0話 部活な世界1 6/20
体育館に飛ばされたせいなは、先ほどこゆきとゲームをしていた場所であるバスケットボールスペースに新たなゲーム条件が張り出されていることに気がついた。
《3回連続でフリースローを決める。ただし上から》
「……??」
ゲーム条件を見るも、理解ができないせいな。「上からってどういう意味? 普通上からゴールするよね……」とでも言わんばかりに、頭の上にはてなマークを浮かべる。
その時だった。
せいながたまたま立っていたフリースローサークルの床が突如、上昇し始めた。
「えぇ!?」
すでに50センチほど上がり、なすすべもなくせいなは上へ上へと上がり続けた。
そして、バスケットゴールの2倍ほどの高さへ上り詰めた時、床は停止した。6〜7mくらいの高さから見下ろす体育館は非常に高く、せいなの頭をくらくらさせた。
「……こ……わい……」
サークルの淵から棒が出てきて、頑丈な柵が出来上がる。身をすくませるせいなだったが、柵のおかげで少しだけ落ち着くことができた。
「上からってそういうこと……」
銭湯の煙突の上にいるかのような状況。見下ろすバスケットゴールにボールを入れるゲームとなる。
せいなの足元にボールが現れる。普通のバスケットボールだった。
「……よし」
せいなはボールを手に取り、胸の前へ構える。そして狙いを定めると、せいなはバスケットゴールに向け、ボールを投げた。
だがボールはゴールに届かず、そのまま落ちていき、床で大きく跳ね上がった。
「あれ……すこし上目を狙ったんだけどな……」
投げ上げるのと、投げ降ろすのでは感覚が全然違うことに気がつくせいな。
すこしだけ考える様子を見せるせいな。考えがまとまったのか、ボールを呼び出す。
「次のボール、お願いします」
ボールが、せいなの手へ収まった。
再び、ボールを構えるが、先ほどのように胸の前ではなく、頭上に構える形をとる。ゴールが上にある時のように投げ、綺麗な放物線を描きボールは落ちていった。
惜しくも、ボールはゴールの前にバックボードに当たり、反射し、ゴールには至らなかった。
「……でもまあ何度かやれば大丈夫……かな」
せいなは再びボールを出現させ、ボールを構えた。
5分後
「……だめだ」
まぐれでゴールしようとも、2連続、ましてや3連続となると話は別だった。ゴールに入る確率は6〜7回に1度くらいにせいなは感じた。
「…………」
せいなは一度ボールを置いて考えた。
シュートがまぐれになるのはボールの軌道が安定してないから。ボールを常に同じように発射できていないからだ。
発射がぶれるのはなんで?
……
……
……
上に投げてるからかな……?
あかりと違って力のない私が重力に逆らって重いものを投げてるからブレちゃう……のかな……。
じゃあ、上でも下でもなくまっすぐ前に向けて投げてみようかな……。
せいなはそう考えると、ボールを構え直した。
「まっすぐ……力を入れずに……」
そしてせいなはボールをすっと投げ込んだ。
5分後
安定した軌道でボールを投げることに慣れ始めたせいな。ゴールする確率は2〜4回に1度にまで上がっていた。さらにスポッとゴールの真ん中に収まるシュートばかりだった。
そして今、2回連続でシュートを成功させた時だった。
「あと……一回……できるかな……」
自然と手が震えるせいな。自信のなさは、表情や姿勢に現れていた。
せいなはボールをすっと投げるが……
「あっ……」
いつもより力が入ってしまう。投げた本人も感覚でわかってしまう。
ドン
ガン
スポッ
せいなはいつのまにか閉じてしまった目を恐る恐る開けた。ゴールカウントは「3」の表記。最後のシュートはちゃんと決められたようだ。
頼んでもいないのにせいなの前にリプレイが映し出される。
少しだけ勢いのついたボールは、バックボードに当たり、ゴールに入っていた。
「よかった……」
せいなはその場にへたり込んだ。
空中に現れた画面に条件達成の文字が表示される。7個目の課題をクリア。
「早く降ろして……」