17話 漁港な世界1 5/11
「いくらなんでも、こんなに時間が掛かるというのは」
つくよは首を傾げる。ここまで歩いてくる途中、住宅街や商業施設の前も通り過ぎてきたが、駅を見つけることができないまま、この山道へと入ってしまった。
「……そういえば、最後に線路を見かけたのは、いつだったでしょう……」
不安が生まれたが、こうして足を止めて考えていても仕方がない。
「まあ、この先に立派な駅舎が建っているかもしれませんし」
坂の上から走ってきた路線バスとすれ違い、気を取り直したつくよは再び歩き出す。
その、数分後。
「……つくよ!」
聞き慣れた声が背後から飛んできたので、つくよは反射的に振り返る。
パーカーを羽織ったせいなが、こちらに向かって駆けてきていた。
「……せいな? いつの間に?」
つくよの目の前までやってきたせいなは、ぽつぽつと話し始める。
「バスに乗ってたら……窓から、つくよが歩いてるのが見えたから。少し先の停留所で降りて、追いかけてきたんだ……」
そういえば、少し前に、小さなバス停を通り過ぎた気がする。
「そうでしたか。とりあえず、日が暮れる前に二人だけでも合流出来て良かったです」
そう言ったつくよに、せいなが遠慮がちに訊ねてくる。
「……つくよ。もしかして、道に迷ってる?」
「え……ええ、まあ。町の中心にある、駅を目指しているのですが」
「自分も、駅に行くつもりだったから……一緒に行こうよ、つくよ」
控えめな笑顔を浮かべるせいなに、手を引かれる。
少し坂を下った先にあるバスの停留所で、つくよとせいなは、駅方面行きのバスを待つことにするのだった。
商店街での捜索を終えて港に辿り着いた頃、既に空は夕焼けの色に染まっていた。
「意外とうまくいかないもんだなぁ」
倉庫が建ち並ぶ区画を歩きながら、あかりは小さく溜息を吐いた。営業していた店の全てを回り、一軒ずつ聞き込みを行ったため、ずいぶん時間を使ってしまった。
聞き込みをしている最中、和服を着た若い女の子を商店街で見かけたという情報を得られた。しかし、付近を探し回ってみても、それらしい通行人を発見することまでは出来なかった。きっとその女性は、商店街の外に移動してしまった後だったのだろう。
「ま、頑張って探してれば、そのうちまた会えるよね!」
倉庫の密集した区画を抜けると、小さく揺れる漁船の群れと、夕陽を受けてオレンジ色に輝く海が目の前に広がった。
「え! すっごーい!!」
声を上げたあかりは、それまで歩き続けた疲れも忘れ、海に向かって突き出している防波堤へと駆け出した。
波打ち際まで行って、海風と波の音を近くで感じたい。
その一心で走り出したあかりだったが、防波堤の上の釣り人たちの中に、見慣れた背中があることに気付く。
「って、あれ!?」




