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97.女神像


 待つ事小一時間、兄妹一行が今日の降霊祭のメインイベントへと向かう為に部屋を出たらしい。

 その場面を俺は見ていない。その辺の確認はルッカに頼んだからな。


 多少は、この本物の祭壇があるとかいう部屋にいる奴らも一緒に出ていってくれないかっていう希望はあったものの、それは無理だったようで扉が開く気配すら無かった。


 そういう訳で、仕方ないが強行突破だ。


 扉を慎重に、ゆっくりと引く……開かない。

 なんだ……鍵でもかかってんのか? ……いや、鍵穴なんざえ。

 もっと力入れないと駄目かな……びくともしない。

 ぬおおお!!……くそっ! 開かなねえ! 魔法でもかかってんのか? 鑑定ではなんとも無いぞ?!


 『ちょっと、レオ?』


 なんだよ? ぐおおおお! ルッカ、この扉、マジで開かないぞ?

 この際、いっそのことぶち壊すしか無いのか?


 『あのー。その扉……引くんじゃなくてね……押せばいいんじゃない?』


 !!!!


 ……そっと押してみると、扉は音も立だずにすっと奥へと動いた。


 『……開いて良かったわね』


 ……その通りだぜ! さ、サンキュー。俺もそんな気がしてたんだ! マジで!

 なんだよ、音が立たないなら待つ必要無かったな! でもさ、慎重に越したことないしな。


 『……うん。そうね』


 部屋に入った瞬間に左右から、剣が振り下ろされた。


 あ、あぶねっ!

 咄嗟にしゃがみ込む。


 そのままの体勢で転がる様に部屋の中へと入りこむ。

 

 ……俺、子供で良かった。身長低くて良かったあ!!

 

 白装束を着た奴が二人、無言で剣を構えたままきょろきょろしてやがる。奥の一人は微動だにしていない。

 見えてないんだ。

 つーことは、俺の場所は分からないんだろ?

 よっしゃ。それなら敵が武器を持っていようが関係ない。

 

 こないだヴェンゲロフにやった様にみぞおちを狙って……渾身の一撃!


 うわっ!!


 ……すり抜けた?


 勢い良く放った攻撃の行き先が無く、そのまま転がる俺。


 へ? ……なんだ? 白装束の中が何もなかった……? なんだこいつ?


 『え? 人間に……視えるのに』


 俺の鑑定では『??????』ってなってるぜ?


 ……待てよ、分かった。それなら、頭狙う!


 助走をつけて飛び上がりそのままの勢いで白装束の頭を思い切り殴りつける!


 スカッ……


 うおっと! な、なんだ白装束コイツ、実体が無いのかよ!?


 『ちょっとちょっとちょっと!! どうなってるの?』


 分からねえ! でも物理攻撃は無理だ。魔法で……ん? 発動しないぞ?


 『やだ。ここ魔素自体がないわ』

 

 なんてこった。

 魔法が使えないってかなりマズいじゃん。


 『ごめんなさい! さっきちゃんと視ておくべきだったわ。……あの女神像に清らかに澄んだ綺麗な力が集まって溢れ出してる……魔素がないのはそのせいかしら』


 えっ? ここに清らかな力!? 

 ……今までの話を聞いている限りでは、この神殿自体が邪教かと思ってたのに?

 じゃあ……マジでちゃんとした聖域だってのか!?

 ってことは、この白装束は何者なんだよ、くそっ分からなくなってきたぜ。


 へ?……はあっ!?


 『えっ!? どうしたの? 今度はなに?』


 ……いや、あの女神像……俺の神様だ。


 『かみさま?』


 前世死んだ俺を迎えてくれて、この世界に転生させてくれた……あの神様しょうじょの姿を精巧に、生き写しの様に彫られた綺麗なクリスタルの像がそこにあった。

 この国の女神って……あの神様しょうじょの事だったのか?

 

 ここは……いったい……


 『レオ? あっ危ないっ。右! けてっ』


 俺の居場所を正確に掴めずにうろつく白装束達を避けながらも、意識はあの女神像に釘付けだ。

 頭の中は混乱しているし訳が分からないままだが、引き寄せられるように俺は女神像に近づいていった。


 それに伴って3体目の白装束も動き出したが、今はどうでもいい。


 2m程の美しくも愛らしい微笑みをたたえる女神像の足元までいき、触れると、アンドレから以前感じた光の力がクリスタルの中に溢れている様な気がした。


 兄貴アンドレの光の力がこの中に?


 なんだ……どういう事なんだ?


 『あの台は?』


 は、えっああこれ?


 女神像から少し離れた所にある、同じ材質クリスタルの長細い台。

 触れても中も感じないが……


 『グルルル……』


 アイゴン! なんだ、何かあるのか?


 『その台の下なの? レオ! その台どかして』


 おう。うおおお……いや、無理だ。重くてビクともしねぇぜ。いま魔法使えないし無理だよ、動かせない。 ……叩き割るか。


 背中に差していた剣を抜いて構えれば、さすがに白装束達にバレバレだった。

 

 一斉に襲いかかってきやがった!


 速っ……やっべえ! ルッカ、精霊は?!


 『ごめん、呼べない! ここ、なんだか空気が清らか過ぎて精霊達あんまり好きじゃないみたいなの』


 おいおい、それってどんな精霊だよ。俺のイメージする精霊とだいぶ違うんだが?


 『レオ、買いかぶりすぎよ。精霊はそんなに純真無垢じゃないの』


 うん、もう分かった、強行でたたっ壊すぜ!


 おりゃあああああああああああっ!!!


 襲いかかる白装束の持つ剣を叩いて吹き飛ばした隙をついて、謎のクリスタルの台に思い切り剣を当てるとピキピキとヒビが入った。


 よーし! よしよしっ!


 もういっちょー!!!


 『これが終わればメイちゃんに会えるわよっ』


 よっしゃっ! おりゃーーーー!!!


 バッキイイイイイイイ……


 派手な音を立てて割れ、ボロボロと崩れていくクリスタルの破片の下に、確かに何かがあった。

 何か……なんだろう、模様か? いや、模様みたいな文字だ。でも俺、この文字は知らないな。

 クリスタルの破片をどけながら、さらにクリスタルを叩き割っていく。

 やっぱり文字だ。円の中に、びっしりと文字が刻まれているぞ?

 この空間に似つかわしくないダークな感じがビシビシ伝わってくる。


 『これ……魔法陣だわ』

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