10話 古筝な世界1 6/6
「こっちはいけるよー」
「準備できています」
こゆきとつくよが、あかりたちの場所から少し離れた1の弦から大きく叫ぶ。
「こっちも大丈夫だよ!!」
「うん、大丈夫そう……」
あかりがわくわくと叫び、せいながこくこくとうなずいた。
「弦届くよねー」
こゆきが頭の上の金属線に腕をかける。
「届くよ!!」
あかりも、こゆきたちの場所の弦より少し細い5の弦を手でつついて見せる。
「じゃあいくよ!!」
あかりが木のグラウンド全域に響き渡るような大声で叫んだ。手をメガホン代わりにしている。
「おっけー」
「わかりました」
「わかった……」
他の三人が一様にうなずいたのを見て、あかりがにっこり笑ってさっきよりも大きな声で叫ぶ。
「いぃっせーのおーでっ!!」
ぼーおおぉん……
琴の柔らかい音がうまく二つ重なって響き、振動で木の板が揺れる。
「おわあっ!?」
「……わっ」
弦をはじいた衝撃であかりがぐらりと揺れ、それにつられて下で背負っていたせいなもふらつく。
「せいな大丈夫!?」
「大丈夫ですか?」
「だいじょうぶー?」
せいなの頭の上から大きく聞こえるあかりの声と、こゆきとつくよの心配そうな声が木板と金属線のグラウンドをエコーする。
それにこたえようとしたせいなのきゃしゃな体が、ゆらりと右に雪崩れた。
「うぎゃあああっ!?」
あかりの声がこたつ部屋に響いた。
ぽんっと、あかりとせいなの体がふとんにやさしく倒れ込む。
「あれ……帰ってきた……?」
ふとんから体を起こしたせいなが、きょろきょろあたりを見回してつぶやいた。
そんなせいなの隣のふとんでは、うーんとうなりながら投げ出されたような姿勢だったあかりがゆっくり身を起こしていた。
「あれ……帰ってる!!」
目を開き、あたりを見回すなり、あかりがそう叫んだ。
「本当ですね、戻っています……」
ぱちぱちとまばたきをしながらつくよがつぶやく。
「琴の音綺麗だったー」
つくよの隣でこゆきがのんきに言った。
「ほんときれいだった!! 優しい音だったね!!」
「昔話の中に入ったかのようでした」
「木の色も綺麗だった……」
そんな話をしながらこたつの中に入る4人。
「やっぱ小さくなって真下で聞いたら音大きいよねー」
「今回も楽しかったですね」
「チョコチップクッキー残ってたよね!! 食べよ!!」
「ぽん揚げもあるよ……」
4人のいる部屋のタイマーが、ピッピッと秒ごとで進んでいる。
4人はまた、いつもと変わらない日々を送る。
日常にはさまっている世界というアクションを心いくまで楽しむ。
次の世界はなんだろう、という期待を胸に抱えながら。




