パーサー王子とアヴァリンお義妹様の結婚披露宴
「二郎、また面白い魔法を見つけたわ」
「今度は何だい?」
薫は図書室で本を借りてきては古い魔法の本を仕事の片手間に読んで、こうして今では使われなくなった変わった魔法を学んでは使えるようになり、それを二郎に伝えて来る。
「今度は過去、現在を好きな場所、好きなアングルで眺められる魔法と、頭に思い描いた画像を空間に浮かび上がらせる魔法よ。これをセットで使えばアヴァリンたちの披露宴の演出に使えない?」
「面白そうだな。何とかそれをパソコンに動画で落とし込められたら確かに演出に使えるな」
しかし薫は凄いな。宮廷魔道士の仕事をこなしながら古い魔法を蘇らせて。
「エリアリアーナ君は仕事は順調で、片手間に何かやるのは別段、全く問題ないんだが、何か有用な魔法が使えるようになったら他の宮廷魔法師にも教えてくれやせんかね」
「分りました。有用な魔法が見つかりましたら、これからは宮廷魔道士全体に広げたいと思います」
「ありがとう。そうしてくれたまえ」
話をしていたら、筆頭宮廷魔道士のおっちゃんが話しかけてきた。これで薫の片手間仕事も許可が下りたのかな? まぁ、それはともかく家に帰ったら古くて新しい魔法を習得して、動画に落とし込めるか確認しよう。
その後、披露宴の打ち合わせのときにパーサー王子やアヴァリンお義妹様に、何か美味しいネタがないか、昔のエピソードを聞き取るのであった。
「それなら、司会が語る、新郎新婦の略歴を今、作っているところだから、そちらからも話を聞いたらいいんじゃないか?」
と、王様は言う。なるほど。
「もっと粗い画像かと思ったら、画素が細かいな。これ、4Kとかいうのより綺麗じゃないか?」
「そうね。それにこれ、立体にもできるのよ。でも、画素を細かくしたり、立体にするとバカほど魔力を使うのよ。二郎もやってみて。私より魔力量あるんだから」
「いつの画像がいいかな。あ。出た。すごいなこれ。これで画素を細かくすると… 魔力も持って行かれるし、何だか疲れそうだぞ」
「それで私がビデオカメラで撮影をする… と」
テレシネみたいにもっとスマートな方法はないかな?無理か。と、二郎は思いながら、ビデオカメラで撮影した画像を確認のためテレビで見てみる。
「テレビに映しても綺麗ね。これなら結婚式用の画像にも使えるわ」
こうして、結婚披露宴で使えるネタを増やしながら、着々と結婚披露宴の準備は進むのであった。
*
そして、結婚披露宴の会場設営。
場所は二郎とミネルバ、カッテリーナが使った王城の大広間。そこへ会場全体の照明の設備やら、新郎、新婦入場のときのスポットライトやレーザー光線発生器の設置、スピーカーの設置、プロジェクターの設置、いろいろコントロールするノートパソコン。
設置をして、うまく式が進行できるかリハーサル。
こうして準備を整えて、いざ披露宴本番。麻宗家は、ミネルバ、カッテリーナ、そして薫のつながりで、親族用に席が設けられた。二人は座ってる暇なんて無いんだけど。
心が穏やかになりそうなクラシックが程良い音量で流れる中、ご来賓の方々が、徐々に集まり始めた。麻宗家の人間も、主催者側の人間として、お出迎えをする。
「麻宗公爵家の披露宴は凄かったね。今日も期待しているよ」
複数のご来賓のお客様からそんな声をかけられた。うぅー。プレッシャーがー。
そして席が埋まり、
「それでは準備が整ったようです。会場、暗くなります。足下にご注意を」
会場が暗くなり、緊張感が増す。
「それではお待たせ致しました。新郎新婦のご入場です」
メンデルスゾーンの「結婚行進曲」をBGMに、パトリシア王妃に手を引かれたパーサー王子と、リチャードお義父様に手を引かれたアヴァリンお義妹様が入ってきた。
会場の照明良し、ドライアイス良し、スポットライト良し、レーザー光線良し。順調だ!と二郎は思いながら、薫の手を握った。
無事に二人の入場が終わり、披露宴の開催が宣言される。
次に、新郎新婦の略歴が話される。その話に沿って、プロジェクターで動画が流れる。カメラもテレビも無いこの世界、過去映像を流すと、「おぉー!」と小さな歓声が起こった。
略歴紹介が終わり、乾杯も終わり、二郎はとあるブースで精神集中。会場では新郎新婦の過去映像を流しながら、お食事タイムへ。軽く興奮状態になっている会場からは、
「あの、ジャスティンと王子との練習試合の様子はどうした!あれが一番の見せ場だろう?」
「アヴァリン様の学術賞で表彰された場面が見たいです!」
「アヴァリン様がエリアリアーナ様を異世界に飛ばす場面が見たい!」
二郎はいつ頃の話か新郎新婦に聞き取りに行き、ブースへこもってリアルタイムに映像をこしらえて会場に流す。リクエストがあるかも?とは思って準備していたが、本当にあるとは。
ひとしきりリクエストに応えて二郎が冷や汗をかきながら作業をしている間に食事タイム終了。新郎新婦はお色直しへ。来賓客は席を立ち、スタッフは椅子や机を片付けに回る。会場が一気に片付いた。
壁際には別のテーブルが用意され、ワインなどの飲み物が並べられる。
そうこうしている間に、お色直しも終わったようだ。新郎新婦が再入場してくる。
会場の照明良し、ドライアイス良し、スポットライト良し、レーザー光線良し。二郎はホッとした。
新郎新婦は着席し、ダンスタイムのスタートだ。前準備として、この国でのダンスミュージックも録音している。薫は軽快なダンスミュージックをかけた。
この国のお馴染みの音楽だったようで、スムーズにダンスが始まった。
ひとしきり踊り、飲み物も軽くつまめるものもいくらか捌け、そろそろお開きのムードが流れる。男爵から徐々に帰りの準備が始まり、会場を抜けていく。
二郎も薫も会場を見守り、そして、
「今回の式も素晴らしかったよ。ありがとうな」
リチャードお義父様からお褒めの言葉をいただき、会場を抜けていく。
「いやぁ、実に見事な式であった。二郎君。エリアリアーナ君、お疲れ様。明日の立太子式もよろしくね」
アバン王からお褒めの言葉をいただき、子供たちと、ミネルバ、カッテリーナと合流し、一息ついていると、
「二郎様、薫様はお食事はまだでしょ?お取り置きしていますのでお召し上がりになってからお帰り下さい」
そう言われ、披露宴のときに振る舞われた食事をいただいた。うん。美味しかった。
遅くなってから会場を後にし、家でくつろぐ。
「さて、明日もあることだし、寝るか」
その日は疲れていたのか、スーッと眠りに誘われるのであった。
お読み下さりありがとうございます。
予定外の1話。
書いてみると、案外アイデアが出てくるものですねぇ。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。




