0話 部活な世界1 19/20
せいなの平泳ぎが始まった。
せいなの動きは洗練されているわけでも、力強くもなかった。しかし、ひとかきひとかき、ひとけりひとけりしっかりと前に進んで行った。
息継ぎの間に3人の応援する声が聞こえた。進むごとに少しづつ小さくなっていく。
そしてせいなは反対側の壁にタッチ。すかさず足を壁につけ、蹴り込んだ。
「はあ……はあ……」
ターンした瞬間に鮮明に聞こえるようになった声援。3人の声が自分の苦しそうな声をかき消してくれた。
ラスト15mになったあたりで、せいなはラストスパートのため、全身に力を入れた。3人の声がもっともっと大きくなる。
やがて……
「行ってきます」
せいなが壁にタッチした瞬間、つくよが飛び込んだ。
「はあ……はあ……」
苦しそうな息をするせいな。
「せいなだいじょうぶー?」
「せいな!! ナイスファイト!! あがれる?」
「はぁ……はぁ……うん……」
あかりとこゆきに引っ張ってもらい、せいなはプールから上がった。
つくよのバタフライが始まった。
つくよは両腕を広げ、外から内に大きく回す。器用に体を使い、リズムよく前に進む姿は、つくよのオールマイティさをよく表している。
「はぁ……。はぁ……」
息継ぎの度、大きく息を吸う。息継ぎのタイミングが短く難しいバタフライは、苦しくなりやすい泳ぎ方であるが、つくよはうまく呼吸ができているようだった。
自身の腕と水面が当たる音と、水中で吐く息の音で、つくよの耳には3人の声は聞こえなかった。
早くも反対側の壁に近づくつくよ。
体をピンと伸ばし、両手で壁をタッチする。そのまま両足を壁につけ、一度クロールをするように左手を壁とは反対に伸ばしながら、両足と右手の3点で壁を強く押す。
勢いのついたままドルフィンキックを2度し、また両手を大きく回すつくよ。
つくよの目に3人の応援する姿が映った。
「はあ……はあ……」
だんだんと息が苦しくなるのを感じる。だがぐっと口を噛み締め、耐えるつくよ。
苦しさに耐えながら、あと15m……10m……5mとスタート地点に近づき……
つくよは壁にタッチした。
その瞬間、あかりが力強く台を蹴り、水面へ飛び込む。
「ぜえ……ぜえ……」
「つくよーだいじょうぶー?」
「平気……?」
「はあ……ええ……ちょっと頑張っちゃっただけ……です」
つくよはせいなとこゆきに引っ張られ、プールから上がった。
真っ直ぐに伸ばしたあかりの体は水中へ綺麗に侵入した。
水面に背中が出た瞬間にあかりは手足を動かし、クロールを始めた。




