17話 漁港な世界1 6/11
波打ち際まで行って、海風と波の音を近くで感じたい。
その一心で走り出したあかりだったが、防波堤の上の釣り人たちの中に、見慣れた背中があることに気付く。
「って、あれ!?」
こたつ部屋で何度も見ている、動物パジャマを着た女の子の横まで、あかりは駆け寄った。
「こゆき!?」
「あ、あかりー。やっほー」
海を見つめながら釣り竿を海に垂らしていたこゆきが、あかりの方を向く。
「見てよ、これー」
釣り竿を置いたこゆきが、足元に置かれているクーラーボックスの蓋を開けた。中を覗き込んでみると、ボックスの中は様々な種類の魚でいっぱいになっていた。
「えっ。これ、こゆきが全部釣ったの!? すごいじゃん!」
「ふふふどうやら、ゆきには釣りの才能があったみたいー」
得意そうな表情で釣り竿を片付け始めたこゆきは、あかりに言う。
「それに、ここにいれば、誰かが見つけてくれるって思ってたんだー。陽も暮れるし、今日はそろそろ休もうよ、あかり」
「うーんまあ、それもそうだね!」
少し悩んだが、あかりは頷いた。
「うちもずっと動き回って、そろそろ体力の限界だし……それに、うちとこゆきは今日の内に合流できたしね!」
「じゃあ、宿に行こう。実はゆき、今日泊まろうと思ってる旅館、もう決めてるんだー」
「へえ! どこにあるの?」
「海沿いの道路を少し進んだ先にある、古くて小さい旅館だよー」
道具を全て収納したこゆきは、クーラーボックスと釣り竿セットのバッグを肩に担いだ。
「そこの旅館、お客さんが釣ってきた魚を調理して、料理として出してくれるんだってー」
「何それ!? おいしそう!!」
「さっきまで近くで釣りをしてたおじさんに、教えてもらったんだー」
「さっそく行ってみよう! こっちは私が持つよ!」
あかりは目を輝かせながら、こゆきの肩からクーラーボックスを受け取るのだった。
「……判りました。ご対応いただき、ありがとうございました」
ロビーの公衆電話の受話器を置いたつくよは緩く首を振り、隣のせいなに言う。
「せいな、次の番号をお願いできますか」
「うん。読み上げるね」
駅の近くのチェーンホテルに宿を取ったつくよとせいなは、夕食を済ませた後、ロビーの公衆電話を使って問い合わせを続けていた。




