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kill two birds  作者: 内夕人
kill two birds
1/3

王国

 遠い遠い昔、はるか銀河系の彼方よりもさらに遠いところで人類の知が及ばざる技術と文化が生まれていた。ちなみに、どれくらい離れているかというと、私たちの銀河系から300万光年離れたウルトラマンの住んでいるM78星雲のお隣くらいであった。そしてどれくらい昔かというとウルトラの父が16万才くらいなのでそのウルトラの父がまだウルトラの赤ちゃんだった頃くらいであり、ウルトラマンキングが30万才くらいなのでそのウルトラマンキングがまだウルトラ働き盛りだった頃くらいであった・・・。(wiki調べ)

 これはその素晴らしい技術と文化を生み出したある一人の人間の物語である・・・。

  彼の名前は、キヨシ=コノヨル。偉大なる血族ズンドコ14世として王の位を継承することが約束された花の17才である。しかし彼は純粋な血統を持つズンドコ王ではなかった。驚くべきことに彼は東京生まれヒップホップ育ちであったのだ!この世界においてヒップホップは禁忌とされるべき存在であったが、彼が駄菓子屋を営んでいる歯の無いおばあちゃんにラップバトルを仕掛けている所を、免許を取ったばかりの若きズンドコ13世が運転していた無意味にたくさんの若葉マークを貼り付けてオリジナルのマークを作っている車に見つかったのがきっかけであった。ズンドコ13世は彼らの状況に気付いた途端におもむろに窓から顔を出して「駄菓子屋のばあちゃん天下りファッカー」と渾身のライムを吐き出した。その時であった。この場にいる誰よりも長生きして蓄積させてきた人間性をズタズタにされたことに我慢ならなくなったのだろう。「おばあちゃんはまだ天に召されちゃいないよォ!!」と窓が震える勢いで雄叫びを上げた。彼女は天下りのことを死んだ人が昇天することだと勘違いしていたのである!それと同時にズンドコ達はおばあちゃんが入れ歯を付けていたことについに気が付いたのだ。怖気づいたズンドコ達はそのお店でチューチューアイスを一人二本ずつ買ってお店をあとにすることにした。若きズンドコ13世は暗くなってきた帰り道を一人で運転できるか心配だったのでキヨシを助手席に乗せて安全確認を手伝ってもらうことにした。そう、それこそがズンドコ13世がキヨシを継承者として認めることとなった決め手であった。キヨシは幼かったが危機察知能力がきわめて高く‘かもしれない運転’を地で行く男だったのでズンドコ13世は何の問題もなく宮廷へ帰ることができたのであった。

 キヨシはズンドコ13世の車が止まったことに気づき窓から外をのぞいてみるとなんとも重厚で大きな門が見えた。門をくぐり宮廷の中へ入ると端の見えないほど長い廊下である。歩けば歩くほど床の幾何学的模様は不思議に揺らいでめまいがするほどであった。ようやくズンドコ13世は足を止めて大きな扉を少し苦労しながら開けて中に入ったのでキヨシも同じく扉を抜けるとそこはすごかった。ドレスやタキシードを着た紳士淑女が狂ったようにツイストダンスをしながらラップバトルを繰り広げていたのである。

「お前の母ちゃんでべそ抑えろあんちゃんでんでん太鼓」「おまえんちお化け屋敷こさえるぜお餅祭り」

 その狂気の中をズンドコ13世はすべてを称賛するかのように両手を広げながら進んでステージの上へと上った。そして彼もまた狂ったようなツイストダンスを始めて人々の目を釘付けにしてから口を開けた。

「やあ諸君、今日もやってきたぜ王様、その名はラップ暴君、どうもおいでくださったぜ皆様。今日はサプライズいつもサンライズ、日出づる国の後継者発見、来ているあなたもどんなもんか拝見。YO!ゆりかごから墓場までdo it, all right?」

 観衆は歓声をあげて思い思いの丈を絶妙なライムで表現している。その雰囲気の中で私がするべきことはステージに上がり彼らの期待に応えるためにこの栄えある王位の継承を約束することのみであった。



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