終焉
だがしかしその運命の時はついにやって来てしまったのである。
それは太陽もまだ昇っていない早朝のことであった。キヨシが体が全て吸い込まれてしまうかのような柔らかさのベッドで眠っているときに出来事は起きた。
「ホーリーナイトは死んだ!私たちが時代をつくる!ホーリーナイトは死んだ!私たちが時代をつくる!干からびて死ぬのはお前らだ!」
大地を揺らさんとするほどの統一された怒号の中でキヨシは完全に目を覚ましたので何事かと大口開けて窓からその様子を見てめまいがした。宮殿の正門からどこまでもまっすぐ続く大通りが地平線の彼方まで大衆で埋め尽くされていたのである。彼はその異様な光景を純粋な恐ろしさによってしばらく眺めていたがしばらくしてからそれが自分たちに対する憎悪であると認識してから死を確信した。
「これが時代の終わりです。」
キヨシはその発言が耳に入ってから回りに宮殿の人々が集まっていることに気づいた。
「私たちは少々楽しみすぎたようですね。仕方がありません。」
そう言うと彼らは一斉にどこからか大剣を抜き出した。
「私たちは選ぶのです。死を以て血とするか!血を以て死とするか!」
「「死を以て血とするか!!血を以て死とするか!!」」
宮殿内は外の群衆に負けずとも劣らない大怒号に包まれた。その瞬間、自分の大剣を自分に向けて自害する者、お互いに剣を向けながら勢いに任せてお互いに刃先を相手の腹に向かって突き刺す者、大剣に押し潰される者、そしてその剣をもって群衆に立ち向かおうと正門へと走っていく者がいた。
「キヨシ様、ご決断を。」
一人の女性がフルーツナイフを手渡してきた。彼は何が起きているかも分からずその言葉にも従う以外に考えることができなかった。キヨシが彼女の持っているフルーツナイフを手に取ったと同時に彼女はフルーツナイフを握っているキヨシの拳をさらに握って自分に向けた。
「死を以て血とするか!血を以て死とするか!」
彼女はそう言うとキヨシの握ったフルーツナイフをそのまま自分の手によって自分自身の喉に突き刺して即死した。
「ホーリーナイトは死んだ!私たちが時代をつくる!ホーリーナイトは死んだ!私たちが時代をつくる!干からびて死ぬのはお前らだ!」
その後まもなく宮殿の大正門が群衆によって突破されて直ちに彼らは宮殿内へと侵入した。
その時、群衆が見たものは今までに見たことのない黄金の天井と一面真っ赤に染まった大空間であった。
そして、彼らがもっとも驚いた光景があった。この国の王であるキヨシが身体中にフルーツナイフが突き刺さったまま死にきれずにいたのだった
「一回死んだから…。一回死んだから…。」
彼はそう言いつづけていたが群衆の中の一人の女性のキスによって間もなく死亡した。
彼はまだどこかで転生を続けています。