15話 怪盗な世界1 11/11
「それでは失礼します」
つくよは一階から回り道をして屋上に向かうことにした。
つくよが一階に着くと、こゆきが十一人の黒い影から逃げ回っていた。
「こゆきっ」
「つくよ」
つくよはこゆきの元に駆け寄った。黒い影がにじり寄ってくる。
「つくよ、なにかいい案ない?」
「そうですね。そうだ、こゆき。縄はまだありますか?」
「うん」
「それでは」
つくよはこゆきに作戦を手短に説明した。こゆきは「さすがー」とつくよを褒めた。
つくよとこゆきは縄をとり出すと、片方の端をしっかり結んだ。そして縄がぴんと張るくらいまで離れると、黒い影に突っ込んだ。黒い影たちの体に縄が食い込む。そして正面にある柱に向かって二人は走り続けた。柱までくると二人はそれぞれ反対方向に周り、縄と黒い影と柱を固定した。そしてぐっと強く結んだ。黒い影たちは暴れるが縄がほどける気配はまったくない。
「なんだか申し訳ないなー」
「そうですね。でも追いかけてこられると困りますし」
「そうだよねー。よし、せいなのところに行こー」
「そうですね」
二人は二階へ急いだ。
三階展示室。そこには気絶している黒い影一人と、あかりしかいない。あかりは念のため、頭を出して様子を伺った。
「大丈夫そう、かな」
あかりはそっと着地した。ガラスケースの中にはライトの光に反射して、きらきらと輝くオーシャン・ブラッドが鎮座していた。
「わあ、きれい。っとと、早く盗まなくちゃ!」
あかりはゴムボール銃の尻の部分で、ガラスケースを割った。手を切らないように、慎重にオーシャン・ブラッドを手にとった。ウウーッとサイレンが鳴る。
「うわ、うるさ! 早く行こうっと」
そのときだった。気絶していたはずの黒い影がむくりと起き出したのだ。
「わわわっ!」
あかりは息を止めて煙幕を使った。辺りが見えなくなる。姿が隠れている内にジャンプした。
「あっぶなあ。急ごっと!」
あかりは急いで屋上へと向かった。
屋上にはすでにつくよ、せいな、こゆきが合流していた。
「ごめん! お待たせ」
「よかった。無事だったんだね……」
「とにかくここから脱出しましょう」
「だねー」
四人は順番に雑居ビルへの屋上へと飛んだ。雑居ビルの屋上に着いた四人は改めてオーシャン・ブラッドを眺めた。
「近くで見るとますますきれいだね……」
「いくらぐらいするんだろう?」
「この世に二つとない宝石ですから、値段はつけられないのでは?」
オーシャン・ブラッドは五センチほどの大きさで、赤の部分と青の部分はそれぞれ違う美しさを放っている。
「よーし、オーシャン・ブラッド、ゲットー!」
あかりはオーシャン・ブラッドを掲げた。するとビーッとブザーが鳴った。オーシャン・ブラッドが消えていく。
「あー、疲れた。こたつ部屋に戻ってだらだらしよーっと」
「ハラハラして楽しかったですね」
「ちょっと怖かったけどね……」
「あの宝石くれたらよかったのに!」
四人はそんなことを言いながらこたつ部屋へと戻った。電光掲示板には次の世界に行くまでの時間が、くっきりと映し出されていた。




