そんなに私が怖いんかい! (by 薫)
「二郎君、エリアリアーナ、ちょっといいかい?」
そろそろ仕事も終わりかけた頃、珍しく、薫の父、リチャードが声をかけてきた。
「おぉ。公爵様だ」と、ちょっと部屋がざわつく。
「はい。何でしょう」
「実は、ちょっと会わせたい人がいてね。今度の休み、家族で家に来てくれないか?」
「そんなことでしたら喜んでお邪魔します」
その後、リチャードお義父さんと薫でごにょごにょと話をしていた。まぁ、親子での内緒話もたまにはあるだろう。
そうして休みの日。
家族を全員乗せて、バーンクリット邸へゴー!
そして通された応接室。部屋にはリチャードお義父様、ブレンナお義母様、チャールズお義兄様、アヴァリンお義妹様が揃っていた。
「実は、黙っていたんだが、チャールズはもう結婚していてな、今日紹介しようと思ったんだ。これチャールズ、アイノスティンを連れて来なさい」
そして待つことしばし、お義兄様の奥様がやって来た。
「そ、その、初めまして。アイノスティンと申します」
アイノスティン様、ちょっと震えてる?
二郎も、家族を紹介する。
「それで、何故今頃紹介を?」
「それが、エリアリアーナが怖かったんだそうだ」
「はぁ?」
薫が怖かったから親族なのに顔も見せないなんてどういうこと?
「エリアリアーナには、その、二つ名がいろいろとあるだろう?やれ秀才だとか神童だとか、それに付随して伝説なんて言われているが、小さい頃の逸話が尾ひれ背びれ付きで大きくなった話が結構広がっているんだ。アイノスティンにはアヴァリンのように接してくれれば別に大丈夫だとは伝えたんだがそれでも怖がってな。で、今頃の紹介となったんだ」
「そんな噂が広がってるなんて、怖いわぁ」
当の本人の薫は、「怖いわぁ」何て言っているが、薫伝説、何とも怖いことになってるよなぁ。
「こ、こんなに遅れてのご挨拶となり、誠に申し訳ありません」
アイノスティン様は、やっぱり震えていた。
アイノスティン様に薫が近づくと、アイノスティン様は後ずさりする。
「ふむ。まだ握手は無理か」
「披露宴には出ていただきたかったです」
「出してやったぞ」
「へ?」
「アバン王は事情を知っていてな、うまいこと手を回してくれて、君らに気付かれないように出席した」
隠れ方も徹底してるなぁ。
「それじゃぁ、エリアリアーナ、例のことを頼む」
「はい。お父様。ミネルバ様もカッテリーナ様も経験者。ついて来て下さい」
「「はい」」
薫を先頭に、ミネルバ、カッテリーナ、アイノスティン様、アヴァリン様の女性陣がゾロゾロと部屋を出て行く。
二郎も、大先輩の公爵様がいらっしゃるので、ありがたい訓示や実務例など、アドバイスを聞いていた。
待つことしばし。女性陣が戻って来た。
「アイノスティン様、アヴァリン、ご懐妊です」
「おぉ、それは真か!それはめでたい!」
「アイノスティン様はいいとして、アヴァリンのお相手って誰ですか?」
「アヴァリンはパーサー王子と婚約していてな。これで大手を振って結婚式やら披露宴の準備ができるわい」
「おぉ。お相手はパーサー王子ですか。それではアヴァリン様は次期王妃様ですか?」
「まぁ、そうなるな」
何でも、パーサー王子とアヴァリンお義妹様の結婚式は、魔王騒動の影響で、先延ばしになっていたらしい。二郎とミネルバ、カッテリーナの結婚式もあったことだし、そろそろいいのでは?という話しになっていたのだが、今日の妊娠判明はそれを後押ししてくれるだろう。
「チャールズ、アイノスティン、アヴァリン。すぐに登城して王に妊娠を知らせて参れ」
「「「はい」」」
そして、その後はリチャードお義父様、ブレンナお義母様と、花菜香、風雅の触れ合いタイムとなった。
二郎たちが帰った後、チャールズ、アイノスティン、アヴァリンは、産科に強い医師を連れて帰って来たらしい。
妊娠発覚に押され、パーサー王子とアヴァリンお義妹様の結婚式は速やかに執り行われた。今は、アヴァリンお義妹様はバーンクリット公爵家から王城への引っ越し作業で忙しいらしい。
*
後日、
「二郎お義兄様、エリアリアーナお姉様、ちょっといいですか?」
今度はアヴァリンご義妹様が宮廷魔道士部屋にやって来た。
「はい。何でしょう?」
「王が、パーサー王子と私の結婚披露宴は、是非お義兄様とお姉様の演出付きでやってほしいということで、打ち合わせに一緒に参加して欲しいと言い出しまして、その確認を」
「薫、どうする?」
「かわいい妹の結婚式、お姉ちゃんは一肌脱ぐわよ!」
「まぁ、ありがとうございます!」
かくして二郎と薫は王子様の結婚式の演出という大役を引き受けたのだった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。




