8.現状報告
5歳になった。
身長も伸びたし、幼児特有のぷよぷよ体型から抜け出し、すっきりした体つきになってきた。
体力もついて一日中走り回っても疲れない!
あれから1年半の間に両親には2度会った。
毎回トンボ帰りだったけど。
正直なところ俺は放置子だと思っていたんだ。
でも会うたびに濃密な愛情を俺に注いでいたし、夫婦仲も良さそうだった。
俺は両親から嫌われてる訳でも、冷め切った家族って訳でもないんだろう。
やたらベタベタするわ俺を賞賛するわ、山の様なプレゼント持ってくるわで逆に心配になる位だ。
もしも俺がただの子供だったら将来相当調子に乗ったイヤな奴になるぜ?
だが、俺はこの両親の愛情をそれなりに利用させて貰うことにした。
家庭教師、剣の師匠、俺の馬をおねだりして全て二つ返事で叶えてもらったのだ。
チョロいぜ。
だがついでにもう一人マナー教師のウザいババァも付いてきた。
これは頼んでなかった。マジで想定外だ。
そういえば、俺の弟妹?にはまだ一度も会ってないな。
両親の勢いに押されていつも聞き逃してしまう。
俺でこんなだから弟妹はもっと甘やかされてるのかなと考えると会いたくもないが。
まぁ、ちょっと怖いが今度こそ聞いてみよう。
あと黒猫の神様も1回会いにきた。
会ったのは去年、4歳の時だ。
正直、もっと頻繁に会えると思っていたからこれも想定外だった。
神様の話によれば、どうやら500年ぶりに魔王の封印が解けそうなんだと。
だから魔物が増えて世界のあちこちで被害が出ているらしい。
俺は平和な毎日を送り過ぎていて全く知らなかった。
魔王に魔物かぁ。いいね。ワクワクするな!
神様には叱られたけど、これぞ異世界転生の醍醐味じゃないか。
『スキル』についても教えてもらった。
剣術のスキルがどうしても取れなくて悩んでいた時だった。
『え?まだ4歳でしょ?ムリじゃない?』
まさかの年齢制限!?
「でも毎日素振りの修行してるんだ」
『ふーん。ちょっとそこでやってみ?』
俺はボン爺特製の棒で素振りを披露した。
もう持ち手はボロボロの使い込んだ棒だ。
『それ……ただの棒を振りわましてる様にしか見えないんだけど?』
神様は直球だった。
魔法の取得が早かったのにもちゃんとした理由があった。
この世界は魔法ありきで、一部の脳筋部族を除いてほぼみんな使えるらしい。
無詠唱も結構ポピュラーだった。
呪文を唱える人の方が珍しいらしい。
『あんな長ったらしい呪文、飾りみたいなもんよ』
……後に書庫で見つけた中級用の魔術書を読んだらそこにも似た様な事が書いてあった……クソっ。
つまり、俺に魔法の才能があるとかじゃないんだ……普通なんだ。
転生者なんてチートの塊だと思っていたから、無詠唱なんて天才だと思っていた。
とんだ思い違いだった。
……だけど、多くの人は基本ステで各基本魔法のスキルは大体Lv3位で頭打ちになるらしい。
そのくらいのレベルなら生活には困る事はないらしいが、冒険者になるにはそこからは修行が必要になる。
俺には『繰り越し』のスキルがあるからもっと楽にLv上げが可能になる。
魔法の才能が普通の俺が修行しなくても、最強の魔導士になれる……はずだ!
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ところで、そろそろ見たいんじゃないかな!俺のステータス!
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レオン・テルジア(5)
職業:テルジア公爵の長男
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『ステータス』
Lv:1/1
Hp:8/8
Mp:2/2
『スキル』
・火魔法Lv1
・水魔法Lv1
・風魔法Lv1
・土魔法Lv1
・言語能力(自国語)
・算術Lv1
・礼儀Lv1
『ユニークスキル』
・繰り越し
『エクストラスキル』
・ポイント倍増(10)
『所持ポイント』
36912P
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どうだっ、ほとんど成長していないんだぜ!
各魔法のレベルはいまだ1のまま。
MPも2のままだ。
それでも俺はくじけずに毎日魔法の練習をしている。
だけど、レベルもMPも一向に上がらない。
スキルを取るのは簡単だったくせに、なんでこんなに厳しいんだよ……
剣術のスキルは、師匠をつけてもらってからもなかなか取得できていない。
なぜなら走り込みとか柔軟ばかりをやらされているせいだ。
……だけど、多分だけど、剣を使った修行が始まれば、きっと取得できると信じている。
ポイントもひたすら溜めてまだ使っていない。
そりゃ何度かスキルを取ろうと思った事は勿論あったさ。
だけど、魔法スキルがなかなかレベルが上がらないってとこに不安を覚えたんだよ。
他のスキルも”Lv1”ってのはゴミなんじゃないかって。
それならチート級のスキルを取るべきなんじゃないかと考えて、ポイントを温存する事にしたんだ。
屋敷での生活では、すぐにでもスキルを取る必要性に駆られなかったというのもある。
この辺を神様に教えてもらいたいところだが、あれ以来音沙汰がない。
……世界で魔族の被害がどうとかいってたし、忙しいのかもしれない。
神様、かなり深刻な話でも空気よりも軽い感じで話すからな。
ストーリーに合わせて少し微調整しました。