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日記の束  作者: 紅白
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【表紙:アカ色】

 今日、変な人と会った。十ほど年上に見える彼と、ひょんなことから交換日記をする羽目に。


 * * 別ページ * *


 彼の生家の商店に日の丸。彼を中心にした万歳。誰が混ざるもんですか。

 彼と交わした約束。近況報告の手紙のやり取りなどしてやらない。わたしたちはただ交換日記を続ける。


 * * 別ページ * *


 彼の生家の商店に忌中の幕。彼を中心にした葬列。誰が混ざるもんですか。だって、ほら、今日も郵便受けに彼からの日記。

 彼の父親がわたしを訪ねてきて、彼の白い日記帳をわたしに手渡した。そこに挟まれていたのは、山桜の小枝。


 * * 別ページ * *


 戦争が終わった。奉公先が傾いて、今わたしは自分の故郷の港町。ひと月経って、二月経って、わたしを訪ねてきたのは幼馴染のへぼへぼ男。いかつい名字に似あわない、あまりにへぼへぼな求婚。わたしは言ってやった。

「あんたはわたしの一番には絶対になれない。一番の人が一番のまま死んでしまったから」

 すると彼はへらへらと笑った。

「それで構わんよ。お前に一番がおるんは見てすぐわかった。わては二番目でええ。いいや、お前は家族大事にするさけ、家族が二番手から続くかんね。やったら、わては八番目で十分や」

「……あんたも家族になるんだから、二番目になる余地くらいはあるんじゃない」

「へ?」


 * * 別ページ * *


 彼の墓へ。そこらで秋桜を摘んでいく。冬には彼を内に宿した小枝を、春には山桜を、夏には彼がきらめく小枝を。

 季節めぐって、結納は明日。わたしは交換日記をお櫃に入れた。彼の日記もその中に。そして最後に、今書いているわたしの日記も。こうしてできた日記の束。戦争につぶされた子どもの夢の、甘ったれたかたまり。捨てるにも苦しく、見るにも苦しい彼との思い出は、全部全部この中に。そしてわたしは、家の庭にぽつんと一本山桜を植えてくれた二番目の人とともに、これからを生きていく。

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