎が。食っていいんだな。食っていいんだよな。」
「お兄ちゃん。」
「ああ、食おう。」
ふむ、カエルが鳴くからかえーろ。
「ニャー。(じゃあなーー。)」
「あっ、猫ちゃん。ありがとーう。」
・・・・
ふむ、今日は手下も来ないな。自分で取りに行くか。
よし、今日も大量大量。そんな殺生なーー。と言いたげな顔のオークだ。
あれから一週間くらい経ってるから、どこいるんだろう。
「ニャー。(おーい、来たぞ。食え。)」
うん。おいおい。持ってきたぞ。食い物だぞ。
おい。
「ニャー。」
ゆすっても起きねえ。おい。おい。
・・・・
「猫様痛い痛い。急にきて、どこに連れてくんですか。痛い。取れる取れる。」
知るかヅラとかずれてろ。トンずらは許さん。あとでオーク肉くれてやるから。
「いったー。乱暴に下さないでください。で、急に連れて来てなんなんですか。これでも忙しいんですよ。領主は。」
「ニャー。(そこ。)」
「もう。・・・・難民の孤児ですか。そうですか。」
そう言うと、十字を切って祈る仕草をとった。
ふむ、じゃあ吾輩も
なんまいだー。なんまいだー。
「うーん。頑張って探したけど、やっぱり9枚でした。」
あっ、呼んでないっす。
「用事があったら、また呼んでね。」
「あの、猫様。何見てるんです。怖いんですけど。」
お菊さん。全くすぐ来るんだよ。
「呼んだ。」
「ニャー。(呼んでない。)」
ふう。油断も隙もないな。
「名前呼ばれた気がしたのに。」
「猫様、この子たちは知り合いですか。」
「ニャー(いんや。一回会っただけ。)」
「・・・ふう。少し愚痴なんですけど、聞いて頂けますか。」
「ニャン(言わないでいいよ。)」
「うらめしや〜〜〜」
「ニャウニャウ(あっ、呼んでないっす。お岩さん。)」
「猫様。」
「ニャウ。ニャンニャン。(わかった、聞くよ。聞く聞く。)」
「呼んだ。呼んだよね。」
「ニャン。(あっ、呼んでないっす。)」
「うん、もう。なーー君のい・け・ず。」
「猫様、実はここは難民街なのです。」
あっ、語るんですね。
「海を挟んだ隣国で、下層民が集まる島で一切に虐殺が始まったそうです。理由ははっきりしないのですが、それはもう悲惨で島民のほとんどは殺されて、一部が手製の木造船でなんとか逃げ出したそうです。それすら、海の藻屑に消えた船も多かったようですが。」
「ニャンニャン。(今、そこリゾート地になってたりしない。)」
「誰も止めなかったのでしょうかね。」
「ニャンニャンニャン。(そりゃ、ロシアを見る限り独裁者にはたいていイワン。)」
「うらめしーー「ニャン。(呼んでない。)」」
あと、真面目か。
「これでも大分支援はしたのですよ。難民については、ですが彼らの要求は増える一方で、街の人間と同じ生活が出来るようにしろと、同じ権利を認めろと。正直、難民である彼らに街で与えられる仕事などは限りがあるので、どうしても困窮者が多く、犯罪者や脱税なんかも頻発し、街の人間との確執が深まるばかりで。今やこの辺りの治安も・・・。」
「ニャンニャン(その町、アイドルとかで売ってない。)」
「一部の子供達は、我々が元いた国から奴隷として強制的に連れて来たと、教えられてるそうで、我々を恨むように教育されているそうです。」
「ニャンニャン。(それ元の国に帰って、もっと酷い扱い受けるんだぜ。)」
「どうすればよかったんでしょうね。彼らを街の人間と同じ生活が出来るようにするって言うなら、街の人間の税金を使うわけです。税金を納めた我々ではなく、赤の他人である彼らに我々以上にお金をつぎ込む必要があるわけです。出来るわけがないでしょうに。」
「ニャン。(しらね。)」
「まあ、人間の世界の話ですからね。猫様にわかりやすく言えば、彼らは猫様の縄張りに入って餌場を荒らす存在といったところです。」
猫パーンチ。
「おいーーー。何死体蹴りしてんだよ。ええー。」
「ニャンニャン。(えっ、だって縄張り侵入した敵だろ、あいつら。)」
「いってー。」
「えっ、生きてる生きてる。よかったー。」
「はあはあはあ、・・・・あん。この間の猫・・・また、持って来てくれたのか。はあはあはあ。」
「衰弱が酷いですね。すぐにでも病院に連れて行きましょう。」
