0話 部活な世界1 9/20
あかりとこゆきは、部屋を出て廊下を歩いていると、反対側からつくよが歩いてきた。
「あ!! つくよだ!!」
「やっと戻れました……。あかり、こゆきそっちは順調?」
「まあねー」
3人で廊下を歩き始める。しばらくすると美術室が見えた。
「ここにも課題がありますね」
「じゃあはいろー」
「よっしゃ!! がんばるぞおお!!」
『10分でクロッキーを完成させる』
「判断基準がないから不合格はなさそうですね」
空中に文字が現れる。
《クロッキー素材を洗濯してください》
「文字がまちがってるー」
「なんでもいいの!? クロッキーって普通人物だよね!! じゃあここにいないせいな!!」
あかりがそう言うと、美術部の真ん中に立体映像が出現する。出てきたのは黒い人影の顔面にせいなの顔が貼り付けられた映像だった。描きやすいようにするためかジャージを身にまとい、ポーズは両手を真横に伸ばして直立したものだった。
「さっき見ました」
「ざつー」
「描くの難しいかも!」
3人はせいなの顔が貼られた影を3方から囲み、クロッキーを書き始めた。つくよが影の正面、あかりが右斜め後ろ、こゆきが左斜め後ろからそれぞれ真剣な表情で描いていた。
10分後……
条件達成の文字が空中に浮かび上がる。10個目の課題をクリア。
3人は何も言わずに集まる。
「せいので見せましょう」
「おっけー」
「せいの!!」
あかりが掛け声を発し、3人はクロッキーを見せ合う。
あかりの絵は線がダイナミックに動き、迫力のある絵になっている。
つくよの絵は丁寧で、誰が見ても上手と褒められる絵になっている。
こゆきの絵は輪郭がぼんやりしていながらも上手な絵になっている。
ただし、せいなの顔が描かれた絵はつくよの絵のみのようだった。
「正面からずるい!! せいな描けるのつくよだけじゃん!!」
「よく見てあかり。こゆきの絵には、影さんに貼られている紙の裏に透けてるせいなの顔も描かれてます」
「ほんとだ!! その手があったか!! 気づかなかった!!」
3人は美術室を出発。歩いているだけなのにつくよだけがはぐれてしまった。
「あれ!? つくよは!?」
「あれーまた迷っちゃったのかなー」