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17話 漁港な世界1 4/11


「うーん。これはなかなか、気持ちいいロケーションの世界だねー」



 大きく伸びをした後、こゆきはぐるりと周りを見渡してみた。



 今回は、小さな漁港が存在する世界に送り込まれたらしい。こゆきが立つ防波堤の内側に広がる内湾では、何隻もの小型漁船が小さな波の上で揺れていた。漁協組合の名前が入った細長い倉庫がいくつかあり、フォークリフトを操って貨物を運んでいる男性の姿も見える。


 防波堤のそこかしこに、竿を構えて釣りをしている人々の姿もあった。この世界では、今日は休日なのかもしれない。親子連れや、若い女性の姿もあった。



「ここで釣りをしたら、気持ちいいんだろうなー」



 足元のコンクリートに波がぶつかるたびに、心地良い音が立つ。誘惑に負けそうになっているこゆきの目の前に、今回の課題が表示された。



《24時間以内に、4人がバラバラの位置から合流すること》



「四人が合流する……か。うんうん」



 こゆきが身に着けていたのは、普段こたつ部屋でも使用している、猫の着ぐるみのようなパジャマであった。今回は普段着のまま転送されたらしい。そのせいか、時々驚いた様子でこちらに視線を向ける人もいる。こゆき自身は、全く気にしなかったが。



「この格好で釣りをしてれば目立つし、きっと誰か、ゆきのこと見つけてくれるよねー」



 むしろ得をしたような気分になり、見通しの良い湾内をもう一度眺める。


 そしてこゆきは空を見上げて、絶対権限の能力を発動した。



「絶対権限発動、ここで釣りしながらみんなと待つから、道具ちょうだーい」



 のんびりとした声で宣言をした次の瞬間、釣り具一式がこゆきの足元に出現していた。



「よーし、いっぱい釣るぞー」



 ――大漁だったら、こたつ部屋に持って帰ってみんなと一緒に魚を食べよう。


 そんなことを思いつきながら、こゆきは釣りの準備に取り掛かるのだった。







 夕闇が広がりかけている林道に、カラスの尖った声が響き渡った。


 下駄の音を立てながら長い坂道を上り続けていたつくよは、その声を聞いて足を止める。



「……お、おかしいですね」



 駅に向かって正しい道を進んでいるという確信が、初めて揺らいだ。



「いくらなんでも、こんなに時間が掛かるというのは」



 つくよは首を傾げる。ここまで歩いてくる途中、住宅街や商業施設の前も通り過ぎてきたが、駅を見つけることができないまま、この山道へと入ってしまった。


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