「ふうふうふう、ユリア。おい、猫が来てくれたぞ。また、肉が食べれるぞ。おい。」
「猫様・・・・彼女はもう。」
「おい、ユリア。おい起きろ。起きろよ。おい、飯だぞ。おい。おい、起きろ。起きろよ。俺を一人にするなよ。おい、起きろ。」
「まずい、衰弱した状態でこれ以上体力を使ったら。」
「ニャン。(どけ。)」
猫パーンチ。
「ひでぶー。」
「えっえっーーー。ひでぶーって言うか酷すぎるわ。空気読めよ。」
ユリア・・・・
「ニャーーーーーーーン」
「うわ、眩しい。」
お前ほどではない。お前は毛死んでいる。
「ユリア、ユリア、ユリアーーー。」
「うっ、うっ。うーん。」
「ユリア。生きてる、生きてる。ユリア、よかったー。ユリアーーー。」
「お兄ちゃん痛い。」
「おおー、奇跡だ。猫神様」
「ニャン。(食え。)」
「あっ、駄目ですよ。猫様、ここまで衰弱してると、そんな肉なんて、逆に胃や腸の負担になります。」
「なんだよ、おっさん。この猫の知り合いかよ。」
「ええ。そうですね。そして、この街の領主です。まずは病院に行きますので、ついて来て・・・いえ、それより猫様運んであげて頂けませんか。」
「ニャウ(仕方がアルマーニ)」
「えっ、えっー。猫ちゃんが大きくなった。」
「ニャン。(乗れ。)」
「おおー、すげえ。乗せてくれんのか。」
「じゃあ、行きましょうか。」
ヨシ。
「あの猫様、どうして私は首根っこ噛んで持ち上げられてるのですか。」
吾輩がぬこ様だから。
「えっ、速い。痛い。首絞まる、抜ける抜けるーーー。ああーー、落ちた。あれ高かったのに。」
・・・・
無事、病院に到着だぜ。
「ううっ。まただよ。」
はよしろ。
「ああ、それどころじゃなかったですね。ええっと、ユリアちゃんと・・・」
「ケンディだ。」
「ケンディ君だね。ここが病院だからね。しばらく、ここで体を休めてね。ある程度回復したら、どうするかは、また考えるから。」
「助けてくれるのか。この街の領主が。」
「そうだね。猫様がね。そうしたいみたいだから、出来る限りはね。」
「先生すみませーん。」
「はーいよ。おおー、領主様どうしたんだ。」
「この子たちをしばらく入院させて欲しいんです。」
「こりゃ、いかん。おーい、すぐ粥の用意だ。薬草も出してくれ。君らはベッドに。」
「お願いしますね。」
「ああ、任された。」
「猫ちゃーーん、ありがとう。」
「行きましたね。大丈夫ですよ。彼は名医ですからね。」
そうか。
「しかし、珍しいですね。猫様が特定の人間の子を助けるなんて。」
ちょっとね。名前がね。
「猫様、凄かったですね。あの光。治したの猫様でしょ。死んでいたか、瀕死だった彼女を。」
しらね。
「あの、あのですね。猫様、もしかしてですが。治せたりしません。そのう。毛とか」
うーん、どうだろう。やってみるか。
「おっ、おー治してくれます。ではちょっと頼みます。」
「ニャーーーーーーーン。」
「おっおっおーーー。お腹の辺りが温かくなって、こうもやっとしたものが、おおーこれは・・・・」
うーん。
「はっ、生えましたか。あれっ、あれっ、やっぱりない。えっ、いやっこれは、腹毛。えっ、ギャランドウ。えっちょっと、そっちではないんですが。」
「ニャンニャン。(いいじゃん、街のみんな大好きだよ。吾輩達のお腹の毛、よく吸ってるし。)」
「あの、猫様頭の方は・・・えっ首振ってますけど、えっ無理なんですか。」
うーん、元々かなり強い呪いだったみたいだけど、ハゲしい妬み嫉みや蔑みなんかで強力になったみたいで、吾輩にはどうしようもないな。かけた奴見つけて、解かせるかしないと。最悪、変異しすぎてかけた本人すら解けないし、かけた奴が亡くなっても、呪いはそのままって可能性も。
「そんな、猫様ですらどうにも出来ないなんて。」
それにね。作者がね、せっかく頑張って名前も背景も考えたのに、ハゲ属性なくしちゃうの勿体無いから、絶対にやだって。
「クソッタレ!作者め、手前こそ隔世遺伝で早くハゲやがれ。ガッデム!」
猫パーンチ。
「どうして、猫神様・・・」
あん、誰が地獄に堕ちろだと、吾輩が地獄なら手前は楽園に行っとくか。吾輩おすすめのこの世の楽園に。
「そんな、ガクッ。」
全く、不毛なやり取りだったぜ。
本日の吾輩は
センチメンタルニャーニャー
である




