15話 怪盗な世界1 7/11
「手すりが大理石でよかった。ガラスで透けてたら無理だったよ」
「だね……」
二人は体勢を低くしたまま、少しずつ階段を上がる。閉店しているカフェの壁を避けると斜め前方に入口らしき場所があった。黒い影が一人立っている。
「ここだと思う?」
「警備が薄い気がするけど……」
「だよねえ。つくよとこゆきに連絡してみる?」
せいなが頷いたので、あかりは通信機のボタンを押して、小声で喋った。
「もしもーし、二階はそんなに警備は厚い感じしません、どーぞ」
通信機から聞こえてきたのはこゆきの声だった。
『オーシャン・ブラッドがあるのはこっちみたい。入口は展示室の外側に二人、展示室側に二人いる。どうぞ』
「んじゃそっちだと思う。どうしよう、そっちに行ったほうがいいかな? どーぞ」
『……うん、わかった。つくよが屋上で集まったほうが作戦会議しやすいだって』
「オッケー。じゃあ屋上で」
あかりとせいなはもう一度黒い影の隙を狙って、売店横の非常口から屋上に戻った。
あかりとせいなが非常口から屋上に向かっているそのとき、つくよとこゆきはまだ三階にいた。三階の非常口は展示室の入口の斜め前にある。そのため、扉を開けすぎると、明かりで気づかれてしまう。
「電気を消せればいいんですけれど」
「あ、ねえねえ。あのひも、電源なんじゃない?」
よく見ると横長のシーリングライトに短いひもが垂れていた。つくよがジャンプした。ソールのおかげでひもを引っ張ることができた。一か所だけ電気が消える。
「もうちょっと中まで警備を見ることができたらいいんですけど」
「でもこれ以上は見つかるよー」
「どこか侵入できそうなところがあればいいんですが」
つくよとこゆきは辺りを見回した。こゆきの目に入ったのは、通気口だった。こゆきはつくよの肩を叩き、通気口を指差した。
「通れるでしょうか?」
「びみょー。肩が入らなさそー」
今度はこゆきが動いた。暗視ゴーグルをつけ、通気口の近くに向かってワイヤーを発射する。そして壁を登り通気口の中を覗いた。蜘蛛の巣やほこりが白く映る。
「できればこの中には入りたくないなー」
「やめておきましょう。入れそうにもありませんし。ちなみにそこから警備は見えたりしますか?」
「そう思ったんだけど、見えないんだよねー」
こゆきは下りてくるとワイヤーの引き金を離した。ワイヤーが戻ってくる。
「とりあえず屋上に行こっか。作戦会議しよう」
「そうですね」
つくよとこゆきは非常階段を上がって屋上に戻った。




